ひざまずけ、礼
第2章21話 その男、襲来
次の日の放課後。
秘密基地のドアがノックされる。開けた先には、2人の人物が立っていた。
1人は昨日来た依頼者の澤井さん。そして、もう1人は・・・
比影「初めまして、あなたが叶多さんですか?」
??「はい、そうです。澤井に呼ばれてきました。」
比影「わざわざすみません、立ち話もなんですから、どうぞ中へお入りください。」
2人を秘密基地内へ誘導し、用意していた椅子に座らせる。佐和さんはお茶を用意し、ナーテアさんは彼らからは見えないところに身を隠し、メモ取りの役を買ってでてくれた。
比影「まずはここまで来ていただいて、ありがとうございました。部活もお忙しいでしょうに・・・」
叶多「いや、俺の執筆分は終わってたんで、ちょうど暇だったんですよ。何しようかと思ってたから、丁度良かったです。」
比影「はは、なら良かったです。」
佐和「はい、どうぞ。」コトッ
叶多「あぁ、ご丁寧にどうも。」
話した感じはただの好青年って感じだけど・・・油断は禁物だ。どこで牙を剥くか分からないし。
叶多「前に澤井に教えた異世界について、あなた達も気になってるんですって?」
比影「えぇ、実は澤井さんにご依頼頂きましてね。異世界について一緒に調べて欲しいと。」
叶多「なら、大体のことは澤井から聞いたのでは無いですか?」
比影「えぇ、大体は。ですが是非、情報提供者であるあなたから、お話を聞きたかったんですよ。何でも、この件は目撃情報がないらしいじゃないですか。」
叶多「えぇ、そうですね。」
比影「ですが、あなたはどうやらその異世界について、とてもお詳しいようだ。澤井さんも嬉しそうに言ってましたよ?叶多さんから教えてもらったって。」
澤井「そ、そんな嬉しそうな表情してました?」
比影「はい、とても。私たちとしても、どのようにしてその情報を得たのか、気になりましてね?今後のためにも、是非聴いておきたいなと。」
叶多という男は、クスリと笑っていった。
叶多「簡単な話です。我々新聞部には、独自の情報網と協力者が居りますから。そこから得た情報です。」
比影「ほぉ、独自の。ちなみにそれはどのような・・・」
叶多「言えませんし、教えませんよ。教えちゃったら我々が成り立ちませんから。それに、我々が独占する為にもね。」
比影「というと?」
叶多「我々のやり方がバレたら、他の人も真似するでしょう?ただでさえ予算がカツカツなのに、ライバルが出てきたらたまりませんからね。」
比影「それは残念。僕らはあんまり信用されてないようだ。」
叶多「あなた方だけではない。我々は誰も信用してませんよ。何処から情報が漏れるか、このSNS社会じゃ分かりませんからね。」
比影「へぇ?でも、澤井さんに色々と教えてあげたりしたんでしょう?なんだか澤井さんに対しては随分甘いように感じますが。」
叶多「まぁ、彼女と俺は特別な間柄ですからね。なぁ?」
澤井「ごっ、誤解されるような言い方しないでよ!ただの幼なじみです!」
叶多「もちろん、そのつもりで言ったんだけど?あれ、澤井は何のつもりだったのかな?」
澤井「そ、それは・・・その・・・うぅ、意地悪。」
僕らは互いに笑った。だが、互いに目は笑っていない。奴の瞳の奥に、不気味さというか不穏なものを、直感的に感じた。
その後も世間話のようなことを話して、この会は終了した。2人は会釈をし、秘密基地から出ていった。
比影「・・・佐和さん」
佐和「わかってる・・・ナーテアさん、上手くいった?」
アス「問題ないです、気づかれてもない。」
比影「よし・・・」
その後、僕らは密かにあることを開始するのだった。
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