父ちゃんと呼ばれるまで

ナカムラ

おそれていた事

 あと、10日ほどで、親戚が、帰ってくる。
子供達とも、すっかり慣れ、もうすぐお別れだと思うと、感慨深い。
でも、決して「父ちゃん」とは、呼んでくれない。
彼には、わかっていた。
その言葉が、子供達にとって、どんなに大切な言葉か。
今日は、休みだった。子供達と、公園に出掛けた。
子供達は、走り回って楽しそうだった。
子供達は、彼をくすぐったりして、からかって遊んでいた。彼も、はしゃいでいた。「やったな!!ワー!」子供達は、キャッキャッ言いながら、逃げたりした。
その時だった。女の人が近づいてきた。
「私の子供達と何してるの?」
花子は「母ちゃん…。」と、言った。
彼は、思った。「どうしよう。おそれていた事が、起こった。子供達の母親か。でも、仕方ない。本当の親には、かなわない。」
母親らしき人は、続けた。「あなたが、私の子供達を誘拐したのね。警察に連れて行っても、いいのよ。」
彼は、謝った。「すみません。それは、勘弁して下さい。」
「とにかく、子供達を連れて行くから。」と、母親らしき人が連れて行こうと、雄太の手をとった瞬間、スマホがなり、母親らしき人が何やら相手と、話している。
話が終わると、雄太の手を振り払い、その女の人は、言った。
「彼がね。許してくれるって。その代わり、子供達は、連れてくるな、って。じゃあ、引き続き子供達のことよろしくね。」
他のその場にいた全員が、呆然とした。
皆、思っていたことは、同じだった。「なんて、親だ。」
花子が、わんわん泣くので、彼は、あやしながら、「あんな親のために泣くなよ。」と、言った。

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