ひざまずけ、礼
第2章41話 内緒はテンプレ展開不可避
その日1日、ナーテアさんはかしこまった言葉を使わないよう、練習をしていた。
アス「比影くん、お母さんが呼んでます・・・じゃくて呼んでるよ。」
アス「そっちの漫画取っていただけ・・・取ってくださ・・・取ってちょうだい。」
アス「比影くん、夜ご飯できたっていってm・・・るよぉ!」
最後の方は間違えかけたところをごり押すことが多くなったが、段々とかしこまり癖が治っていった。最終的には違和感ない程度にまで仕上げてきた。それを寝る前に自慢げに披露してきたほどだった。
そして、次の日。この日は珍しく、日曜日にも関わらず学校へ来ていた。
理由は部活動。以前ポストに「雑草が歩道に飛び出ていて危ない。雑草を抜いて欲しい。」と依頼があったためだ。
先生達に許可はとった、というかどうやら、先生達の誰かが依頼したようだ。面倒事を押し付けやがって、とも思ったが、ひとまず依頼をこなすことにしたのだ。
で、言われていた場所に来てみたところ・・・
佐和「うっわ、確かにこれは酷いわ。」
比影「みんな膝丈くらいあるよ、これ・・・」
アス「よくここまで放置しましたね、はい・・・」
よく言えば緑が生い茂っている場所、悪く言えば雑草に侵食された場所だった。事前情報では近くに花壇があるとの事なのだが、花壇のレンガすら見えない。
僕達は全員同時にため息をつき、雑草むしりを開始するのだった。
2時間後。
比影「ふぃー・・・やっとこさ半分ってとこかな。」
佐和「いや、3分の1・・・4分の1ね。あっちの奥もだもの。」
アス「けっ、こんなんやってらんねぇっすわ、はい。ちょっと待っててくださいね、一瞬で刈り取れるやつ作ってきます。」
比影「ナーテアさんが壊れた・・・」
佐和「お、お願いねナーテアさん・・・」
ここまで、1個1個手作業で抜いてきたのだが、これは無理があると察した。もっと早く察すれば良かったものを。
ナーテアさんは、投げるだけでその方向の雑草を抹消できるという、芝刈ボムなるものを作ってきた。その間、30分。天才かマジで。いや天(に仕える神の)才だったわ。
ナーテアさんは休憩タイムへ。僕と佐和さんで、その芝刈ボムでありとあらゆる雑草を消していった。もう見た目が某イカの某カーリングにしか見えないのはご愛嬌だ。この際どうだっていい。
投げ続けて1時間。ようやく全範囲の雑草が消え去った。これ使っても1時間かかるって、本当に意味がわかりませんよ。なんてことを生徒にやらせるんだ、この学校はよ。
比影「よ、ようやく終わった・・・」
佐和「これのおかげで助かったよ、ほんと・・・無かったら詰んでたね。」
アス「お疲れ様です、2人とも。」
比影「ナーテアさんこそ、これありがとうね。」
アス「ううん、比影くんの役に立てて何よりだよ。」
・・・ん?あれ、今の・・・
佐和「・・・ナーテアさん、どったの。比影くんと何かあった?」
アス「へ?何って・・・?」
佐和「いやいや、いまさっきくん呼びしてたじゃん。かしこまってもなかったし・・・呼び方変えたの?」
アス「・・・あっ、いや、その」
佐和「ん、いやでも、さっきまではいつも通りだったような・・・比影くん?」
冷や汗が垂れる。嫌な予感しかしない。佐和さんと目が合ったが、スーッと目を逸らした。
佐和「・・・2人とも?なにか私に隠し事してなぁい?」ニコォ
2人「滅相もございません!」
佐和「してる!ぜーったいしてるー!!」
その後、草のなくなった広場で鬼ごっこと洒落込む僕達なのだった。
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