ひざまずけ、礼

ko-suke

第2章81話 彼女の心境は




イザレアが天界へと戻った後、秘密基地内の空気はしんと静まり返っていた。

猫を退治したことを引きずっているのがひとつ。衝撃の事実がいっきに判明しすぎて、混乱しているというのがひとつ。主に後者のインパクトが凄まじかった。

紅き街のことはどうにも変だとは思っていたから、なんとなく心の準備ができていた部分はある。死後の世界・・・正確には、忘れ去られたもの達の世界と繋がる場所とは驚いたが。

だけど、もうひとつの事実。佐和さんが陰陽師の末裔であったということ。これについては全くもって想像できなかった。

そしてその驚きは、誰よりも本人が感じていたこと。彼女自身、自分が陰陽師の末裔とは全く知らなかったようだ。しばらくボーッとしていたが、ハッとした顔をしたあと、椅子に座って頭を抱えていた。

佐和「はぁ・・・信じられない。私、ただの人間じゃ無かったんだね・・・。」

比影「佐和さん・・・。」

佐和「陰陽師の末裔、ねぇ。そう言われても、家族に神社関係の人とかいないし・・・。」

佐和さんは机に突っ伏して言った。なにか声をかけようとしたが、何も思いつかない。

ちなみに、陰陽師とは昔の役職名のようで、中世以降は民間で私的祈祷や占術を行う者を称し、中には神職の一種のように見られる者も存在する・・・らしい。誰かに言われる前に、コピペ乙、とだけ言っておこう。

佐和「あの力が、私自身のものとは思わなかったなぁ・・・この手袋はただの手袋らしいし。」

佐和さんはポッケに入っているものを、おもむろに取りだした。いつも紅き街対処の際に使っている、イザレアから貰った手袋だ。

佐和「これが力を与えてくれてるって思ってたのに・・・ただ遮断してただけとは。・・・あ、じゃあ別にこれじゃなくても、適当なやつでも出来ちゃうのでは?」

佐和さんはそういって顔を上げるが、横槍が入る。

アス「すみませんが、それは無理です、はい。」

佐和「へ?なんで?」

アス「イザレア様はただの手袋と仰っていましたが・・・本当に何の変哲もない手袋って訳じゃないんです。それは、外気遮断に特化した手袋で、特殊な素材でできてるんです。」

佐和「なんだ、特別製なんじゃんこれ。」

アス「えぇ。ですので、ほかの手袋では遮断性が低く、上手く発動できないと思われます、はい。」

佐和「そっか~・・・」

佐和さんは肩をおとした。何も出来ずにいる僕。不甲斐なさというか、蚊帳の外感が半端ない。

というか、好きな人が落ち込んでいるのに、それを慰めることも出来ないとは何事だ!と僕は自分自身を叱咤しったする。

何かしら声をかけようと思い、実践するのだった。


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コメント

  • ヘンゼルとグレテル

    新着の投稿作品から来ました。「ひざまずけ、礼」というタイトルの意味が分かりました!出だしから面白くて読み続けられました!

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