ひざまずけ、礼
第1章 86話 化け物達の実情
比影「・・・はい?」
不審者「ん、聞こえなかった?もうひとつの理由は・・・」
比影「いや、聞こえてる・・・聞こえてるからこそ、はい?と思った。」
不審者「まぁ、変な理由だなぁとは思うけどねぇ?なんでも、紅き街の姫君が紅き街の男と結婚したくないらしくて・・・それで、婿さん探すついでに現世滅ぼせってねぇ。」
比影「滅ぼす方がついでなのかよ!?」
不審者「あっちもねぇ、後継問題とか色々あるみたいよ?」
比影「・・・な、なんか思ったより人間味のある世界なんだな。てっきり化け物の巣窟なのかと・・・」
不審者「化け物だらけなのは間違いないよぉ。ドロドロしてる奴とか、逆にムッキムキのやつとか、色々いる。」
比影「そっすか・・・」
なんか微妙に緊張感がなくなったな。婿さん探しのついでに現世滅ぼすって、なんだそりゃ。
不審者「・・・さて、と。そろそろ・・・ふへへへ、いいよねぇ?質問に答えてあげたんだから、ねぇ?」
ヤツは気味の悪い顔でそういった。
比影「・・・あぁ、いいぜ。」
不審者「ふへへへへへへ・・・あぁダメだ、変な笑いが止まらないよ・・・ゆーっくり、楽しんであげるからね?あぁでも、15秒しかないのか・・・」
ヤツはゆっくりと僕に近づいたかと思うと、瞬間移動・・・正しくは時空間移動なのかもしれないが、それで後ろへと回り込んだ。やつの息がかかる。・・・表現しづらい匂いだ。臭いのは間違いないが。
不審者「ふへ、ふへへへ・・・じゃあ・・・いくよ・・・?」
比影「・・・はやくしてくれ」
不審者「言われなくてもぉ!」ガバッ
ヤツは覆い被さるようにして抱きついてきた・・・が。
不審者「・・・こ、はっ・・・」
比影「・・・」
僕の肘が、やつのみぞおちの辺りに直撃する。ヤツは後ずさり、苦しみ出した。
不審者「っぐ・・・や、やぐそぐが・・・ちがう・・・」
比影「何言ってんだ、『触られてる間抵抗しない』なんて誰が言ったんだ?15秒間、俺はお前に"触る権利"じゃなくて"触れるチャンス"をあげたんだよ。」
不審者「ぐぐぐぐ・・・!」
比影「悪いがあんたのお古になるつもりはサラサラない。心に決めた人がいるんでね。有益な情報、ありがとな?これからの紅き街殲滅に活用するぜ。」
不審者「おの、れぇ・・・!」
比影「おっと、もうすぐ15秒だぜ?せっかくのチャンス、無駄にしていいのか?」
不審者「・・・がぁぁ!」
比影「遅ぇんだよ!」ガッ
不審者「あがっ・・・!」
ヤツは地面を転がった。
不審者「くそ・・・くそっ!絶対お前をいただくからな!」
やつはそう言って、その場から消えた。紅き街に逃げたのだろう。ひとまず、この場は勝利を収めることに成功した。
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