ひざまずけ、礼

ko-suke

第2章60話 リアルなら炎上もの




やつはしばらく、床に置かれたフィギュアをじっと見つめていた。周りをぐるっと回ってみたり、どこから取りだしたのか、虫眼鏡で見てみたり。これは僕からすれば、予想通りの動きだった。

予約限定の限定カラーバージョン。そんなレア物は滅多にお目にかかれるものではない。いや、実は何度か見かけたことはあるのだが・・・。

普通に考えて見てほしい。そんなレア物は、オタクであれば誰もが欲しいと思う代物だ。その気持ちを悪用しようとする輩は、どんな時代でも現れるもので。言ってしまえば、こいつは偽物が蔓延っているのだ。見かけたことがあるのは、どれも偽物だった。

パッと見で偽物とわかるもの、細部まで見れば偽物とわかるもの・・・そのくらいなら、やつがやっているような確認方法ですぐ分かる。だが、よく確認しても分からないものもある。例えば、正規品のリペイントとかな。

そういうものは・・・おっと、奴もその確認方法に移ったようだ。特殊なライトを当てている。ブラックライトと呼ばれるものだ。限定カラー品には、ブラックライトを当てないと見れない特殊な記号が書かれている。しかも、手では絶対書けない複雑なもの。

大抵これで、偽物かどうかわかるのだが・・・そこはナーテアさん作。ぬかりなく再現していた。ほんと神の所業だよ、本当にそうなんだけどね。

そして、奴も本物と思ったのだろう。間近まで迫り、至近距離からジロジロと見つめていた。・・・本当はやりたくない手だけど、今はこれしかない!僕は、手元のスイッチを押した。

瞬間、奴の目の前で大爆発が起きる。・・・察しのいいひとなら気づいたかもしれないが、あれはC4爆薬で作られたフィギュアなのだ。

C4爆薬は粘土状の爆薬で、自由な形に変形させることも可能な、高性能な爆薬だ。つまり、ナーテアさんはこいつで、本物そっくりなフィギュアを作ったということだ。

実際にこういうものを作ろうとすれば、作れなくは無いのかもしれないが、ここまで精巧なものは難しいだろう。本当に神業だ。

・・・ただまぁ、目の前で推しのフィギュアが爆発する、そんなことが現実で起きれば、炎上は必然だろうけどね。アニメやフィギュア界隈に対する冒涜行為だとか思われないし。

C4の爆発によりヤツは吹っ飛び、壁にたたきつけられてのびていた。その隙をつき、ヤツを拘束する。

比影「佐和さん!」

佐和「よしきた!」

手袋を装着し、やつに手をかざす。そして、お決まりのセリフを叫ぶのだった。

佐和「ひざまずけ・・・礼っ!!」

瞬間、辺り一面がパッと明るくなり、ヤツは光の粒子となって消えていく。途中、正常な意識を取り戻したようだが、もう遅かった。

オタク「こんなところで、こんなところで・・・!」

比影「諦めろ、お前の負けだ。世脇さんが受けた恐怖、とくと味わえ。」

オタク「いやだ、いやだぁぁぁ!」

叫びながら、やつは消えていった。完全勝利である。それから間もなくして、紅き街も消滅した。

比影「よし、と・・・お疲れ様、佐和さん。」

佐和「比影くんもね。文化祭と紅き街と、お疲れ様。」

比影「もう絶対あの格好はしないからね。」

佐和「えー、似合ってたのに。」

そんな話をし、笑い合う僕達なのだった。あ、メイド服はマジで絶対着ないからね。2度とゴメンだよ!


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