ダンジョン・ザ・チョイス
48.探索場へ
「ホロケウカムイ」
青い光を纏い、着替えたトゥスカが宿前のリザードマンを蹴り殺す。
「格好良いな、あれ」
「獣人以外には使えない、身体能力強化系サブ職業。地味に役に立つよ」
メルシュが解説してくれる。
「あれ、複数持ってるんだけれど……売るしかないか」
「仲の良い人にあげるとかは? 恩を売っておけば、後々役に立つかも」
「恩を?」
「これ以上は開示出来なーい!」
つまり、この先に人数が必要になるなにかがある?
マジかよ……。
「ご主人様、片付きました」
「お疲れ」
リザードマンは武器を持っていたわけではないため、トゥスカ一人に任せていた。
「ホロケウカムイ発動中は、TPが減るようですね。でも、いつもより回復が速いような?」
「婚姻の指輪の効果だよ。低級だとTP・MP量が一割アップ。上位だとTP・MP回復速度1Lvアップが追加。二人の“最高級の婚姻の指輪”だと、TP・MP量が二割アップに、TP・MP回復速度が2Lvアップ」
「なんとなく凄いのは分かるけれど、他の指輪と比べるとどうなんだ?」
宿に入りながら話す。
「ハッキリ言って、チートみたいな物だよ。本来の指輪装備欄を使わないし、ガントレットの類いを装備していても婚姻の指輪の効果は適用されるからね」
「本当に、地味にチートアイテムだ」
これ、結婚したもん勝ちじゃん。
「まあ、攻撃能力を直接上げるわけじゃないから、防御能力が高い相手にはあんまり意味ないけれど」
「好きでもない相手でも結婚した方が特とか……相変わらず倫理観無視か、このゲームは」
なぜこんなにも胸糞悪い仕様なんだか。
★
「お一人様追加で、6000Gになります」
宿の受付嬢が笑う。
「「この子とは別でお願いします」」
俺とトゥスカの声が重なる。
「奴隷に部屋は貸せません」
「忘れてた」
奴隷の宿泊費は通常の半額になる代わりに、一人で部屋を借りることが出来ない。
「大丈夫、私は気にしないから!」
「なにを!?」
「大丈夫です、ご主人様。み、見られながらは恥ずかしい……ですけれど……が、頑張りますから♡」
文化的に見られながらを覚悟していたトゥスカさんは、別に問題ないと思っているらしい。
「俺は……無理」
どうしようもないため、結局三人で部屋を借りた。
★
「Lvアップの種は、Lvを1上げると経験値0の状態になるの。だから――」
「Lvを上げた直後の方が効率が良いわけだ。とはいえ、どのタイミングで使うか」
宿に戻って食事などを済ませ、メルシュから色々聞いていた。
「Lv20になると強力なスキルを使えるようになるから、明日の探索に有利になるよ」
勿体ない気もするけれど、安全第一だ。
「トゥスカ、Lvが19になったら“Lvアップの種”を使ってくれ」
「分かりました」
俺は“Lvアップの種”を使用。
○戦士.Lv20になりました。スキル、“二重武術”を修得しました。
「“二重武術”?」
「私は“二重魔法”を使えるようになったよ、マスター」
俺とLvが連動してるんだったな。
「魔法使い職の場合は“二重魔法”なのか。どういうスキルなんだ?」
「名前通りだよ。同時に二つの武術スキル、魔法スキルを発動出来るんだよ」
「それは便利そうですね」
トゥスカは”転剣術”を使用中、攻撃手段が限られる。トゥスカにこそ必要なスキルだな。
「“大転剣使いのスキルカード”を使用します」
「俺も使うか」
○スキル”大転剣術”を修得しました。
○スキル“振り抜き”を修得しました。
「“大転剣術”は説明しなくても良いよね。“振り抜き”は、腰を乗せた攻撃を繰り出したときに威力がアップするよ。重い武器ほど威力が上がるの」
大剣がメイン武器の俺にも、有用なスキルだ。
「じゃあ、そろそろ寝よう!」
メルシュが提案する。
「「……」」
中途半端に浮ついて、正直このままベッドに入っても眠れる気がしない。
寝る前にヤるのが当たり前になっていたし、結婚式でのトゥスカのウエディングドレス姿が脳裏に焼き付いていて……。
「大丈夫! 毛布を何十にも被って、しっかり見るから!!」
見るって宣言したよ!
「ご主人様……あの♡」
「……トゥスカ」
トゥスカが、いつの間にかあのウエディングドレス姿に!?
やんわりと抱き付かれる!
「私……火照っちゃって……我慢出来ないです♡」
あ、俺も無理だ。
「ん♡」
キスをしたまま、灯りを消した。
●●●
「ご主人様……今日も♡ 凄いです♡ んあっ♡! あっ♡ あっ♡ あっ♡♡!」
凄いなー。若いって凄いなー。
ぶっ続けで何時間ヤル気だよー。
……さすがに、この光景を毎日はキツいかも。
早めに、第四ステージでアレを手に入れないと!!
「ああっ♡♡!! ああっ♡♡!!」
もう、今日で限界を迎えるかもしれない。
●●●
「じゃあ、後で会おう!」
「はい、ご主人様!」
「うん、マスター!」
冒険者ギルド内にて、準備を整えた俺達は拳を合わせる。
○2000G払い、以下から一カ所を選択できます。
1:金貨の砂漠
2:人狼の森
3:制限廻廊
4:キメラの縄張り
俺は、制限廻廊を選択。
すると、光が立ち上り、視界を覆った。
◇◇◇
あの調子では、ジュリーはもうダメかもしれない。
燃え尽き症候群と言ったところかしら。宿からほとんど出ようとしない。
『アルバートのお気に入りは……制限廻廊を選択したか』
偶然とはいえ、私とジュリーの計画を潰したクソガキ。
『最大級の制限を掛けさせて貰うわよ! 他の女達にも、少しだけ細工してやる!』
生かしておくと、ジュリーの障害になるかもしれないからね!
●●●
「ここが、制限廻廊」
文字がビッシリと描かれた黒い通路。
壁は無く、辺りは紫の煙で覆われている。
後ろにも何も無く、前方、遠くには階段。
「壁や天井が無い方が戦いやすい」
得物が大剣だからな。
落ちたら助からないらしいけれど。
○貴方に制限が掛けられました。あらゆる武術、魔法系スキルが使用不可能になりました。
○武具の補助効果が消えました。
「うっ!?」
少しだけれど、動きづらくなった!
身体が重い。
○武具の装備変更が出来なくなりました。
「……おかしい」
メルシュから聞いていたよりも制限が厳しい。スキルそのものが封じられるよりはマシだけれど。
“強者のグレートソード”を片手で振るう。
「やっぱり、さっきまでよりも重い。けど、振るうだけなら問題ないな」
急に重くなったから、余計に重く感じているはず。
暫く剣を振って、身体を今の状態に馴れさせる。
鎧の重さに引っ張られるな。前のような肉体と鎧の一体感を感じない。
「よし、行くか!」
数歩前に出ると、前方の通路に次々と光が立ち上る!
「「「キュルルルルルルルルルルルル」」」
「リザードマンの群れ……だけど、奥のはなんだ?」
リザードマンよりも一回り大きく、ゴツイのが二十体程。
身体も、青ではなく緑色。
「聞いてないぞ、メルシュ」
●●●
木々に囲まれた一本道を、ひたすら進んでいた。
「”転剣の竜巻”!!」
”転剣狼の竜巻ブーメラン”の効果を発動し、ブーメランの上下から竜巻を発生させ、黒の体毛を持つワーウルフ達を始末していく!
TP・MPの両方を消費するからか、消費量のわりに強力な印象を受ける。
「……19になったか」
ご主人様に言われていた通り、Lvアップの実を使ってLv20に。
「ガウ! ガウガウガウガウガウガウガウガウガウ!!」
「また集まってきた」
発情した狼共が、木々の間から次々と現れる。
「獣人の女に、ビーストマンタイプのモンスターは発情するって聞いてはいたけれど……」
おっ立ててやがる。
「ぶっ殺す!!」
再び”転剣狼の竜巻ブーメラン”を投げ、上下に放たれる竜巻で攻撃。
「ハイパワーブーメラン!!」
“荒野の黄昏は色褪せない”を大転剣術で放ち、”焔喰いの斧”を持って接近!
「パワーアックス!」
“斧術”で切り裂きながら駆ける。
「私で発情していいのは、ご主人様だけです!」
“転剣狼の甲脚”で、ワーウルフの頭を蹴り抜く!
「重い」
“漆黒のブーツ”よりも攻撃に優れているけれど、私としてはスピード重視の方が合っているよう。
「装備セット1に変更」
あらかじめセットしておいた装備に、瞬時に変更。
と言っても、鎧装備が“転剣狼の甲脚”から“漆黒のブーツ”に変更されただけですが。
戻ってきた“転剣狼の竜巻ブーメラン”をもう一度投げ、次に戻ってきた“荒野の黄昏は色褪せない”をしっかりと掴む!
「パワースラッシュ!」
途切れることなく現れるワーウルフを、次々と葬っていく。
コイツら全員、皆殺しにしてやる!
青い光を纏い、着替えたトゥスカが宿前のリザードマンを蹴り殺す。
「格好良いな、あれ」
「獣人以外には使えない、身体能力強化系サブ職業。地味に役に立つよ」
メルシュが解説してくれる。
「あれ、複数持ってるんだけれど……売るしかないか」
「仲の良い人にあげるとかは? 恩を売っておけば、後々役に立つかも」
「恩を?」
「これ以上は開示出来なーい!」
つまり、この先に人数が必要になるなにかがある?
マジかよ……。
「ご主人様、片付きました」
「お疲れ」
リザードマンは武器を持っていたわけではないため、トゥスカ一人に任せていた。
「ホロケウカムイ発動中は、TPが減るようですね。でも、いつもより回復が速いような?」
「婚姻の指輪の効果だよ。低級だとTP・MP量が一割アップ。上位だとTP・MP回復速度1Lvアップが追加。二人の“最高級の婚姻の指輪”だと、TP・MP量が二割アップに、TP・MP回復速度が2Lvアップ」
「なんとなく凄いのは分かるけれど、他の指輪と比べるとどうなんだ?」
宿に入りながら話す。
「ハッキリ言って、チートみたいな物だよ。本来の指輪装備欄を使わないし、ガントレットの類いを装備していても婚姻の指輪の効果は適用されるからね」
「本当に、地味にチートアイテムだ」
これ、結婚したもん勝ちじゃん。
「まあ、攻撃能力を直接上げるわけじゃないから、防御能力が高い相手にはあんまり意味ないけれど」
「好きでもない相手でも結婚した方が特とか……相変わらず倫理観無視か、このゲームは」
なぜこんなにも胸糞悪い仕様なんだか。
★
「お一人様追加で、6000Gになります」
宿の受付嬢が笑う。
「「この子とは別でお願いします」」
俺とトゥスカの声が重なる。
「奴隷に部屋は貸せません」
「忘れてた」
奴隷の宿泊費は通常の半額になる代わりに、一人で部屋を借りることが出来ない。
「大丈夫、私は気にしないから!」
「なにを!?」
「大丈夫です、ご主人様。み、見られながらは恥ずかしい……ですけれど……が、頑張りますから♡」
文化的に見られながらを覚悟していたトゥスカさんは、別に問題ないと思っているらしい。
「俺は……無理」
どうしようもないため、結局三人で部屋を借りた。
★
「Lvアップの種は、Lvを1上げると経験値0の状態になるの。だから――」
「Lvを上げた直後の方が効率が良いわけだ。とはいえ、どのタイミングで使うか」
宿に戻って食事などを済ませ、メルシュから色々聞いていた。
「Lv20になると強力なスキルを使えるようになるから、明日の探索に有利になるよ」
勿体ない気もするけれど、安全第一だ。
「トゥスカ、Lvが19になったら“Lvアップの種”を使ってくれ」
「分かりました」
俺は“Lvアップの種”を使用。
○戦士.Lv20になりました。スキル、“二重武術”を修得しました。
「“二重武術”?」
「私は“二重魔法”を使えるようになったよ、マスター」
俺とLvが連動してるんだったな。
「魔法使い職の場合は“二重魔法”なのか。どういうスキルなんだ?」
「名前通りだよ。同時に二つの武術スキル、魔法スキルを発動出来るんだよ」
「それは便利そうですね」
トゥスカは”転剣術”を使用中、攻撃手段が限られる。トゥスカにこそ必要なスキルだな。
「“大転剣使いのスキルカード”を使用します」
「俺も使うか」
○スキル”大転剣術”を修得しました。
○スキル“振り抜き”を修得しました。
「“大転剣術”は説明しなくても良いよね。“振り抜き”は、腰を乗せた攻撃を繰り出したときに威力がアップするよ。重い武器ほど威力が上がるの」
大剣がメイン武器の俺にも、有用なスキルだ。
「じゃあ、そろそろ寝よう!」
メルシュが提案する。
「「……」」
中途半端に浮ついて、正直このままベッドに入っても眠れる気がしない。
寝る前にヤるのが当たり前になっていたし、結婚式でのトゥスカのウエディングドレス姿が脳裏に焼き付いていて……。
「大丈夫! 毛布を何十にも被って、しっかり見るから!!」
見るって宣言したよ!
「ご主人様……あの♡」
「……トゥスカ」
トゥスカが、いつの間にかあのウエディングドレス姿に!?
やんわりと抱き付かれる!
「私……火照っちゃって……我慢出来ないです♡」
あ、俺も無理だ。
「ん♡」
キスをしたまま、灯りを消した。
●●●
「ご主人様……今日も♡ 凄いです♡ んあっ♡! あっ♡ あっ♡ あっ♡♡!」
凄いなー。若いって凄いなー。
ぶっ続けで何時間ヤル気だよー。
……さすがに、この光景を毎日はキツいかも。
早めに、第四ステージでアレを手に入れないと!!
「ああっ♡♡!! ああっ♡♡!!」
もう、今日で限界を迎えるかもしれない。
●●●
「じゃあ、後で会おう!」
「はい、ご主人様!」
「うん、マスター!」
冒険者ギルド内にて、準備を整えた俺達は拳を合わせる。
○2000G払い、以下から一カ所を選択できます。
1:金貨の砂漠
2:人狼の森
3:制限廻廊
4:キメラの縄張り
俺は、制限廻廊を選択。
すると、光が立ち上り、視界を覆った。
◇◇◇
あの調子では、ジュリーはもうダメかもしれない。
燃え尽き症候群と言ったところかしら。宿からほとんど出ようとしない。
『アルバートのお気に入りは……制限廻廊を選択したか』
偶然とはいえ、私とジュリーの計画を潰したクソガキ。
『最大級の制限を掛けさせて貰うわよ! 他の女達にも、少しだけ細工してやる!』
生かしておくと、ジュリーの障害になるかもしれないからね!
●●●
「ここが、制限廻廊」
文字がビッシリと描かれた黒い通路。
壁は無く、辺りは紫の煙で覆われている。
後ろにも何も無く、前方、遠くには階段。
「壁や天井が無い方が戦いやすい」
得物が大剣だからな。
落ちたら助からないらしいけれど。
○貴方に制限が掛けられました。あらゆる武術、魔法系スキルが使用不可能になりました。
○武具の補助効果が消えました。
「うっ!?」
少しだけれど、動きづらくなった!
身体が重い。
○武具の装備変更が出来なくなりました。
「……おかしい」
メルシュから聞いていたよりも制限が厳しい。スキルそのものが封じられるよりはマシだけれど。
“強者のグレートソード”を片手で振るう。
「やっぱり、さっきまでよりも重い。けど、振るうだけなら問題ないな」
急に重くなったから、余計に重く感じているはず。
暫く剣を振って、身体を今の状態に馴れさせる。
鎧の重さに引っ張られるな。前のような肉体と鎧の一体感を感じない。
「よし、行くか!」
数歩前に出ると、前方の通路に次々と光が立ち上る!
「「「キュルルルルルルルルルルルル」」」
「リザードマンの群れ……だけど、奥のはなんだ?」
リザードマンよりも一回り大きく、ゴツイのが二十体程。
身体も、青ではなく緑色。
「聞いてないぞ、メルシュ」
●●●
木々に囲まれた一本道を、ひたすら進んでいた。
「”転剣の竜巻”!!」
”転剣狼の竜巻ブーメラン”の効果を発動し、ブーメランの上下から竜巻を発生させ、黒の体毛を持つワーウルフ達を始末していく!
TP・MPの両方を消費するからか、消費量のわりに強力な印象を受ける。
「……19になったか」
ご主人様に言われていた通り、Lvアップの実を使ってLv20に。
「ガウ! ガウガウガウガウガウガウガウガウガウ!!」
「また集まってきた」
発情した狼共が、木々の間から次々と現れる。
「獣人の女に、ビーストマンタイプのモンスターは発情するって聞いてはいたけれど……」
おっ立ててやがる。
「ぶっ殺す!!」
再び”転剣狼の竜巻ブーメラン”を投げ、上下に放たれる竜巻で攻撃。
「ハイパワーブーメラン!!」
“荒野の黄昏は色褪せない”を大転剣術で放ち、”焔喰いの斧”を持って接近!
「パワーアックス!」
“斧術”で切り裂きながら駆ける。
「私で発情していいのは、ご主人様だけです!」
“転剣狼の甲脚”で、ワーウルフの頭を蹴り抜く!
「重い」
“漆黒のブーツ”よりも攻撃に優れているけれど、私としてはスピード重視の方が合っているよう。
「装備セット1に変更」
あらかじめセットしておいた装備に、瞬時に変更。
と言っても、鎧装備が“転剣狼の甲脚”から“漆黒のブーツ”に変更されただけですが。
戻ってきた“転剣狼の竜巻ブーメラン”をもう一度投げ、次に戻ってきた“荒野の黄昏は色褪せない”をしっかりと掴む!
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