【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ

第48話 アバンス商会会長 アイザック

 私の名はアバンス商会会長アイザック・エリントン。
 我が商会が領内において、今の地位に就くまでの道のりは並大抵のものではなかった。 祖父の代から商会をやり、最初は下級貴族からお得意様になって頂いた。
 儲けるためにお金を使い、貴族に取入る。
 そしてその上の爵位の貴族を紹介してもらい、やっと私の代でここまでになった。
 長男も32歳となり、もうそろそろ店を任せても良い頃だった。

 そんなある日、黒髪の10~12歳に見える美少年と獣人の女性が来店した。
 少年は小麦粉100kg、椎茸と鰹節を購入してくれた。
 すると突然、小麦粉や椎茸、鰹節が消えたのだ。

 マジック・バッグだ!!私は突然のことで少年に詰め寄ってしまった。
 それを止めたのが連れの獣人の女性だった。
 良く見ると女性は、ここら辺では有名なAランクの冒険者だった。

 連れの少年とパーティーを組んでおり、しかも少年はEランクだと言う。
 それではあまりにもバランスが悪いと思うが、それでもうまくやっているようだ。

 その意味が分かった。
 少年はこの店の広さと同じくらい入る、マジック・バッグを持っていたからだ。
 獅星龍のオルガと呼ばれるこの獣人は、誰とも組まず1人でやっていると聞く。
 彼女が魔物を倒し彼がマジック・バッグでそれを収納して運ぶ。
 これだけで十分に価値がある。

 今度、王都に買い付けに行く予定があった。
 王都で商品を仕入れ、アレン領で売る。
 都会で流行っている物を仕入れ田舎で売る。
 このやり方だから商売が成り立つのだ。

 王都に店を出せば人口も多く、それに比例して客も多くなるだろう。
 だがその分、競争相手も多く上手くやって行けるとは思えない。
 それだからこのやり方を貫いている。
 そしてそれには危険が伴う。

 王都まで天候にもよるが片道6~7日はかかる。
 そこで仕入れれば仕入れるほど、持ち帰るために必要な馬車の台数も多くなる。
 そして道中の警備に冒険者が、その分だけ必要になる。
 一つ間違えると経費倒れになる。
 
 だが彼のマジック・バックの容量が30坪はあるこの店と同じくらいなら、馬車6台分くらいにはなる。彼に頼めば私たちが乗る馬車1台で済むのだ。
 そして護衛も少なくでき、経費削減が出来る。
 さっそく私は彼らに交渉し運搬と護衛を頼んだ。
 
 これは最強の組合わせだ。
 大容量のマジック・バッグを持つ少年と、護衛のAランク冒険者。
 これから彼ら2人は商人や貴族の間で、人気がでるだろう。
 その前に懇意にしてもらえばと思い、相場より依頼料は高めにしておいた。


 だが2人だけでは心もとない。
 少年はEランクだから、護衛にはならないだろうから。
 エリアスと言う少年が薦める、Dランクパーティーの3人組に依頼を出した。
 馬車1台に冒険者4人なら十分だろう。


 それから数日後、今度はエリアスという少年とオルガ様。
 そしてなんと伝説にもなっている、疾風のアリッサ様を連れて彼はやってきた。

 寝具を3人分、買いに来たと言う。
 そしてこれから3人で住むと言う。
 これは先見の明がある。 
 いずれ彼のマジック・バッグのことが世に知れれば、引く手あまたになる。
 今のうちに仲良くなりたいのは、私だけではなかったようだ。

 そして彼は木工加工が得意のようで、家具を見てほしいと言う。
 マジック・バッグから出された家具を見て、私は心を奪われた。
 こんな綺麗に加工された家具は見たことが無い。

 それにこの三面鏡ドレッサーというのは素晴らしい!
 鏡が前と左右の板に三面に付いる。
 その左右に板を出すと前と左右から、髪型が見えるという。
 これは必ず女性に人気がでる予感がした。
 
 貴族でお金を使うのは女性の方だ。
 女性相手の商品は多少、高くても売れる。
 それにこの歪みの無い美しい鏡なら必ず売れるだろう。

 私はさっそく、定期購入の交渉をした。
 4人掛けのテーブル、椅子4つ、タンス、三面鏡ドレッサーと椅子のセット。
 全部で100万で仕入れることにした。
 この3倍で売っても、飛びつく人が多いだろう。
 もっとも三面鏡ドレッサーに、一番最初に飛びついたのは私の妻だったが…。
 これで売れると確信が持てた。


 聞くと宿屋の『なごみ亭』の並びの屋敷跡を購入したと言う。
 あそこは昔からある不良債権で、商業ギルドが売れず持て余していたところだ。
 人が住まなくなった屋敷は老朽化が酷く、草や木々で覆われてしまっている。
 それを刈り家を直して住むには、莫大な費用が掛かる。
 そんな物好きはいないはずだった…。

 それをエリアスという少年が1人で改築したという。
 そんなことはありえない。
 だが不思議と彼なら出来そうな気がした。
 暇があれば見に行こうと思っていたが、時間が無くて確認はしていなかった。
 今日たまたま道で会い、用事の帰りに店に寄ってくれれた。
 その時に高級家具の追加注文をした。
 あぁ、そうだ、失敗した。
 分かっていれば、たくさん高級家具を作ってもらえば良かった。
 王都で売れば3倍以上に売れるはずだ。

 そして今夜は家のお披露目会で、ワイルドボアとビッグベアの肉を振舞ってくれると言う。
 肉はとても貴重で、狩人や冒険者が狩って売るので供給も不安定で高い。
 森に行ったら『たまたま出会い狩った』と軽く言う。
 普通ではない!本当なら生きて帰ってこれない。
 なぜならビッグベア、特にワイルドボアは大掛かりな討伐で倒す魔物だからだ。

 いくらAランクの獅星龍のオルガが一緒でもあり得ない。
 それならエリアスと言う少年も、知られていないだけで戦闘能力が高いのか?!

 その場所は店から近くで、私は供の者を2名連れ徒歩で向かっている。
『なごみ亭』を過ぎそろそろ屋敷跡に近付いたと思うと高い塀が見えて来た。
 塀の向こうには見たことも無い大きな屋敷が…。
 いいや宮殿と言ってもいいほどの建物がそこにそびえ立つ。

 いつの間にこんな建物を…。

 巨大な門の前に着くと、見たことのある男女が門を見上げ立って居た。
 商業ギルドのギルマスのアレック様と受付のノエル様だった。

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