ひざまずけ、礼

ko-suke

第1章70話 ただひとつの口説き文句を




僕は、この状況を打破するための作戦を考えた。その間、秒数にして僅か5秒程度。

僕が考えた作戦、その1。それは・・・正直に今の気持ちを伝えること。変に着飾るより、ちゃんと正直に伝えた方が、佐和さんも納得してくれるだろうし。

あ、ちなみにその1とか言ったけど、その1しか考えてないし、何だったらさっきの5秒間、何も考えていない。いわゆる、「ただ突っ立っているだけ」というやつだ。

ああいう感じの方が、一瞬で考えた天才的発想って感じがして、良くない?雰囲気だけでもさ。

比影「・・・1つ、いいかな。」

佐和「ふしゅー・・・何よ。」

比影「僕、あの先生と一度も喋ったことなかったから、佐和さんが言うような人なのか、よくわからないけど・・・少なくとも、僕の目には『普通の保健室の先生』としか映らなかったよ。」

佐和「・・・え?」

比影「魅力的かどうかなんて、人によって見え方は違うだろうし・・・それに」

僕は佐和さんの目をまっすぐ見て、言った。

比影「僕には、佐和さんのほうがよっぽど魅力的に見えるよ?」

佐和「・・・へっ!?」

佐和さんは目を見開いた。僕はそのまま続ける。

比影「佐和さん、分け隔てなく皆に優しいし、間違った道を進もうとしてる人がいたら、即座に注意してくれるでしょ?佐賀美くん達みたいにさ。」

佐和「それは・・・学級委員長として当然のことだから・・・」

比影「当たり前のことだって、当たり前にできない人の方が多いんだよ。それを、平然とやってのけるんだもの。僕は凄いと思うし、魅力的だなって思う。」

佐和「え、あ、その・・・」

比影「それに、いつも真面目でまっすぐで、時に見せる笑顔が可愛いくて・・・」

佐和「かっ、かわ・・・」

比影「今の佐和さんが、僕は好きだな。」

佐和「~~~っ!」

・・・ちょっとキザっぽかったかな。だけど、今の僕の言葉に嘘はない。紅き街の時の真剣な佐和さんも、学校での少し騒がしい佐和さんも、一緒にいて楽しいし、好きだ。

佐和「あ、あの、あの・・・」

佐和さんの顔が赤くなっていく。が、先程までとは違い、怒りによるものでは無さそうだ。

佐和「い、今のってさ・・・」

比影「うん?」

佐和「・・・あ、愛の告白って、受け取っていいのかな。」

比影「・・・へ!?あ、いやその・・・と、友達として!仲間としてね!?」

佐和「え、あ・・・なんだそういうことね。はぁ・・・ま、あなたの考えはわかったわ。」

あれ・・・なんかちょっと落ち込んでる?なんでだろう、なんかまずいこと言ったか・・・?さっきの発言の中に、また逆鱗に触れるようなことがあったのだろうか・・・。

いやでも、さっきよりは怒りは静まってるはず。意見するなら今しかない!

比影「今回のことが紅き街と関係しているかどうかはわからない、けど・・・調べてみる価値はあると思う。僕たちは依頼された側だし。だからこそ、あの先生の力も借りて、即解決に導く必要があると思うんだ。・・・わかってくれる?」

佐和「・・・はぁ、仕方ないわね。あなたの好きな私でいるためにも、依頼には真面目に取り組まなきゃ。」

比影「その意気だよ、佐和さん。」

佐和「今の私、魅力的?」

比影「もちろん、とっても。」

佐和「そ。じゃあまずは学校に戻りましょうか。場所を聞き出さなくちゃ。」

こうして、どうにか佐和さんを説得することに成功した僕なのであった。

佐和「・・・ふふっ」

比影「ん?どうかした?」

佐和「いーえ?なにも?」

比影「・・・?」


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