【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第84話 世界に一つだけの剣

 俺達は『なごみ亭』を出て一旦、屋敷に戻り防具を装備した。
  アスケルの森へ行こうと俺が言い出したからだ。
 アリッサさん達は武器を持ち、アレン領の城門を出た。

 時間もまだ午前の10時くらい。
 久しぶりに森へ行き果物や薬草、そしてカレーの香辛料を採りに行きたかった。

 俺達は森の中を走る。
 オルガさんやアリッサさんの動きが凄い。
 王都に行く頃からオルガさんは身体能力、アリッサさんは魔力が上がったと言う。

 どうしたんだろう?成長期か?
 17歳のオルガさんはわかるけど、250歳のアリッサさんは…。
 あぁ、エルフは長生きだから、250歳でも人間に例えたら17歳くらいだとか…。

「ねえ、エリアス君」
「なんでしょう?アリッサさん」
「さっきから私の顔を見ているけど、なにか不謹慎なことを考えていない?」
「か、考えていませんよ」
「そう、私って勘が良いんだから」
 亀の甲より年の功か。
「どういう意味なの?」
 万年生きる亀より短い人の人生でも、年長者の経験から得た知恵や技術は貴ぶべきだという意味です。
「だ、誰が年長者よ!!オルガさんと変わらないわよ」
 どうしてだ?
 最近、みんな俺の考えが分かるらしい。
 俺の思考が読める超能力者が増えて来た、気を付けないと。

 またエリアスは、心の声が口に出てるな。
 2人を見ていたオルガはそう思った。



 俺達3人は森の中を走り抜ける。
 カレーの香辛料クミン、チリーペッパー、ターメリック、オールスパイス、コリアンダー、カルダモンを見つけては採取していく。

 薬草を見つけグミの実、ブルーベリー、さくらんぼ、ビワ。
 イチジク、メロン、みかん、山菜やキノコもたくさん採った。

 それから竹に似た林を見つけたので少し収納した。
 その内、庭に河から引いた水を使い、鹿威ししおどしでも造ろうかと思ったからだ。
 
 そして岩山をストレージで収納し鉱物を採取する。
 これでオルガさんの、剣でも創ろうかな?

 そして思うのはアスケルの森に来れば豊富にある。
 でもアレン領の中に居れば、食料が手に入りにくいから食料が高い。
 森を誰かが開拓すればいいのか?
 
 俺は疑問に思った事をアリッサさんに聞いてみた。
 
「このアスケルの森は、誰も開拓しないのでしょうか?」
「そうね、したいけど出来なかったというのが本当ね」
「それはどうして?」
「この森は奥に入れば入るほど、傾斜が険しく強い魔物がたくさんいるわ」
「でもジリヤ国の管轄でしょう?」
「いいえ、アスケルの森はどの国のものでもないの」
「それは、どういう事でしょうか?」

「私達が居るジリヤ国の北東にシェイラ国、南東にラードルフ国が隣接しているわ」
「初めて聞きました、そうなのですか」
「そしてどの国も東にあるアスケルの森、アスケル山脈は自国としてはいなの」
「なぜですか」
「それは魔物よ。大型の魔物が森から出てきたり、スタンピードが起きたら自国なら他国から責任を求められるわ。それ以上の見返りを求めるから、数千人規模の人足を率いて開拓しないと資源採取は難しい。でもそんな余裕はどの国にもないわ」

「だから所有を主張しなければ、魔物が出ても責任は求められないと言う事ですね」
「その通りよ。でもこの険しい森や山脈を開拓できたら、魔物をどうにかできたら」
「その3国に匹敵するくらいの大きな国が出来る、ということですよね」
「でもそんなことは、今までどの国も成し得なかったわ。これからもそうかもね」
 う~ん、そうなのか。
 この大陸の中に誰の所有でもない土地が空いている。
 そこには豊かな土地と資源が眠っている。
 事業が一段落したら、開拓を考えるのも良いな。



 その後、俺達は食べられそうな魔物をたくさん狩った。
 ウサギ、イノシシ、熊系の魔物だ。
 食べられる魔物は単体行動が多く、探すのに手間がかかる。
 ウルフのような群れを成す魔物は、見つけるのは楽だけど余り美味しくない。
 
 狩った魔物の血抜きをしながら考える。
 アリッサさんの風の探知魔法と俺の『エリアサーチ』があれば、魔物や魔獣の位置が分かるから狩りにはもってこいだ。
 そしてオルガさんがいれば、大抵の魔物は倒せる。

 以前、オルガさんは魔法剣士で炎の魔法を使うことが出来ると。
 しかし普段、炎の魔法を使える機会はない。
 なぜなら火災の元になるからだ。

 だからオルガさんは、魔法は使わず身体能力だけで今まで頑張って来た。
 魔法が使えるのに、使わないのはどれほど悔しいだろうか。

 そこで俺は思った。
 他の属性に魔力を変換すれば良いのでは?と。

 以前、オルガさんの剣をいつか俺が作ろうという話があった。
 炎系だから材質は高い熱伝導性を持つ緋緋色金ヒヒイロカネと考えたが。
 それ以外の属性なら特にこだわる必要はない。

 ストレージの中には今まで収納した鉱物がある。
 その中には少しならミスリル、アダマンタイト、緋緋色金ヒヒイロカネがある。
 そして鉄や鋼もある。

 それならそれぞれの良いとことを、合わせてしまえば良いのでは?



 俺はストレージの中で金属形成していく。
 芯や反り、峰や刃の部分を創っていく。
 そして柄の部分に5~6cmくらいの緑色の魔石を取り付ける。

 そして出来上がった剣をストレージから出した。
 刃が緩やかな弧を描き、峰が真っ直ぐな刀剣。
 刀身の全長が約80cm。
 鋭い切先で敵を簡単に斬り飛ばしてしまうことが出来る。
 適度な硬さと柔らかさ、魔力伝効率の良い世界に一つだけの両手持ちの剣。
 それが『ファルシオン』だ。

「エリアス、その立派な剣はなんだ?」
「これはオルガさん用の剣ですよ」
「えっ、私にか?!」
「以前オルガさん用の剣を、創ると約束しましたよね」
「そんなこともあったな」

「でも炎の属性を生かすから材質は緋緋色金ヒヒイロカネだと」
緋緋色金ヒヒイロカネは貴重で、剣1本分の材質は集まらない」
「だから俺の持つ剣のように混ぜて使う事が多いと」
「あぁ、そうだな。だが炎属性の魔法剣士は、火災を考えると需要が無いからな」
「それならこれを持ってみてください」
 俺はオルガさんに『ファルシオン』を渡した。
「これは両手持ち剣だが、バランスが良くて振りやすい」
 オルガさんは剣を振っている。

「魔力を流してみてください」
「なんだと?!」
「いいから、炎の魔法を付与してみてください」
「あぁ、わかった」
〈〈〈〈〈 ブゥ~~ン!! 〉〉〉〉〉

 オルガさんが剣に魔力を流すと、剣が震えるかのように光った。
「こ、これは?!」
「魔法剣です」
「魔法剣?」
「オルガさんが魔力を流すと、その緑色の魔石が風魔法に変換してくれるんです」

「「 魔力を変換するだって?!(ですって?!) 」」
 オルガさんとアリッサさんが、同時に大きな声を出す。
 2人共、何を驚いているのだろう?

「魔力を剣に流すと風魔法を、付与できるようにしてあります。丁度、剣がウインドカッターを纏うような感じになり、切れ味が大幅に上がります」
「でもエリアス。そんなことが…」
「オルガさんが炎属性で、魔法が活用できなくて悩んでいたから」
「それで違う属性に変換を?!」
 アリッサさんが聞いてくる。

「風魔法なら攻撃に適しているし、周りにも被害が出ないので」
「と言われても。そんなことができるなんて…」
「エリアスに常識を言っても無駄だ。ありがとう、これで思いきり魔法剣が使える」
「オルガさんの力になれれば、それだけで俺は嬉しいです」
「こ、このやろう~」
 オルガさんはとても照れて、俺を抱きしめた。
 でも俺より背が高いから抱きしめられている、俺の方が女子みたいだ。
 このまま女子化して、しまうのもいいかも…。

「しかし、この剣は不思議な色をしているな」
「複数の鉱物を交ぜているからでしょうね」

 所々、色が重なりまるで虹のように光る綺麗な剣だった。


 アリッサは思った。
 魔法剣なら目が飛び出る様な金額にはなるが、手に入らない訳ではない。
 しかし魔力変換など、聞いたことが無い。
 また1つ、おおやけに出来ないことが増えた。
 いつまで彼を守りきれるかしら。
 あまりにも規格外すぎるわ。


 後世、万の大軍を、そして幾多の魔物を倒した伝説の剣、
『Rainbow-colored sword(虹色の剣)』の誕生だった。

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