ひざまずけ、礼
第1章63話 理不尽な世界を生き抜く術
比影「っ・・・くそっ!」ドンッ
佐和「こんな・・・こんなのって・・・!」グッ
レア様・・・いや、もう様付けすらしたくない。イザレアからの電話の後、僕たちは秘密基地の中で嗚咽を漏らしていた。
救えなかっただけでなく、報われない。勇気を振り絞って僕たちを助けてくれたあの子の努力が、思いが、伝わらない。
その事実に僕は打ちのめされ、絶望のふちに追いやられた感覚に陥った。
何故、世界はこうも理不尽なのだろうか。努力したものが報われず、椅子にふんぞり返っているお偉いさんの意向で、どうとでもなってしまう・・・。
しばらく2人して黙っていたのだが、佐和さんがそっと口を開いた。
佐和「・・・私たちは・・・」
比影「佐和さん・・・?」
佐和「私達は、あの子に助けられた。だからこそ、あの子の努力に報いなければならない・・・けど。」
比影「・・・けど?」
佐和「・・・世界を救うためにも、私たち自身のためにも、ここで○ぬ訳にはいかない・・・よね。」
苦悩の表情で、そう言った。佐和さんとしても、選びたくない決断なのであろう。
比影「それは・・・でもそれを選ぶということは、あの子の思いを無下に扱うということで・・・」
佐和「うん、わかってる。でも、ここで前に進まなかったら・・・それこそ、あの子の努力はどうなるの?悩んでるだけじゃ、何も始まらないのよ。」
佐和さんは俯いてそう言った。まず間違いなく、本心ではないことはわかった。だからこそ、佐和さんの本心がわかってるからこそ、ここは反論しなくてはならない。
比影「それでいいの?どれだけ相手が偉いやつだったとしても、それにただ従って動いて、そんなんでいいの?神だろうがなんだろうが、間違ってることは間違ってる・・・それを、僕たちは伝えるべきじゃないの?」
佐和「・・・伝えるよ。」
佐和さんは、キッパリと、ハッキリとそう告げた。
比影「え・・・で、でもさっき・・・」
佐和「今回のことを、なかったことになんかさせない。させてたまるもんですか。目の前で消えた命を、その思いを伝えていくわよ。・・・けど、それは今じゃない。」
比影「い、今じゃない?それってどういう・・・」
佐和「今回のことは、ひとまず話さずにおいて、私達は紅き街撲滅に尽力する。・・・そしていつか、紅き街が完全に消え去った時、私達は今回のことを、後世に伝えていくの。あの子の分まで、生きなきゃダメよ、ってね。」
比影「後世に・・・伝える。」
佐和「そう。今はアイツらの言いなり状態かもしれないけど、それで救われる命があるなら、私はそこに賭けたい。」
佐和さんは真っ直ぐにそう言った。・・・全く、佐和さんには敵わないな。恐れ入ったよ。
僕は佐和さんの問いかけに、静かに頷いた。あの子のためにも、いち早く紅き街を撲滅しなくては。
そして・・・願わくば、あの子の努力を後世に伝える時、僕の隣に佐和さんがいるといいな。・・・なんてね。
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