父ちゃんと呼ばれるまで

ナカムラ

慣れない生活

 彼は、朝になると、小さなおにぎりを9個握った。4つは、子供達の朝御飯に、あと4つは、子供達の昼御飯用に、最後の1つは、自分の昼御飯用に。
子供達は、黙って食べた。彼自身は、朝御飯を抜くことにした。
彼は、子供達に「じゃあ、行ってくるから。」と、淡々と、言った。
子供達は、元気よく皆で「行ってらっしゃい。」
と、言った。
彼は、また、慌てて言った。「言っただろ。ここは、壁が、薄いんだ。もう少し、静かに言え。」
子供達は、くすくす笑いながら、今度は、小さな声で「行ってらっしゃい。」と、言った。
彼がいない間、雄太が、皆の世話をした。
彼は、今日の日雇いの場所に、向かった。
今日は、梱包の仕事だった。段ボールを組み立てて、テープで、貼り、緩衝材となる紙をぐちゃぐちゃと、手で軽く丸め、品物を守るように、周りに詰めて、必要なシールを貼ると、最後にテープで、閉めた。
日雇いの彼は、周りのようには、速く出来ず、遅くなってしまうと、そこのリーダーから、げきがとんだ。
「ほら、そこの派遣、間に合わないぞ!速くやれ!!」
彼は、「はい。」と、言いながら、内心、「うるせえな。たくっ!」と、悪態をついた。
昼休みになると、毎日違う場所なため、仲間もいることもなく、小さなおにぎりをひっそり食べた。
子供達のため、いつもはしない残業を2時間ほどして、帰った。
帰ると、子供達は、待ちわびたように、「お帰りなさい。」と、また、大きな声で、言った。
彼は、朝と、同じように、また、言った。「だから…。」雄太が、いたずらっぽい顔をして、彼の言葉を遮って言った。「壁が、薄いからでしょ。」皆、子供達は、くすくす笑っていた。
彼は、はぁっとため息をついた。
花子が言った。「お腹すいたー。」
彼は、コンビニで、買ってきた2個の弁当をチンして、机に、出した。
子供達は、「これだけー?」と、言った。
彼は、怒って言った。「そうだ。これだけだ。これを分けて食べるんだ。」
そうして、1日は、過ぎていった。

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