ひざまずけ、礼

ko-suke

第1章4話 汝ら、影なる者を追うか(2)




佐和「比影くん・・・」

レア「・・・はぁ。なんやおんどれ、職務放棄か?えぇ?」

レア様が僕を睨む。神様から睨まれるなんて、初めての経験だった。当たり前だけど。

神様特有の威圧感・・・といってもよく分からないだろうけどね。それにあやうく圧倒されかけたが、踏ん張って意見を伝えた。

比影「・・・あの影のような子さ、僕たちを見て逃げてたんだよ。前のゾンビは迷わず襲ってきたのに、だよ。」

レア「・・・だから?まさか、たった1回襲ってこなかったから、敵じゃないと?」

比影「そこまでは分からないけど・・・でも、襲ってこなかったってことは、それなりの理由があるはずでしょ?」

レア「そんなの知ったこっちゃないね。相手が何を考えていようと、紅き街の住人は根絶やしにする。それがあたしらだ。」

比影「でも、それじゃ・・・」

あんまりだと思った。たしかに紅き街の存在は、僕ら人間にとって害のある存在なのかもしれない。けど、そこに住まう者たちはどうだろうか。

彼らにも、彼らなりの生活がある。僕たちの世界を侵食するのが目的みたいだけど、さっきの影みたいに、きっとやりたくてやってるわけじゃない奴らだっているだろう。

だから、有無を言わさず全滅させるなんて・・・僕にはとても、想像つかなかった。

レア「同情なんかするだけ無駄やで。あいつらは絶対的な悪、だから滅ぼす。それでえぇやろ。それとも、死にたいん?」

比影「っ・・・」

レア「もうえぇか?んじゃ、しっかり頼むわ。くれぐれも、変な気を起こさぬようにな。」

そういって、電話は切れた。

そう、今こうしていても、いつかは必ず成し遂げなければならない。それが、生き返る条件・・・。

・・・そこまでして、他人の人生を蹴落としてまで、生き返る意味とは?平和は、本当に犠牲の上にしか成り立たないのか?

どうにかして、どちらも救う道は無いのだろうか・・・?

佐和「─くん、比影くん!」

比影「・・・」

佐和「無視すんなコラ!!」ゴッ

比影「あいだっ!?」

不意に佐和さんから、首チョンパをくらった。

比影「何すんのさ!?」

佐和「人のこと無視するからだよ!」

比影「いや、無視してたんじゃなくてね?その、考え事してて聞こえてなかったというか・・・」

佐和「問答無用!女の子を無視するなんて、いい度胸ねあなた!これはお仕置が必要かしら・・・?」ゴゴゴゴゴ

比影「えちょ、今ので許してくれないの!?」

佐和「あれはただのスキンシップ!これからがお仕置タイムだよ!」

比影「うっそでしょ!?や、やめてー!」

佐和「コラ逃げんなー!」

こうして僕は、太陽が沈む頃まで、追いかけ回される羽目になったのだった。僕が何をしたって言うんだ・・・。



2022年1月1日、0時00分の投稿です。
今年もよろしくお願い申し上げます。

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