【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第75話 ファイネン公爵

 私の名はノルベール・シュレーダー・ファイネン公爵。
 ジリヤ国は中心の王都を守るように、東西南北に6つの領で囲まれている。
 更に王都の東西に2つの公爵家を配置し外敵に備えている。

 その王都の両翼と呼ばれる、東の公爵領を治めているのが私だ。
 2年前に父が他界し公爵の位を引き継いだ。

 だが公爵とはいっても、代替わりしたばかりの若輩者。
 隣接しているフェフナー侯爵の娘の、成人祝いの招きを受け親睦を兼ね伺った。

 この国では15歳が成人となる。
 私は妻のナタリアと、娘のエリザを連れて参加しその帰り道だった。
 娘のエリザは10歳。
 この機会に貴族の場に、慣れておくのも良いだろうと思い連れてきた。
 家族全員が揃って家を出て、なにかあっては困るので長男は領で留守番だ。


 馬車は3台あり、私達親子は安全を考え真中を進んでいる。
 すると突然、道のわだちに車輪を取られたのか馬車が横転した。

 私達親子は突然のことで驚き衝撃に耐えた。
 山道を馬車で進めば、たまにはあることだからだ。

 護衛の騎士達が力を合わせ起こしてはみたが、車軸が折れてしまったらしい。
 もう使い物にはならない。
 こんなところに捨てていくのは忍びないが仕方がない。
 そう諦めた時だった。
 目の前に12~14歳くらいの男の子が突然、現れたのは。




「「「 何者だ!! 」」」
 俺が馬車に近付くと、護衛の騎士達が一斉に剣を向ける。

 すると貴族の男性が俺に聞いてくる。
「君は誰だね?!」
「俺は冒険者でエリアスと言います。王都まで依頼を受けて向かう途中です」
「冒険者が私になんの用かね?」
「馬車の件でお困りのようでしたから」


「お待ちください」
 するとアリッサさんが、後からやって来た。
「私は冒険者ギルドのアリッサと申します」
 そして男性との間に入り、俺に背を向け男性に何かを見せたようだった。
 すると貴族の男性は驚いた顔をした。

「彼に任せてください。彼なら大丈夫ですから」
「そ、そうか疾風の…「う、うん!!」
 なぜかアリッサさんの咳払いに遮られた。

「わ、わかった。エリアスとか言ったな。馬車をなんとかできるのかい?」
「おまかせください。これから皆様に手品をお見せいたしましょう!!」

 俺はそう言うとはハンカチを、ズボンから出し広げてみせた。
「取り出したるこのハンカチ、種も仕掛けもございません」
 そう言いながら裏表にひっくり返して見せる。

「ではご覧ください。えい!!」
 俺はそう言うとハンカチを馬車にかけストレージに収納した。
 
「「「  オオッ?!! 」」」

 貴族の男性を含め、見ている周りの騎士達やメイドさんも驚いている。

「すっ、凄い。馬車が消えたわ!!」
 多分、貴族の男性の娘だろう。
 少女がとても驚き喜んでいる。
「さあ、ここからよくご覧ください」

 俺はそう言うと手品と言えば、この曲と言われる名曲を口ずさんだ。
 チャラララララ〜、チャラララ、ランララ〜

 そして再びハンカチを裏表にひっくり返し変な足使いで踊る。
 その間にストレージの中の『創生魔法』で馬車を修復していく。
「 はい!! 」
 俺は大きな声でそう言うと、ハンカチを上下に振った。

〈〈〈〈〈 ドン!! 〉〉〉〉〉

 すると修復されて車軸が直った馬車を出した。

〈〈〈〈〈 オォ~~!! 〉〉〉〉〉

 周りの人達が突然直った馬車が現れたことで驚く。

「す、凄いですわ!!」
 パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、
 そう言いながら少女が手を叩いていた。

「たしかエリアス様でしたね?これはどうやったのでしょうか?」
「これは手品と言います。お嬢様」
「まあ手品ですか?初めて聞きました」
「はい手品とは人間の錯覚や思い込みを利用して、実現不可能なことが起きているように見せる芸です」
「まあ、素敵?!こんなの初めてです」
「そうですか?ではもう一度」
 俺は調子に乗ってハンカチをひらひらさ、馬車を消したり出したりした。
 
「エリアス君。もうその辺にしたら?」
 アリッサさんに止められるまでやっていた。
 後を見るとオルガさん達も追いついたようだ。

「では俺達は先を急いでおりますので、お先に行かせて頂きます」
「まあ、そう言わずに。方向は同じだ、私達と一緒に行こうではないか」
 貴族の男が声をかけてくる。

「このお方はこの先のウォルド領の領主、ウォルド公爵であられるノルベール・シュレーダー・ファイネン閣下とそのご家族様ですぞ!!」
 執事の様な男の人から紹介され、俺とアリッサさんは軽く頭を下げた。
 そして何事かと馬車を降りて来たアバンス商会のアイザックさんと、オルガさん達も軽く頭を下げた。

「そんな硬い話はどうでも良い、ここでは馬車のお礼もできない。だからウォルド領まで一緒に来てもらえないか」
「いえ、お礼はいりません」
「そう言う訳にはいかない」
「困っている時はお互い様ですから」

「こちらにも貴族の面子と言う物があるのだよ」
「では今、できるだけでかまいませんから」
「そうか、それなら少し待つがよい」
 侯爵はそう言うと一旦、馬車に戻り戻って来た。
「これを授けよう」
 そう言って手渡されたのは、なにやら紋章が入ったメダルだった。

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