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ダンジョン・ザ・チョイス

魔神スピリット

21.突発クエスト・モンスタースタンピード

『これよりっ、突発クエストをっ、始めまっす!』

 警報音のような耳障りな音が止むと、運動会で先生の指示通りに喋らされている小学生のような声が村じゅうに響く。

『クエスト内容はっ、防衛殲滅戦でっす!』

 防衛で殲滅?

『村の真ん中にっ、デルタのっ、神像をっ、配置しましたっ!』

 この声、本気で不快だ!

『その神像をっ、千のモンスターからっ、守ってっ、くださいっ!』

 千のモンスター。どんなモンスターだ?

『モンスターはっ、村の周りのっ、草原の全方位からっ、押し寄せまっす!』

 喋っている奴を本気で殴りたい!

『開始はっ、正午ピッタシっ! その間っ、第二ステージにはっ! 入れませんっ!』

 ちっ! やっぱりダメか。

『クエストはっ、モンスターをっ、全滅させるまでっ、続きまっす!』

 面倒くせー。

『クエストを失敗したらっ、Lvマイナス5のっ、ペナルティーっ!! 更に、所持金没収っ!』

 ここに居る五人はともかく、他の奴等は実質ゲームオーバーになるんじゃないのか?

『でもっ、勝ち残った人達はっ、たくさん報償がっ、貰えまっす!』

 これ、喋っているのが本当にガキだったとしても、目の前に居れば全力で殴ると思うは。

『皆さんっ、正々堂々っ、冒険者シップに乗っ取りっ、力の限りっ、戦ってくださいっ!! 以上っ!』

 放送が終わった。

「このふざけたゲームの首謀者、絶対に殺す」

「あの、すいません」

 俺達の元に、二十人くらいのプレーヤーが集まっていた。

「俺達……どうしたら良いですか?」

 同い年くらいの男が、恐る恐る尋ねてきた。
 明らかに俺に聞いている。なんで?

「なぜ俺に聞くんだ?」
「さっきの戦いを見れば、コセ君に頼りたくなる気持ちは分かるよ」

 ジュリーが指摘してきた。

 遠巻きに、他のプレーヤーもこちらを観察している。

「……考えようによっては、好都合か」

 俺の指示に従いやすいと考えれば。

 防衛戦である以上、組織的に動いてくれた方が効率的だ。

「……名前は?」
「りょ、リョウです!」

 先程声を掛けてきた男の名前を聞いた。

「リョウ、皆と協力して、村中のプレーヤーを奴隷商館の前に集めてくれ。出来るか?」

「ま、任せてください!」

 リョウが他のプレーヤーに声を掛けながら、散らばっていく。

「皆、俺に協力してくれ」
「わ、分かったわ」
「良いよ」

 眼鏡女は怯えながら、ジュリーは楽しむように協力を約束してくれる。


◇◇◇


『アルバート、なにを勝手に突発クエストなんて発動してんのさ!』

『お久しぶりですね、オルフェ』

『ふざけてるんじゃねぇぞ! あたしのお気にのジュリーがこんなところで死んじまったら、どうしてくれるんだ!!』
 
 相変わらず、うるさい女ですね。

『私の推しであるコセ様を引き立たせる、サイッコーの状況だったもので』

『……あの黒鬼にトドメを刺した男か』
『第二十七期生の方々の中で、断トツの一位人気ですよ~』

 彼を主人公にして、本当に良かったー!
 まだ四本腕とのボス戦までしか公開していませんけれどねー。

『貴方推しのジュリー様だって、彼のおかげで随分Lvが上がったようじゃありませんか』

『テメーー』

 そのために、脇役のような立ち位置に納まってしまった。とでも言いたいのでしょうね~。

『……分かってんのか? 本来の私らの役目は、ああいう奇跡を起こしちまう人間を排除することにあるんだぞ?』

『まだ第二ステージすらクリアしていないのに、恐れる必要があります? 私としては、現在の攻略の最前線まで辿り着いて戴きたいと考えているくらいですよ』

『元々のシステムを構築した我等の先祖は、本当にクリアさせる気があるのか疑問だがな』

『一応、不可能ではないのでしょう?』
『実質不可能だろう、こんなもん』

 そう、限りなく不可能に近い。
 でも、不可能ではない!

『隠れNPCを導入してからは、最前線まで到達できる者が少しは増えたんですけれどね~』
『アレか……あまりいい気がしないけれどね。トライアングルの技術流用なんて』
『敵対しているとはいえ、我らは元々同族。そう邪険にしなくても良いではありませんか』
『遠い同族の中から

『オルフェ、彼等は我々が楽しむための駒。そうでなければ、そもそも問答無用で殺してきたのが我々という組織です。貴方は、我々デルタを否定するつもりですか?』
『そんなわけないだろう……でも…………なんでもねぇ。とにかく、私のジュリーがお前のせいで死んだら、お前をぶっ殺す! 分かったな!』

 私の空間から出ていくオルフェ。

『貴方の方こそ、危険ですよ』

 せいぜい組織に粛清されないように気を付けてくださいね、オルフェ。

『さぁ、コセ様。舞台は整えて差し上げました。大いに盛り上げて下さいませ!!』


             ★


○サブ職業、煉獄魔法使いを手に入れました。
○”魔炎のスキルカード”を手に入れました。

 黒鬼を倒した事で提示された、十を越える報酬の中からこの二つを選択した。

○スキル、“魔炎”を修得しました。

 スキルカードをさっさと使用し、四つまで装着可能になったサブ職業欄に”煉獄魔法使い”を選択。

「インフェルノ」

 予想通り、あの黒鬼が使っていた魔法を使用できた。

「ご主人様、私は“爆裂拳使い”のサブ職業と、“跳躍のスキルカード”を選びました」

 トゥスカが報告してくれる。

 俺はこれまで使用出来なかった、魔法攻撃手段と対魔法能力を求めた。
 トゥスカは自分の攻撃能力の底上げを図ったか。

「スキルカードは使ったか?」
「はい、既に」
「さすが、俺の妻」
「へへへへへへへへ♡」

 トゥスカがもの凄く照れてる。

「で、なんで”盾術のスキルカード”と”鉄の盾”を買い込んだのよ?」

 眼鏡女がうるさい。

「サブ職業の盾使いよりも、スキルカードの方が安いからだ」

 サブ職業が10000Gに対し、スキルカードなら5000Gで済む。

「いや、だからなんでよ?」

「……どれだけのお金をばら撒く気?」

 ジュリーは、俺がやろうとしていることに察しが付いたらしい。

「集められるだけ集めてきました!」

 リョウが報告してきた。

 奴隷商館前に、三十七人のプレーヤーが集まっている。そのうち五人が獣人。

「今から全てのプレーヤーに、獣人の奴隷を購入して貰う!」

 嫌悪を顕わにした奴等が少なからず居る。

「購入資金は俺が出す! プレーヤー同士でのパーティーは一時的に解消し、全員が獣人を二人ずつ購入しろ!」

 奴隷は強制的に主のパーティーメンバーになる。つまり、パーティー最大数が増えるLv11よりも下の者は、三人までしかパーティーを組めない。

 20000Gずつを実体化させると、一袋に20000Gが入っている状態で出せた。

 獣人の購入資金は一人10000G。これで、全員が奴隷を購入できる。

 トゥスカとタマ、ジュリーが獣人以外のプレーヤーに一袋ずつ配って回る。

「購入が終わったら、九時までに例の神像の前に集まれ! 生き残りたければな!」

 グダグダ諭している暇は無い。

「ちょ、どこに行くのよ!?」

 俺は困惑している奴等を放置し、奴隷商館の

「ここって!?」
「黒鬼に捕まっていたら、お前が来るはずだった場所だ」

 そう、奴隷に堕ちたプレーヤー達が檻に入れられている部屋。

「いらっしゃいませ、偉大なる冒険者様」

 可愛らしい女の子が声を掛けてきた。

「Lvの高い魔法使い、上位十名をリストアップしてくれ」
「承りました」

 すぐにチョイスプレートが出現し、顔が表示される。

「金額はバラバラか」
「こちらは所持スキル、装備、Lvによって金額は決まっていますので」

 この部屋に居るのはみんな男。奥には女が居るのだろう。
 反対側と同じか。

 確かに、獣人達と違ってそれぞれ違う格好をしていた。

「ちょっと、まさか……買うつもりなの?」

 眼鏡女に構っている暇は無い。というか、なんで付いてくる? さっさと奴隷を購入して来いよ。

「男より女の方が、魔法使いの比率が多いな」

 リストのうち、八人が女だ。

 残りの二人の男は……ダメだな、使えない。
 顔を見れば分かる。

 奥の部屋へと進み、残りの八人を探す。

「さっきの放送は聞こえていたな。戦力になって貰うぞ」

 ほとんどの女が、嫌そうに顔を背けた。

 ここに居れば安全だとでも思っているのだろう。

 そもそも、ここに居る奴等はモンスターと戦うのが嫌で奴隷に堕とされた可能性が高いだろうし。

「こ、ここから出られるの?」

 声を掛けてきたのは、濃い茶髪のショートヘアーの子。

 リストの上から七番目の子か。名前はアヤ。

「ああ、突発クエストをクリアしたら、奴隷から解放してやる」

 言ってて気持ち悪くなる。

「嘘は言っていないわね」
「へ?」

 確信めいた言葉が、アヤの後ろから聞こえてきた。

「サトミ。この人、本当に大丈夫なの?」

 アヤの後ろから現れたのは、大和撫子と形容したくなる程の美少女。

 リストの上から四番目の女。Lvは8か。

「魔法使いを購入して、火力アップを図りたいってところかしら?」
「そうだ」

 サトミが妖しく、おとっりとした喋り方で語り掛けてくる。

「なら、盾も欲しいんじゃないかしら? それも大盾術を使える子が」
 
 俺の考えを読んでいるかのよう。
 大盾術の存在は知らなかったが。

「戦士の女を買えという事か」
「フフフフフ。あの子、メグミって言うんだけれどね」

 サトミの指差す方向には、ポニーテールの長身の女がおり、俺を睨んでいた。

「女を金で買おうだなんて、気持ち悪い奴」

 自覚はあるよ。
 それにしても、サトミという女はメグミという女の能力を知っているのか。武器は所持していないのに。

「パーティーの空きが足りない」
「なら、彼女は私が買おう。ちょうどパーティーが空いている」

 ジュリーが申し出てきた。

「お金は出す。その代わり……」
「クエストが終わったら解放しろって言うのだろう。もちろん構わない」

 俺はアヤ、サトミ、メグミの三人の代金、174800Gを払った。

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