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父ちゃんと呼ばれるまで

ナカムラ

お別れの時

 ついに、この日が、きた。
外国に、出張中の夫婦が帰ってくるのだ。
彼と、夫婦は、連絡を取り合い、夫婦の家に行くことになった。
子供達には、行き先を告げずに、一緒についてくるように伝えた。
夫婦に子供達を会わせると、夫の方は、怒って言った。「なんて事してるんだ。犯罪まがいなことをするな、忠!知らんぞ!!」
彼は、言った。「子供達は、困っていて、助けようと思って、あなた達が、子供が欲しいと言っていたので。」
しかし、妻は言った。「あなた、預かりたいわ。この子達、美味しいお菓子があるからどうぞ。食べて。」
子供達は、最初、怯えていたが、奥さんの優しい人柄に、緊張が溶けていった。
子供達は、普段食べられないようなお菓子を奪い合うように食べた。
広太は、言った。「でも、僕達は、おじさんのところにいるよ。」
和太も言った。「僕も。」
花子も言った。「花ちゃんも。」
彼は、わざと怒ったように言った。「お前達なんかいらない。迷惑なんだ。せっかく何不自由なく暮らせるんだぞ。さっさと夫婦の子供になれ。」
広太は、言った。「でも、やっぱりやだ…。」
雄太は、その言葉を遮った。「僕は、この夫婦の子供になるよ。」
雄太は、わかっていた。彼の目に涙が滲んでいたことも。本当は、自分達を手放したくないことも。
広太達は、怒って言った。「いいよ。もう、僕達も、この夫婦の子供になるよ。おじさんなんか知らない。」
花子は、わんわん泣いた。
雄太が、花子をあやした。
彼は「じゃあ、さよならだな。雄太、広太、和太、花子、楽しかったぞ。幸せになれよ。」
彼は、後ろを向くと、肩を震わせて、帰ろうとした。
雄太以外の子供達も、その姿を見て、彼の心を察した。
子供達は言った。「せーの、父ちゃんありがとう。」
彼は、後ろを振り向かず、背中を向けながら、手だけを振った。
夫婦と実母は、話し合い、正式な手続きをし、子供達を預かることとなった。

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