【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第68話 女神ゼクシー

 朝になった。
 今日から王都に輸送と護衛の仕事に行くことになる。
 12~14日くらい、往復でかかるみたいだ。

 オルガさんはブロンズアーマーを着て、ミスリルソードを腰に下げている。
 俺はレザーアーマーを着て、剣はストレージに収納しているので下げてはいない。


「行きましょうか、オルガさん」
「そうだな、エリアス」
「ではアリッサさん、一緒に住み始めたばかりで寂しいでしょうがお留守番です」
「いいえ、私も同行するわよ」
 そう言うアリッサさんも、レザーアーマー姿だった。

「でもアリッサさん、いきなり護衛が増えたと言っても駄目ですよ」
「それでも良いの、私はエリアス君と居たいのよ」
 ま、まじですか…。
 ここまでストレートだと、熱いものが込み上げてくる。


 オルガさん1人では、エリアス君の暴走は止められないわ。
 アリッサは心の中でそう呟く。

「この広い屋敷に1人残されるのは嫌ですよね。分かりました一緒に行きましょう」
「いいのかエリアス。アイザックさんの了承も得ないで勝手に決めて」
「アイザックさんには私が話をするわ。きっと納得してくれるわ」
「アリッサさんがそういうなら、私は何もいわないけど」
「大丈夫よオルガさん。さあ行きましょう」

「待ち合わせの冒険者ギルドに行く前に、大聖堂に寄ってから行きましょうか」
「道中の無事を祈るのね」
「いいね、それは」




 俺達3人は教会に向かう。
 大聖堂に近づくと何やら騒がしい音がする。

「トンカン、トンカン」
「カン、カン、カン」

 どうやら修繕工事中らしく人夫が何人も働いている。
 以前来た時には寄付が減り、お金が無いようなことを言っていたが。
 なにか臨時収入があったのかな?


 大聖堂の中は時間が早いせいなのか、礼拝者は少なかった。
 17歳くらいの若いシスターが対応してくれた。 

 俺は女神ゼクシー像の前に跪き、目を閉じ祈る。
 すると白い靄のようなものに包まれた場所にいた。

「はい、次の方どうぞ~!」

 市役所の様なカウンター台の向こうから声がする。
※アンダーリムのメガネをかけた、20歳くらいのスレンダーなメガネ女子がいた。

「おはようございます!かあさん」
「かあさん?あぁ、エリアス。会いに来てくれたのね」
「これから王都に依頼で行くので、その前に挨拶に来ました」
「立派に生活しているのね。安心したわ」
「これも、ゼクシーかあさんのおかげです」
「まあ、この子ったら!」

 エリアスだっけ?
 たくさんの魂を仕事で毎日、見送っているから忘れていたわ。
 私が名前を与えた子ね。
 しばらく見ないうちに、随分きれいな魂になったわね。
 転移と共に精神年齢も15歳に若返るようにしたからかな~?
 生前生きた35年間の垢まみれの人生が消えて、純粋な年齢まで戻ったのね。
 ある意味この世界のことを知らないから、世間知らずかな。

 どれどれ、【鑑定】!!
 名前:エリアス・ドラード・セルベルト
 種族:人族
 年齢:15歳
 性別:男
 職業:創生魔法士マジック クリエイター
 HP 200
 MP 130,002,305,164,572,130,000,000,855,476,891,600,000,000,044,676,110

 ……………………。
 な、なにかな~?
 このマジックポイントの量は…。

 こ、この子がこの世界に、転移して来てからの生活を見てみようかな。
 ふむ、ふむ。
 な、なによこれ?!
 大気中にある魔素を収納して、魔力に変換してるって?!
 馬鹿なの?

 それから『ステータス能力鑑定不能』!
 鑑定不能て、どういうことよ?
 私は女神なのよ!!

【スキル】
 生活魔法
 火:LV2
 水:LV2
 氷:LV1
 風:LV2
 光:LV2
 世界の予備知識:LV2

【ユニークスキル】
 異世界言語
 鑑定
 時空間魔法ストレージ(カスタマイズ可能):LV3
 創生魔法:LV3

【メンタルスキル】
 沈着冷静:LV2
 高速思考:LV3
 魅力(人から好感を持たれる。発動しないこともある):LV3

【加護】
 女神ゼクシーの加護
 愛し子

 う~ん。スキルは見れるのね?
 この子は何になりたいのかしら?
 ステータスがアンバランスね。
 生活魔法だから魔法も大したことは無いし。
 でもこの魔力量なら、指先に灯す程度の魔法でも大魔法なんだけど。

『時空間魔法ストレージ』と、『創生魔法』がメインなのね。
 だから創生魔法士マジック クリエイターか~。

『沈着冷静』、『高速思考』だなんて、普通は望まないスキルよ。
 なにか役に立っているのかしら?
 転移前に本人が望んだ能力だけど…。

 それから『魅力』。
 転移して一人ぼっちで寂しくないように、人から好かれるように付けた能力ね。
 まあ、『魅力』といっても魅了チャームの魔法とは違うけど。
 赤ちゃんの愛らしさに、大人が無意識に反応してしまうレベルね。
 誰からも好かれる。
 ある意味この世界で生きていくための、自己防衛本能みたいなもの。
 まあ中には子供の無邪気さが嫌いな人も居るだろから。
 効かないこともあるだろうけど。

 ちゃんと私の【加護】がついているわ。
 それに名付け親だから『愛し子』なのね。


 えっ、なにこれ?!
「ねえ、エリアス。あなたの側に居る、この2人の女は誰なのかな~?」
「あ、これは…。俺の奥さん達です」
 奥さん?しかも『達』?

 私はエリアスが転移してから、1ヵ月間のことを呼び起こした。
 な、なんと言うことを…。
 私の許可も無く、転移して間もないエリアスに手を出して結婚するなんて…。

 母親は息子が結婚した時に、子供を嫁に取られたような気持ちになるというけど。
 あぁ、これが母の気持ちなのね。

 母子家庭でここまであなたを、育てて来た甲斐があったわ。(1ヵ月間だけど…)
 こんなに立派になって。
 おかあさんは嬉しいわ。
 オイ、オイ、オイ、(´;ω;`)ウゥゥ

 女神ゼクシーは自分の妄想に酔い寸劇を始めた。
 転移の際にその痛い性格も、エリアスは引き継いてしまったのかもしれない。
 この親にして、この子あり。
 



 だ、大丈夫かな?かあさんは。
 さっきから一人でなにかブツブツ言っているけど。
 こんなカウンター台しかない空間に、毎日居たらおかしくなるよな。

「そうだ、かあさん。これ食べませんか?」
 エリアスはストレージから、オークカツカレーを載せた皿を出した。

「まあ、なにかしら?」
「俺が作った料理です」
「良い匂いね、頂こうかしら?こちらにいらっしゃい!」
 そうかあさんが言うと、俺はカウンターの奥にドアがあることに気づいた。

「どうぞ」
 そう言われドアを開け中に誘われる。

「靴は脱いで上がってね」
 靴を脱いで玄関を上がるとすぐに階段があり、上ると2階に続くようだ。

 そのまま短い廊下を進むと、左側は浴室とトイレ。
 そして右側には6畳くらいの和室がある。
 その正面の両開きの扉を開くと、12畳くらいのリビングと台所になっていた。
 まるで2階建ての日本の住居のようだった。

 そして4人掛けの木製のテーブルがあり、俺はかあさんと向き合って座った。
「では、いただきま~す!!」
 ゼクシー母さんはどこからか、スプーンを出して食べ始めた。

「か、辛い~、でも美味しい。こんな食べ物初めてよ」
「かあさんは普段は自炊ですか?」
「なにを言っているの。神は信仰心が糧だから食事はしないのよ」
「へ~」
「でも、味覚はちゃんとあるから、食べ物の味はわかるから安心してね」
「そうなんですね。かあさんは日本を知っているのですか?」
「どうして?」
「この家が日本の家みたいだからです」
「それはねエリアス。この世界は背中合わせに、たくさんの世界があるのよ。私達神は行き来は出来ないけど、情報交換の為に他の世界を覗くことが出来るの」

 その世界の中に面白い国があった。
 その国の文化は漫画、アニメ、ゲームそれにファンタジーの世界。
 私は夢中になったことを話した。

「それは生前、俺が居た日本と言う国だと思います」
「そう、そうだったの。偶然ね」

 こうして俺達親子は初めて2人の、楽しい時間を過ごした。

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※アンダーリム:枠が下だけあるメガネ。ファンタジーのメガネの定番。

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