【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第80話 帰宅報告 女神ゼクシー

 朝、俺はいつも通り5時くらいに起きた。
 なんせ寝るのが早いからね。
 
 この世界は日の出と共に起きて、6~7時くらいから仕事が始まる。
 そして夕方、暗くなるまで働くのが普通だ。
 だから日が長くなる夏は、冬場に比べて労働時間が長い。
 労働時間が守られているのはギルドのような大きな組織だけだ。
 労働者や商店に勤めている人は、労働時間は関係ないらしい。
 それでも仕事があるだけ、良い方だからだ。


 アリッサさんやオルガさんが起きて来ない。
 部屋に行くと2人共、爆睡していた。
 やはりゲームが面白くて朝までやっていたようだ。

 これが他の家なら夜遅くまで起きていると、灯の油代がかさむと怒られるけど。
 この屋敷は屋根に『ソーラーパネル』ならぬ『魔素吸収パネル』を設置している。
 大気中にある魔素を吸収し、各部屋の魔道具に魔力に変換して供給している。
 だから使い放題なんだ。

 しかし不規則な生活はよくないから、続くようなら言わないとね。
 

 俺は仕方が無いので『なごみ亭』で朝食でも食べようと家を出た。
 『なごみ亭』は屋敷から近く、食事ができる店があるのは助かる。


「いらっしゃいませ~!!」
 『なごみ亭』の看板娘、アンナちゃんの元気のいい声に迎えられる。
「エリアスお兄ちゃん。いらっしゃい!!」
「一人前頼むね!」
 お金は前払いだ。
 そして食べたら帰れば良いから、店側も分かりやすい。

「王都からいつ帰って来たの?今日は1人?オルガお姉ちゃんは?」
「昨日夜更かしして、今日はまだ寝てるよ」
「そうなんだ、ゆっくりしていってね」

 4人掛けの丸いテーブルが5つある。
 しかし満席と言うほどではなかった。
 あれ?
 前よりお客が減った?
 
 
 俺はそんなことを考えながら、空いている席に座った。
 この店にはメニューがない。
 なぜなら違う物を作ると効率が悪くなる。
 だからお店側がその時々の食材で、一度に同じものを作りお客に出している。
 お任せという奴だ。
 
「あらエリアス君、久しぶりね」
 奥さんのサリーさんだ。
「えぇ、王都から帰って来たばかりで」
「それにしては随分、早かったわね」
「天候に恵まれまして、あはははは」
 そう言うしかなかった。

 サリーさんは厨房とホールを、忙しそうに行き来している。
 家族3人でやってるから大変だな。
 するとサリーさんがまたこちらにやって来た。

「エリアス君、悪いけど主人のビルが相談があるそうなの」
「相談ですか?なんだろう」
「えぇ、八時過ぎたら落ち着くから、時間がある時で良いからまた来てくれない?」
「良いですよ。ビルさんに伝えておいてください」
「ありがとう、エリアス君」
 そう言うとサリーさんは、仕事に戻って行った。

 俺は食事を食べ終わり『なごみ亭』を出た。
 これから、どうしようか?
 そうだ。
 おれは王都から帰って来た報告をしようと、教会に向かう事にした。

◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇

 教会に行くと朝の礼拝のため、思ったよりも人が多かった。
 しばらく待ってから大聖堂の中に入った。

 俺は女神ゼクシー像の前に跪き目を閉じ祈る。
 すると白い霧のようなものに包まれた場所にいた。
 
 シク、シク、シク、シク、
  シク、シク、シク、シク、泣、(´;ω;`)ウゥゥ 

 見るとゼクシーかあさんが、カウンター台の向こうで九九を唱えていた。
 しかも四の段で、つまづくとは…。

「違うわい!誰が九九を言っていると…」
        「まあまあ、抑えてゼクシー」
「しかし、この子が…」
        「今の子供は叱ったら、凹むだけで教育にはならないわ」

 また、かあさんが1人で何かを言っている。
 やはりこの何もない空間に、一人住まいと言うのは良くないな。
 それともボケたのか…。

「誰がボケたのよ?!ひどいわエリアス」
「いったいどうしたと言うのですか?」
「王都に行く前に、『王都から戻ったらまた来ます』と言ったわよね」
「えぇ、言いました。だからこうしてやって来たのです」

「やっぱりそうなのね。私が言っているのは昨日、帰ってきたでのでしょう?」
「はい、そうです」
「昨日来て、ほしかったのよ!!」
「そうなんですか」
 面倒な性格なのですね…。

「そうよ。私のところに来ないで、猫娘とエロフと遊んでいたでしょう?」
 エルフです、かあさん。

「かあさんはなんでも、ズバッとお見通しなのよ!!」
「わ、わかりました。今度からは真っ先に寄るようにしますから」
「そうしてね。分かれば良いのよ、分かれば」
 かあさんは両手を腰に当て無い胸を張る。

「そうだ、美味しいものがありますよ」
「またなにか作ったのね。楽しみだわ」

 そう言うと俺達はカウンターの奥のドアを開け、かあさんの家に行った。
 二階建てのリビングにある木製のテーブルの椅子に座った。

 俺はストレージからイールの蒲焼を出した。
「これは?」
「イールの蒲焼です。お米があれば、丼物ができるのですが…。まあ串焼きかな?」
「あなたが前に居た世界とは違うからね、ここは」
「そうですね、残念です」

 そしてどのくらい過ごしたのだろう?
 そろそろ戻らないと。

「また美味しいものが出来たら、持ってきてね。待っているわ、私のエリアス」
「また来ます、ゼクシーかあさん」

 そして俺は立ち上がり大聖堂を後にした。

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