ひざまずけ、礼
第1章12話 正しきこと、成すべきこと(4)
前日に借りた本を読んでいたところ、時間を忘れいつもより遅く寝て、そして遅く起きてしまった。
なんとか間に合う時間内に用意等を終わらせることが出来た僕は、佐和さんとともに学校へ向かった。
肝心な本の中身だけれど･･･結論から言ってしまえばとても役にたった。ヤンキー漫画の類かと思っていたら、思いっきり転生モノだった。箕浦くんとは本当に仲良くなれるかもしれない。
あるページにが付箋が貼ってあったから、そこが伝えたいことなんだろうと思い、開こうとして、ストップした。仲良くなるフリをして、いたずらトラップとか仕掛けてあったりして･･･と思ったからだ。
開いた瞬間何かがぴょーんと飛び出してきたり、「はずれ」とか書いてある紙が入ってたり･･･なんて考えていたが、全くもってそんなことはなかった。数秒前の自分を殴りたくなった。
本題に入る前に、まずは読書の時間。見たことなかったライトノベルだった為、新しい気持ちで読むことが出来た。
そして、本題の付箋が貼られたのついたページ。場面としては、害を加える気のないスライムを、乱暴な冒険者から守ったところのようだ。その場面の、主人公のセリフが心に響いた。
そこにはこう書かれていた。
「スライムだから悪いのか！魔物だから狩るのか！それは大きな間違いだ！魔物の全員が人間を滅ぼしたいなんて思ってるわけじゃない！ただ平和に暮らしたいだけの子だっているんだ！」
冒険者の面汚し、魔物に手をかすお前も悪だと罵られたが、主人公はこう返していた。
「正悪なんて立場で変わる。平和に生きる魔物たちからすれば、僕たちの方が侵略者であり悪だ！それは誰かに決められるものじゃない！自分で決めるものなんだ！だから僕は･･･この子を守る！」
この2文を読み、僕は頭を抱えた。
つまりは、僕が考えていた「人として何が正しいことなのか、成すべき事なのか」という問は、考えるだけ無駄だったということだ。
もちろん、この本と箕浦くんの話から、という限定された情報内での結論ではあるけれど、僕にはそれがしっくりきた。というより、安堵したと言った方が正しいか。
深く悩まなくていい、正義は人それぞれ。僕は僕が正しいと思ったことをやる。それで対立するなら、説得やら何やらの手段を講じる･･･それでよかったんだと。肩の荷がおりた様な、そんな感覚に陥った。
そんな僕の心中を察してか知らずか、空は清々しいまでに快晴で、太陽が眩しく輝くのだった。
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