ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜

霜月琥珀

53話 情報屋からの連絡

 あれやこれやとするうちに時間は過ぎていき、今はもう夜。てっきり今日中に襲撃してくると思っていたが、何も起きなかった。

 それならあの魔族――グレンは何に対して準備は整った……と言っていたのだろう。

 ……気になるな。

 だが、今さらその真実を知っても対策のしようもない。

 てっきりミストがその辺りの情報を掴んでいると思っていたが、未だに連絡がないのを察するに、もしかしたらハッタリだったっていう可能性もあるか。

 嘘だったら意味が分からないけど。

 逆にミストが得ることのできない情報ってこともある。むしろ、そっちの方が可能性としては高いか。
 相手は魔族がいる邪龍教という組織。たった一人で情報を掴むのは、流石のミストでも難しいのかもしれない。

「……寝るか」

 俺は二日ぶりのベッドに潜り込む。
 結局、昨日は一睡もしなかったからな。それだけ新必殺の完成に手間取ったというわけだけど。

「……ふぁ~っ」

 大きなあくびをする。流石に眠いな。

 しっかり休息を取っておこう。

 疲れが溜まっていたから実力が発揮できませんでした、では済まないからな。

 目を瞑って夢の世界へ誘われようとしたのだが――

『――アルトきゅん、起きてる?』
『ん? ミストか。今ちょうどお前のことを考えてたところだよ』
『えっ。アルトきゅんがボクを? 遂にアルトきゅんにも、ボクの良さが伝わったってことかな!』
『全然違うけど。それで? 俺に連絡してきたってことは、新しい情報を掴んだんだろ?』
『ぶぅー。そうだけどさ、もうちょっとボクに優しくしてくれてもいいと思うな』

 そう言って、不貞腐れるミスト。たしかミストって二十歳超えてたような気がするけど……大丈夫?
 ボクの良さが伝わるどころか、大人の魅力すら感じないけど。

 あっ、こういうことを考えるから、女心が分かってないって言われるんだったな。

『……もしかして、失礼なこと考えてないかい?』
『考えてないよ。もう少し大人っぽくなってくれたらなと思っていただけ』
『へぇ……。それよりさ、アルトきゅん。もう少し説明してからスライムを渡して欲しかったな。
 スライムを使って連絡してと言われても、何をどうしたらいいのかさっぱりだったんだから……』
『……なんか、ごめん。
 でも、それはミストなら大丈夫だろうと、信頼しているからこそ……だからな』
『そういうことにしておいてあげる!』

 そういうことも何も、事実なんだけどなぁ。

『それで、何が分かったんだ?』
『んー、まだ確証はないんだけど、邪龍教はすでに邪龍――ティアマトを復活させることができるみたい。
 厳密に言うと少し違うけどね……』
『……そうか』
『あれ? 驚かないの?』
『いや、驚いていないわけじゃないけど、腑に落ちただけ』

 グレンが言っていた準備っていうのはこの事だったんだろう。どうやって復活させるかは分からないけど。
 でも、ミストの話から察するに、まだ完全な復活というわけではない。

 まあ、完全に復活できるなら、わざわざ王都を襲う理由はないか。
 邪龍教の目的はティアマトを復活させることだし。

 ……明日は少し警戒していた方が良さそうだな。
 邪龍教――いや、グレンが何を仕掛けてくるか分からない。

『ほかには何かあるのか?』
『……あるよ。伝えたいことが……いっぱい。こうやってアルトきゅんと話していると、ドンドン出てくる。
 でも、伝えちゃったら迷惑になっちゃうかもだし、我慢しとく。
 だから、絶対に生きてボクの前に現れてね。いつか、ボクの想いを伝えさせてね』
『分かってるよ。絶対に死なないし、死ぬつもりもない。お前やあいつらのためにも……』
『ぶぅー! アルトきゅんってば本当に女心が分かってない! ボクと話してるのに、ほかの女のこと考えるとかありえない!』
『えぇ……』

 どうやら俺はまた失敗したらしい。
 俺にはやっぱり女心は分からない。一生かけても理解できそうもないな。

『アルトきゅん、いい? 女の子と話してるときは、ほかの女の子のこと考えたらダメなんだからね!』
『……何で?』
『もう! どうして分からないの! アルトきゅんだって嫌でしょ! 親しい女の子と話しているときに、その子がほかの男のこと話し始めたら!』
『……親しいだけじゃ何とも思わないけど』
『え? じゃ、じゃあ……アルトきゅんは恋人以上の関係にならないと女として意識してくれないってこと……?』
『え? どういうこと? ミストは女の子だろ?』
『違~う! そういうことじゃない! もうどれだけ鈍いんだよ、アルトきゅんは!』

 えぇ……俺っておかしなこと言ったか? 何もおかしくない気がするんだけど。
 だからそんなに怒られる意味が分からない。

 また俺は女心が分かっていない行動を取ってしまったのか……

『あぁ~、もう怒っちゃった! 怒っちゃったよボクは! 覚悟しててね、アルトきゅん。次ボクの前に現れたら、絶対に女として認識させてあげるんだから!』

 そう言って、ミストとの連絡が途絶えた。

「……寝るか」

 明日の朝も早い。今のうちに休息を取れるだけ取っておかないとな……

 こうして俺は二日ぶりにゆっくりと眠るのだった。

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