ダンジョン・ザ・チョイス
24.雷の魔法使いジュリー
「ゴーレム?」
ゴブリンを”グレートソード”で両断し、流れてきた放送に思考を向ける。
以前遭遇した、あの煌びやかな人型の事かな?
あの時はよく分からないまま”針術”で倒してしまったけれど、実際の防御能力、耐久性はどうなんだ?
「ゴーレムについて教えてくれ、トゥスカ」
「一般的なゴーレムであれば、石で出来ているタイプかと。鉄の武器による低位の武術系を使えば、数回から十回程度で倒せます」
それだけ、倒すのに時間が掛かってしまうという事か。
「投入されたゴーレムの数も分からないし、特に出来ることはないか」
下手に動けば、状況が悪化する可能性もある。
「グレイウルフ、こっちにはほとんど来ませんでしたね」
「それだけ他の場所に流れたんだろうな」
狭めたとはいえ、防衛範囲が広すぎるか。
「ギルマス! 魔法使いの退避、完了しました!」
斥候役の獣人が報告に現れる。
最初のゴブリン減らしのためにMPを消費したLv6以下の魔法使い職は、神像周りの第二防衛ラインまで下げさせていた。
「よし、防衛ラインを最終ラインまで下げるぞ!」
守る範囲を狭めれば、より守りやすくなる。
その分数を生かせなくなるし、後も無くなってしまうため、気持ちに余裕が無くなっていく。
建物は破壊不可能なようけれど、氷の壁はかなり壊されてしまっている。
今回は下げるべきだと判断した。
「大変です! 南側にグレイウルフが集まってきて、撤退が難しいと。ジュリーさんが援護に行きました!」
別の斥候が現れ、呼吸を荒げて報告してきた。
「タマちゃんは?」
「ジュリーさんの命令で、北側に向かいました!」
となると、一番手薄なのは西か。
魔性女組は、買った当初二人がLv8で、一人がLv6。
タマちゃんのLvは分からないけれど、ジュリーがタマちゃんを一人で動かしたのなら、10以上はありそうだ。
「トゥスカは――」
「嫌です」
「まだ何も……」
「嫌です、ご主人様と一緒に行動します」
読まれてる。
「分かった、行くぞ!」
本当は二手に分かれてトゥスカを西に、俺はゴーレムとリザードマンの詳細を調べようと考えていた。
ただ、トゥスカを一人で行動させるのが怖いという思いもあった……自分の目の届かない場所に行かせてしまうことへの不安が。
第二防衛ラインの外周部を北側に向かって駆ける。
「“煉獄魔法”、インフェルノカノン!」
立ちはだかったリザードマン八体をまとめて消し去り、駆けながら獲得アイテムを確認する。
「“狂気の湾刀”? “痺れのレイピア”、“暗闇のタルワール”……バッドステータス、状態異常を与える武器か?」
「狂気は”混乱”、痺れは”麻痺”、暗闇は”盲目”状態にする効果を持っています」
トゥスカが教えてくれる。
「対処法は?」
「”回復魔法”のキュア系か対応する丸薬くらいですね。ただ、直接武器に傷付けられなければ問題ありません。それに、低ランクの武器なら状態異常になる確率も低いです」
「数で攻められるほど厄介な武器ってわけか」
「ご主人様!」
前からリザードマンが六体。
ゴーレムが未だに見当たらないのは、進軍スピードがリザードマンよりも遅いからか?
「私が、“跳躍”!」
トゥスカが跳び上がる!?
「……凄い」
十メートルくらい跳んだんじゃないのか?
「――爆裂脚!!」
トゥスカがリザードマン達に向かって落下し――巨大な爆発を巻き起こした!!
『ブモオオオオ』
俺が爆風に耐えるため動きを止めていたところに石の人形が近付き――拳を振り上げている。
「――パワーブレイド」
『ブオオ……ォォ……』
拳を躱すと同時に、グレートソードで真っ二つにする。
「なんだ、随分脆い」
”グレートソード”の切れ味のおかげか、Lvの恩恵なのか。
トゥスカの情報は今の俺のLvの三分の一以下での話だろうから、武器の性能とLvの増加、どちらも考えられるな。
「ご主人様! 西側にリザードマン、北にゴーレムが集中しているようです!」
トゥスカの報告。さっきの跳躍時に、上空から確認したのだろう。
――手が回らないのがもどかしい! 身体が複数欲しくなる!!
「急ぐぞ!」
「はい!」
●●●
「サンダラスレイン!」
”万雷魔法”により、乱戦状態の中から複数のグレイウルフとリザードマンのみを屠る。
「リョウ! 負傷者を連れて撤退しなさい! 私が殿を務めるから!」
「ジュリーさんお一人でですか!?」
南側。人数は割いていたけれど、突出した者、Lv10以上を一人も置いていなかったのは失敗か。
コセは多分、タマを南側に配置したかったんでしょうね。
彼は彼で、トゥスカを手元に残していたけれど。
その分東側は人数をかなり少なく配置していたし、広めの区域にしていたようだから、文句を言う気は無いけれどね。
「一人の方がやりやすいから、さっさと連れて行きなさい」
「はい、すみません!!」
最終防衛ラインまで後退すれば、”回復魔法”の使い手に治療して貰える。
「さて――”雷光”」
左手に装備した“雷光の甲手”の効果を使用する。
「”魔炎”、”瞬足”!」
炎の紫蛇を生み出し、雷が迸る左拳を”瞬足”と共に次々とリザードマンへ叩き込んでいく。
”魔炎”を操って飛び掛かってきたグレイウルフを弾き飛ばし、隙だらけになった所に左拳を打ち込む!
「あらかた片付いたか」
リザードマンは全滅させた。グレイウルフは、南側の出入り口からしか入れない個体は倒したけれど、壁を跳躍で越えられるのは大分入り込んだ様子。
「……今度はゴーレムか」
今の装備だと、ちょっと面倒だ。
「黒鬼からのプレゼント、使わせて貰うよ」
このタイミングで、カスタムモンスターとなっていた黒鬼を倒せたのは僥倖だった。
あの時助けた彼のおかげで、第二ステージでは規格外の力が手に入っている。
私が報酬で選んだのは、“魔炎のスキルカード”と“魔道力使い”のサブ職業。
「”魔力弾”!」
MPの十分の一を消費し、準魔法扱いの弾を発射。
「「「ブオオオオオォォォ!!」」」
魔法耐性の低い通常のゴーレム二体を、まとめて消し去る。
サブ職業の”魔道力使い”には”魔力弾”以外にも”魔力障壁”という物があり、必ず総MPの十分の一を使用する設定になっていた。
MPの総量が増えるほど効果は高まるため、ステージが上がっていっても、魔法が効かないモンスターが出てこない限り攻守共に役に立つ能力。
この効果を知っていなければ、この”魔道力使い”のサブ職業を報酬に受け取ろうとは思わないでしょうね。
私が、早めに手に入れておきたかった能力の一つ。
”魔力弾”を二度放ち、南側に現れたゴーレム四体を全滅……一体残った?
「ブオオオオ!」
「装備アイテムか!」
”魔力弾”をもう一度放って、残りを破壊!
「……アイテムは手に入っていない」
おそらく、一定の割合で効果を発揮する使い捨てのアイテム。
「見た目じゃ分からないし、取り込むタイプのお守りかな?」
お守り系は種類も多いし、特定は困難。
そもそも、ゴーレム全てが同じお守りを使用しているとも限らない。
「ゴーレムに対しては、一撃で倒せないと念頭に置いて対処した方が良いか」
面倒な。
「さて、少しMPを温存しようか」
ゴブリンから手に入れた”雷の剣”を装備。
私は、魔法使い.Lv3で”雷属性強化”を選択しているため、雷属性の武器の威力も上がる。
サブ職業を”拳闘士”から”剣闘士”に変更し、武術も魔法も使わず、撤退しながらグレイウルフを殺していく。
●●●
「ブレイクバッシュ!!」
メグミちゃんの”大盾術”で、ゴーレム三体が亀裂だらけとなって吹き飛ぶ。
「“暴風魔法”、ダウンバースト!」
メグミちゃんが吹き飛ばした先に居た三体と一緒に、まとめて圧壊させたわ!
「マズいぞ、ゴーレムが集まって来たせいでグレイウルフがどんどん突破して行ってる」
ゴブリンは女の子を狙ってきたけれど、グレイウルフの跳躍能力が高い子達は、私達を無視して村の中心地に向かってしまった。
リザードマンはほとんど現れなかったから、既に全滅させているけれど。
「どうしようかしらね~?」
MPが心許なくなってきてるの。
風特化の魔法使いにしてしまったから、TPを消費しての攻撃手段も無いし。
殿を申し出て、他の人達を先に撤退させたのは軽率だったかしら~。
Lvが8から10にあっという間に上がったから、ちょっと調子に乗っちゃった! テヘッ♪
「私も、武器を使うようにした方が良いのかしらね?」
「そんな事行っている場合!?」
考え無しにMPを使い切ったアヤちゃんが、文句を言ってくる。
これは……後でお仕置きね~。
「このゴーレムは硬すぎる! 魔法でどうにかしてくれ!!」
別のゴーレムを止めながら頼んでくるメグミちゃん。
「て、言われてもね~」
「パワーニードル!!」
白い獣人ちゃんが突撃してきて、青い槍でゴーレムを二体、まとめて貫いてしまう!
この子、ジュリーちゃんの奴隷じゃない。
「大丈夫ですか?」
「おかげで助かったわ~♪」
「ゴーレムには属性武器が有効だそうです!」
「なら、“火属性付与”!」
タマちゃんの助言で、メグミちゃんが“鋼鉄の大盾”に火属性を加えた。
「ゴーレム、また来るわよ! しかも十体以上!!」
アヤちゃんが教えてくれる。
MPが無いなりに、周りに気を配ってくれていたみたい。
少しは気が利くのよね~。
「私に任せろ!」
メグミちゃんが盾を掲げて意気込んだ時だった。
「トゥスカ、先に西側に行け!」
「すぐに来てくださいよ!」
「ああ――ハイパワーブレイク!!」
男女の会話が北側出入り口の外側から聞こえた瞬間、十体以上のゴーレムが――――消し飛んだ。
「……嘘」
「……凄いな」
アヤちゃんとメグミちゃんが、呆然としている。
「ゴーレムを全滅させた後、俺は西側へ行く! 三人は神像まで退避してくれ」
「「はい!」」
二人共、反射的に返事をしていた。
「タマちゃんは東側を経由して戻ってくれ! 気を付けてな!」
「はい、分かりました!」
彼は指示を出し終えると、ゴーレムの掃討に戻る。
「サトミ、どうしたの?」
「サトミ、早く撤退しよう」
「そ、そうね」
……どうしよう、本気になっちゃったかも♡
ゴブリンを”グレートソード”で両断し、流れてきた放送に思考を向ける。
以前遭遇した、あの煌びやかな人型の事かな?
あの時はよく分からないまま”針術”で倒してしまったけれど、実際の防御能力、耐久性はどうなんだ?
「ゴーレムについて教えてくれ、トゥスカ」
「一般的なゴーレムであれば、石で出来ているタイプかと。鉄の武器による低位の武術系を使えば、数回から十回程度で倒せます」
それだけ、倒すのに時間が掛かってしまうという事か。
「投入されたゴーレムの数も分からないし、特に出来ることはないか」
下手に動けば、状況が悪化する可能性もある。
「グレイウルフ、こっちにはほとんど来ませんでしたね」
「それだけ他の場所に流れたんだろうな」
狭めたとはいえ、防衛範囲が広すぎるか。
「ギルマス! 魔法使いの退避、完了しました!」
斥候役の獣人が報告に現れる。
最初のゴブリン減らしのためにMPを消費したLv6以下の魔法使い職は、神像周りの第二防衛ラインまで下げさせていた。
「よし、防衛ラインを最終ラインまで下げるぞ!」
守る範囲を狭めれば、より守りやすくなる。
その分数を生かせなくなるし、後も無くなってしまうため、気持ちに余裕が無くなっていく。
建物は破壊不可能なようけれど、氷の壁はかなり壊されてしまっている。
今回は下げるべきだと判断した。
「大変です! 南側にグレイウルフが集まってきて、撤退が難しいと。ジュリーさんが援護に行きました!」
別の斥候が現れ、呼吸を荒げて報告してきた。
「タマちゃんは?」
「ジュリーさんの命令で、北側に向かいました!」
となると、一番手薄なのは西か。
魔性女組は、買った当初二人がLv8で、一人がLv6。
タマちゃんのLvは分からないけれど、ジュリーがタマちゃんを一人で動かしたのなら、10以上はありそうだ。
「トゥスカは――」
「嫌です」
「まだ何も……」
「嫌です、ご主人様と一緒に行動します」
読まれてる。
「分かった、行くぞ!」
本当は二手に分かれてトゥスカを西に、俺はゴーレムとリザードマンの詳細を調べようと考えていた。
ただ、トゥスカを一人で行動させるのが怖いという思いもあった……自分の目の届かない場所に行かせてしまうことへの不安が。
第二防衛ラインの外周部を北側に向かって駆ける。
「“煉獄魔法”、インフェルノカノン!」
立ちはだかったリザードマン八体をまとめて消し去り、駆けながら獲得アイテムを確認する。
「“狂気の湾刀”? “痺れのレイピア”、“暗闇のタルワール”……バッドステータス、状態異常を与える武器か?」
「狂気は”混乱”、痺れは”麻痺”、暗闇は”盲目”状態にする効果を持っています」
トゥスカが教えてくれる。
「対処法は?」
「”回復魔法”のキュア系か対応する丸薬くらいですね。ただ、直接武器に傷付けられなければ問題ありません。それに、低ランクの武器なら状態異常になる確率も低いです」
「数で攻められるほど厄介な武器ってわけか」
「ご主人様!」
前からリザードマンが六体。
ゴーレムが未だに見当たらないのは、進軍スピードがリザードマンよりも遅いからか?
「私が、“跳躍”!」
トゥスカが跳び上がる!?
「……凄い」
十メートルくらい跳んだんじゃないのか?
「――爆裂脚!!」
トゥスカがリザードマン達に向かって落下し――巨大な爆発を巻き起こした!!
『ブモオオオオ』
俺が爆風に耐えるため動きを止めていたところに石の人形が近付き――拳を振り上げている。
「――パワーブレイド」
『ブオオ……ォォ……』
拳を躱すと同時に、グレートソードで真っ二つにする。
「なんだ、随分脆い」
”グレートソード”の切れ味のおかげか、Lvの恩恵なのか。
トゥスカの情報は今の俺のLvの三分の一以下での話だろうから、武器の性能とLvの増加、どちらも考えられるな。
「ご主人様! 西側にリザードマン、北にゴーレムが集中しているようです!」
トゥスカの報告。さっきの跳躍時に、上空から確認したのだろう。
――手が回らないのがもどかしい! 身体が複数欲しくなる!!
「急ぐぞ!」
「はい!」
●●●
「サンダラスレイン!」
”万雷魔法”により、乱戦状態の中から複数のグレイウルフとリザードマンのみを屠る。
「リョウ! 負傷者を連れて撤退しなさい! 私が殿を務めるから!」
「ジュリーさんお一人でですか!?」
南側。人数は割いていたけれど、突出した者、Lv10以上を一人も置いていなかったのは失敗か。
コセは多分、タマを南側に配置したかったんでしょうね。
彼は彼で、トゥスカを手元に残していたけれど。
その分東側は人数をかなり少なく配置していたし、広めの区域にしていたようだから、文句を言う気は無いけれどね。
「一人の方がやりやすいから、さっさと連れて行きなさい」
「はい、すみません!!」
最終防衛ラインまで後退すれば、”回復魔法”の使い手に治療して貰える。
「さて――”雷光”」
左手に装備した“雷光の甲手”の効果を使用する。
「”魔炎”、”瞬足”!」
炎の紫蛇を生み出し、雷が迸る左拳を”瞬足”と共に次々とリザードマンへ叩き込んでいく。
”魔炎”を操って飛び掛かってきたグレイウルフを弾き飛ばし、隙だらけになった所に左拳を打ち込む!
「あらかた片付いたか」
リザードマンは全滅させた。グレイウルフは、南側の出入り口からしか入れない個体は倒したけれど、壁を跳躍で越えられるのは大分入り込んだ様子。
「……今度はゴーレムか」
今の装備だと、ちょっと面倒だ。
「黒鬼からのプレゼント、使わせて貰うよ」
このタイミングで、カスタムモンスターとなっていた黒鬼を倒せたのは僥倖だった。
あの時助けた彼のおかげで、第二ステージでは規格外の力が手に入っている。
私が報酬で選んだのは、“魔炎のスキルカード”と“魔道力使い”のサブ職業。
「”魔力弾”!」
MPの十分の一を消費し、準魔法扱いの弾を発射。
「「「ブオオオオオォォォ!!」」」
魔法耐性の低い通常のゴーレム二体を、まとめて消し去る。
サブ職業の”魔道力使い”には”魔力弾”以外にも”魔力障壁”という物があり、必ず総MPの十分の一を使用する設定になっていた。
MPの総量が増えるほど効果は高まるため、ステージが上がっていっても、魔法が効かないモンスターが出てこない限り攻守共に役に立つ能力。
この効果を知っていなければ、この”魔道力使い”のサブ職業を報酬に受け取ろうとは思わないでしょうね。
私が、早めに手に入れておきたかった能力の一つ。
”魔力弾”を二度放ち、南側に現れたゴーレム四体を全滅……一体残った?
「ブオオオオ!」
「装備アイテムか!」
”魔力弾”をもう一度放って、残りを破壊!
「……アイテムは手に入っていない」
おそらく、一定の割合で効果を発揮する使い捨てのアイテム。
「見た目じゃ分からないし、取り込むタイプのお守りかな?」
お守り系は種類も多いし、特定は困難。
そもそも、ゴーレム全てが同じお守りを使用しているとも限らない。
「ゴーレムに対しては、一撃で倒せないと念頭に置いて対処した方が良いか」
面倒な。
「さて、少しMPを温存しようか」
ゴブリンから手に入れた”雷の剣”を装備。
私は、魔法使い.Lv3で”雷属性強化”を選択しているため、雷属性の武器の威力も上がる。
サブ職業を”拳闘士”から”剣闘士”に変更し、武術も魔法も使わず、撤退しながらグレイウルフを殺していく。
●●●
「ブレイクバッシュ!!」
メグミちゃんの”大盾術”で、ゴーレム三体が亀裂だらけとなって吹き飛ぶ。
「“暴風魔法”、ダウンバースト!」
メグミちゃんが吹き飛ばした先に居た三体と一緒に、まとめて圧壊させたわ!
「マズいぞ、ゴーレムが集まって来たせいでグレイウルフがどんどん突破して行ってる」
ゴブリンは女の子を狙ってきたけれど、グレイウルフの跳躍能力が高い子達は、私達を無視して村の中心地に向かってしまった。
リザードマンはほとんど現れなかったから、既に全滅させているけれど。
「どうしようかしらね~?」
MPが心許なくなってきてるの。
風特化の魔法使いにしてしまったから、TPを消費しての攻撃手段も無いし。
殿を申し出て、他の人達を先に撤退させたのは軽率だったかしら~。
Lvが8から10にあっという間に上がったから、ちょっと調子に乗っちゃった! テヘッ♪
「私も、武器を使うようにした方が良いのかしらね?」
「そんな事行っている場合!?」
考え無しにMPを使い切ったアヤちゃんが、文句を言ってくる。
これは……後でお仕置きね~。
「このゴーレムは硬すぎる! 魔法でどうにかしてくれ!!」
別のゴーレムを止めながら頼んでくるメグミちゃん。
「て、言われてもね~」
「パワーニードル!!」
白い獣人ちゃんが突撃してきて、青い槍でゴーレムを二体、まとめて貫いてしまう!
この子、ジュリーちゃんの奴隷じゃない。
「大丈夫ですか?」
「おかげで助かったわ~♪」
「ゴーレムには属性武器が有効だそうです!」
「なら、“火属性付与”!」
タマちゃんの助言で、メグミちゃんが“鋼鉄の大盾”に火属性を加えた。
「ゴーレム、また来るわよ! しかも十体以上!!」
アヤちゃんが教えてくれる。
MPが無いなりに、周りに気を配ってくれていたみたい。
少しは気が利くのよね~。
「私に任せろ!」
メグミちゃんが盾を掲げて意気込んだ時だった。
「トゥスカ、先に西側に行け!」
「すぐに来てくださいよ!」
「ああ――ハイパワーブレイク!!」
男女の会話が北側出入り口の外側から聞こえた瞬間、十体以上のゴーレムが――――消し飛んだ。
「……嘘」
「……凄いな」
アヤちゃんとメグミちゃんが、呆然としている。
「ゴーレムを全滅させた後、俺は西側へ行く! 三人は神像まで退避してくれ」
「「はい!」」
二人共、反射的に返事をしていた。
「タマちゃんは東側を経由して戻ってくれ! 気を付けてな!」
「はい、分かりました!」
彼は指示を出し終えると、ゴーレムの掃討に戻る。
「サトミ、どうしたの?」
「サトミ、早く撤退しよう」
「そ、そうね」
……どうしよう、本気になっちゃったかも♡
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