ひざまずけ、礼

ko-suke

第2章8話 繰り返さないために




次の日、昨日の悲惨な光景が嘘のように、すっかり片付いた秘密基地にて。この日は珍しく、真面目な雰囲気が部屋内に漂っていた。

理由は簡単、紅き街が出現した情報が舞い込んできたためだ。

レア「場所は○×チョメチョメ公園付近の道路や。範囲は広くないが、場所が場所やからな。」

比影「あぁ。誰かが巻き込まれていてもおかしくない。特にあの辺は子供も多い。・・・注意しないと。」グッ

紅き街、子供。この2フレーズは、ある意味僕の中でトラウマとなりつつある。どうしても、あの子のことを思い出す。

佐和「・・・そうね。でも、比影くんもこん詰めすぎないようにね。比影くんに何かがあってからじゃ、遅いから。」

アス「責任感が強いのはいいことですが、同時に比影さんの悪い癖でもあります。・・・無理はしないようにして下さい、はい。」

比影「・・・うん、わかってる、わかってるさ。」

レア「ほんなら、頼んだで。」

レア様との通話が切れる。僕達は早速、準備に取り掛かった。



10数分後、僕達は現場に着いた。もちろん、念には念を入れて、ガッチガチのフル装備だ。

比影「・・・よし、行こう。」

僕たちは1歩、また1歩と踏み出す。そうして数歩歩いた時、周りの景色が急激に変化した。紅き街に入った証拠である。

と、その瞬間。

??「うぅ・・・うわぁぁぁぁ!お母さぁぁぁん!」

比影「っ!」ダッ

条件反射で走り出す。あの悲劇をもう二度と、繰り返す訳には行かない!

佐和「比影くん!」

佐和さんが声を掛けてくるが、止まる訳には行かない。今目の前で、誰かの命が尽きようとしてるかもしれないんだ。

路地を曲がった先、声のする方向にいたのは・・・

狼「グルルルルル・・・」

??「うわぁぁぁん!」

壁を背に3匹の狼に囲まれた、少年の姿だった。

そして気づいた時には、僕は少年の前にいた。時を同じくして、奴らも襲ってきた。

比影「テメェら・・・どけぇ!!」バシュシュシュ

狼めがけて、3連続でパチンコの玉を打ち出す。結果としては、2匹には当たったが、1匹を逃した。狼は止まらない。

一か八か、力を込めた足蹴りをかます。避けられるかと思ったが、案外狼側も直線的な性格らしい。真正面、つまり顔面にクリーンヒットした。

足蹴りが直撃した狼はそのまま地面に突っ伏し、動かなくなった。残りの2匹は立ち上がり、狼狽えながら闇へと消えていった。

佐和「はぁ、はぁ・・・はやすぎぃ・・・」

比影「佐和さん!悪いけどあの狼を頼む!もう戦う力はないだろうから、消せるはず!」

佐和「はぁ、はいよぉ・・・ったく、人使いが荒いんだからぁ。」

佐和さんは小言を言いながら狼に近づき、地面でもがく狼に対して、「ひざまづけ、礼」と唱えた。狼は光の粒子に包まれて、消えた。

最後の最後、クゥーンという鳴き声が妙に頭に残った。



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