【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第87話 リヤカー

 俺達はまた装備を付けて、アスケルの森に来ている。
「エリアス、お前はこの森が本当に好きだな」
「えぇ、森は自然の恵みを与えてくれるし、それに落ち着きますから」
「それはそうだが」

 そう言いながら俺達は探し物をしている。
 正確には探しているのは俺だけど。
 オルガさん達には低い幹が茂るところを探してください、と伝えてある。
 何を捜しているのかって?
 お茶さ。
 この国で紅茶が栽培されていると聞き、お茶が飲みたくなった。

 お茶の樹の茶樹ちゃのきは、常緑樹だから一年中あるはず。
 探すこと3時間。
 森の奥に入り面倒な魔物は避け、美味しそうな魔物は狩りながら進んだ。

 あった!
 多分これだ?!
 鑑定で調べたてみたが、間違いなかった。
「オルガさん、アリッサさん、ありました!」
「ほう、これがお茶の樹か。初めて見たよ」
「ほんと、そうね」
「では、少しもらって行きましょうか」
 そう言うと俺はストレージに、辺り一面の茶樹を収納した。
 もちろん全部ではなく、増えるようにと残したけどね。

「では次はラプタですね」
 森にはラプタという卵を産む鳥が居る。
 今までは見かけても、そのままだったが今日は確保したい。

 そしていざ探すとなると、中々見つからなかった。
 そこでアリッサさんの風の探知魔法が大活躍した。

 だが見つけても傷付ける訳にはいかない。
 そこで考えたのが、河などで魚を捕る時に使う投げ編みだ。
 
 ラプタを見つけ風魔法を使い、網を広げ上から被せていく。
 この方法でオスを1匹、メスを6匹捕まえた。
 きっとこの子達が1つのファミリーなんだろう。
 鶏と同じならオス1羽に対して、10羽から30羽のメスがパートナーのはずだ。
 1日1個卵を産むと言うから毎日、卵を6個生んでくれるといいな。

 ラプタを持ち帰るのに、45cm真角の木箱を『創生魔法』で3つ創った。
 そして2~3匹ずつ入れ、1人1箱を持って帰る。

 今回は森の奥に入っていたので、出てくるのに時間が掛かった。
 森の出口に着くころには、みんな箱を下げて歩くのが面倒になっていた。
「もう街ですね。この箱を持って移動するのは面倒です。こうしましょうか?」
 俺は以前、騎士団に寄付した様なリヤカーを『創生魔法』で作って出した。
 ただ違うのは2輪だと安定が悪いので、4輪にして前一列に座席があることだ。

「なんだい、これは?」
「リヤカーと言って荷物を運ぶものです。オルガさん達も乗ってください」
「私達は荷物なのかい?」
「あはは、そう言わずに。ラプタを入れた箱を乗せて座ってください」



 俺はオルガさん達を乗せ、リヤカーをアレン領まで足早に引いて歩く。
 城門に近付くと門番や、街に入るために並んでいる人達が驚いて見ている。

「それはなにかな?」
 門番に聞かれてたので、思わず答える。
「これはリヤカーと言って、物や人を運ぶものです」
「ほう、そのロゴは…」
「あぁ、この前、俺が襲われた時に来てくれた騎士団の方ですね」
「この前の物より、運びやすそうだな」
「えぇ、あれから改良しましたから」
 全然、してませんけど…。

「そうか、しかしそれはどこで売っているのかな?両脇のロゴのエリアス商会はどこに店があるのかな」
おろしの店なので店舗は構えていませんよ」
「それは残念だ、前に貰ったのが便利でね。特に今回のも良さそうだから、騎士団で欲しかったんだよ」
「では冒険者ギルドの近くにある、アバンス商会に何台か卸しておきますから」
「そうかい、後で行ってみるよ」




 ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ、
  ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ、

 俺達は城門を通り、街中でリヤカーを引き歩いている。
「ねえエリアス君。恥ずかしいから、降りたら駄目かしら?」
「駄目ですよ、アリッサさん。これは宣伝ですから」
「宣伝か~」
 オルガさんも恥ずかしそうだ。

 エリアス商会のゴロが入った、リヤカーを引きながら街中を歩く。

 そしてそのまま俺達は、アバンス商会に向った。
 事情を話し何台か置いて貰わないと話が合わなくなる。
 すると店先に奥さんのオルエッタさんが丁度、出ていた。

「まあ、エリアス様。それに皆様、それはなんでしょうか?」
「これはリヤカーと言って、物や人を運ぶものです」
 俺はまた門番に言った事と同じことを言った。

「そんな、私との約束は明日なのに、そんなに待ちきれなかったのでしょうか?」
「あっ、いえ…「いくらエリアス様とは言えど、私は年上でしかも人妻ですよ!」
「えっ?わかっています…「わかっていても気持ちは正直、しかも白昼堂々と…」
「え、え?…「仕方ありません、エリアス様なら…「こら!オルエッタ。なにをやっいるのかね?店の前が騒がしいと思ったら…」
 アイザックさんだ、助かった。

「これはエリアス様、ようこそおいで下さいました」
「こんにちは、アイザックさん。実は…」
 俺はアイザックさんに事の経緯を話した。

 アスケルの森にラプタを捕まえに行き、運ぶのが大変なのでリヤカーを創った。
 そして城門の騎士団の人からリヤカーを欲しいと言われたこと。
 エリアス商会は卸なので店舗を構えていない。
 そのため、アバンス商会に卸すと話したことを伝えた。

「それは有難い。騎士団様との伝手つてが出来れば、こんな嬉しい事はありません」
「でも、本当に買いにくるのかは分かりませんよ」
「それは、勿論です。しかしラプタを捕まえて、どうされるのですか?」
「養鶏を始めようと思いまして」
「養鶏ですか?」
「えぇ、自分達の食べる分だけですが卵を生産したり、食用にしようと思いまして」
「ほう、それは。自分達で飼い、育て、食べるとは。さすがエリアス様です」

 何かその流れを言葉で言われると、残酷な気がするのは俺の気持ちの問題なのか。
 気持ちを切り替え俺は、2輪と4輪のリヤカーをそれぞれ2台ずつ卸した。

「この4輪のリヤカーは便利そうですな。物や人も乗せられ農家に喜ばれそうです」

 人を乗せる?
 待てよ、俺はあることを思い付いた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 読んで頂いてありがとうございます。
 物語はまったり、のんびりと進みます。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品