ひざまずけ、礼
第2章72話 イヤホンの中の喧嘩
佐和「で、どうしたの?もう少し見てたかったんだけど・・・」
少しふくれっ面な佐和さんに、僕はあの子を見て気づいたことを伝える。
比影「あの子、しっぽが2本ある。たぶんだけど、猫又ってやつだよ。」
佐和「え、嘘・・・あ、マジじゃんか。」
比影「猫又ってたしか、人の精気を吸い取るって聞いたことがある。さっきあの子を見てた時、妙にあの子を倒す気が消失していったんだ。それがあの子の能力なんだと思う。」
アス「比影さん、その考察は合ってると思いますよ。」
突然ナーテアさんの声が聞こえ、少しビクッとなる。
比影「のわっ!?な、ナーテアさんか。」
アス「驚かせてすみません。そこにいる猫は猫又で間違いないでしょう。」
レア「能力もお察しの通り、倒す気を削いでそのうちに紅き街の勢力を広げるっていうものや。最初は狭い範囲やけど、徐々に広げて他のやつを呼び出すこともある。」
アス「ちょ、私の出番ですよ。イザレア様、割り込んでこないでください。」
レア「ええやんええやん、いつもナーテアなんやから。一回やって見たかったんやこれ~。ここ動かして調節してるん?」
アス「やめてくださいって。イザレア様、機械弱いんですから、絶対壊しますって。前だって、作ってあげた肩たたきマシーンを一瞬でぶっ壊したじゃないですか。」
レア「そんな事せえへんよぉ。あれはただの事故やって。ほれ、ちょっと貸してーや。」
アス「いやだから、やめ・・・やめろぉ!」
比影「喧嘩すんなてめぇら!他所でやっとけ他所でよぉ!」
佐和「仲がいいんだか悪いんだか・・・はぁ。」
マジでなんなんだよこいつらさぁ・・・僕もため息をつきたいよ。
ただ、知りたいことはわかった。やはり猫又か。ただまぁ、わかったところでどうすりゃえぇねんって話だけどな。
動物虐待とか言われても嫌だし、そもそも有効手段がないし・・・うーん、まずは一旦帰還するか。それしかなさそうだ。
佐和さんにもその事を伝え、同じ考えであることがわかった。ナーテアさんへ連絡を入れる。
比影「ナーテアさん悪い、一旦戻るわ。ちょっとこれは作戦会議が必要だわ。」
佐和「ちょっとこの場では厳しいわ。あんな可愛い子、傷つけられんわ・・・」
アス「まぁ、仕方ないですね。例のやつで戻ってください。」
僕は腰に付けた装置の電源を入れる。こいつは、いつもの通りナーテアさんに作ってもらったやつ。前までロープでやっていた脱出装置を軽量化したやつ。スイッチひとつで巻きとってくれる。
とまぁ、こんな感じに僕達は、ひとまず撤退することにしたのだった。さすがにちょっとね。
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