ひざまずけ、礼
第1章59話 唯一の手段を
比影「ぐぐ・・・!」
逃げ出そうとするも、やはり一切体が動かない。避けることは無理なようだ。
かといって防御も無理だし、あんな尖ったもので串刺しにされたら、それこそひとたまりもない。
僕は本気で、人生の終わりを覚悟した。
園児?「こいつで貫かれたお前を見るのが楽しみだ・・・痛みでもがき苦しみ、最後には絶望の顔で○ぬことだろう。覚悟はいいかぁ?ひゃひゃひゃひゃひゃ!」
・・・やっぱり、無理そうだ。こんなところで終わっちまうのか・・・。あの子も浮かばれず、佐和さんを残して、○ぬのか。
いや、希望を捨ててはダメだ。信じればきっと、奇跡は起きる・・・はず。神頼みがどこまで有効かはわからないが、祈れるだけ祈ってやる。それで○なずに済むなら万々歳だ。
園児?「さぁもがき苦しめ!行け鉄槍ぃ!」
それは勢いよく、僕の方へと向かってきた。僕は目を瞑り、佐和さんやあの子のことを考えた。まだ○ねない、絶対に生き延びてやる。例え、腹を貫かれようと。
・・・そう、覚悟していたんだが。
いっこうに痛みがこない。なんだと思っていると、突然近くで鉄製のものが落ちる音がした。
驚きで目を開けると、足元に僕を狙っていた鉄槍が落ちていた。しかも、金縛りまで解けている。一体なんだ、神頼みが功を奏したのか?
そんなことを思っていると、身に覚えのある声が聞こえた。昨日、同じような場所で聞いた声。
??「お兄・・・ちゃん・・・」
それは、奴がいた場所から発せられていた。
比影「ま、まさか・・・」
園児「えへへ・・・また会えたね・・・」
やつとは違う、優しい声色をした少年だった。でも、いったいなぜ?
比影「君は、やつに・・・」
園児「うん。多分お兄ちゃんの思ってる通りだよ。」
比影「じ、じゃあアイツを追い出せたのか!」
園児「・・・それは、違うかな。うぐっ・・・」
その子は膝をついて苦しい表情をした。
比影「大丈夫!?」
園児「今は、何とかこいつを抑え込んでる状態なの。多分、僕がこうして話せるのはこの1回きり。だからね、お願いがあるの。」
比影「お、お願い?なに?」
園児「あのね・・・」
その子は、こう口にした。
園児「僕ごと、こいつを消して。出来るん でしょ?お兄ちゃん達なら。」
比影「な・・・君ごと消すだって!?だめだそれじゃ、君をお母さんに・・・!」
園児「もういいの。僕を、僕のままで居させて。」
比影「で、でも・・・」
園児「・・・うぐっ、は、はやく・・・!」
比影「・・・っ!!佐和さんっ!!」
佐和さんを急いで呼び、状況を簡単に説明した。一瞬だけ、この子が戻ってきたこと。そして、この子の願いを。
佐和さんはゆっくりと頷き、その子に手をかざす。やつが少しずつ前面に出てきたのか、度々やつの顔になっていた。
比影「じゃあ・・・お願い。」
佐和「・・・うん。」
園児「お兄ちゃん、お姉ちゃん。ごめんね、巻き込んで。」
比影「ううん、楽しかったよ。」
佐和「私は会ったばっかりだけど・・・それでも会えてよかったよ。」
園児「・・・うん。」
その子は、ニッコリと笑った。瞬間、苦痛の表情へと一変する。
園児?「っがぁっ!やめろ、やめろぉ!!」
佐和「ひざまずけ─」
園児?「やめろぉぉぉぉぉ!!」
佐和「─礼っ!!」
その瞬間、その子は光に包まれた。
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