ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜

霜月琥珀

48話 魔族

 俺たちは目の当たりにした。おびただしい数の『死』を。

「……間に合わなかったか」

 一見、眠っているだけのように見えなくもないが、行方不明となっていた人たちからは生気を感じられない。
 もうすべての魔力が失われているんだ。顔色が異常に悪く、魔力欠乏症に陥っているのがすぐに分かった。

 だが、すぐにそうですかと受け入れられるわけもない。
 俺は【魔力感知】を発動し、本当に死んでしまっているのかを確認する。

「――っ。まだ、生きてる人がいる! すぐに治療すれば間に合うかもしれない!」

 微かに魔力反応があった。数は少ないが、まだ生きている人がいてくれた。
 ここへ来たことに意味があったのだと、その人たちが教えてくれる。

「シャロ。魔力回復ポーションは何本ある?」
「二本です」
「ということは全部で十本か」

 俺はシャロからポーションを受け取り、まだ生きている人に飲ませていった。

 だが。

「一本足りない」
「……どうしますか?」
「……この子の生命力に賭けるしかない。急いで病院に連れて行こう!」

 俺は大きめのスライムを作り出し、その上に魔力反応があった子どもたちを乗せていく。
 死んでしまっている人たちには申し訳ないが、先にこの子たちを地上へ運ばせてもらう。

 万が一の場合に備えて、守る数は絞った方がいい。
 流石に五十人以上もの人たちを同時に運び出すのはリスクの方が大きいからな。

「よし。シャロは前を頼む。俺は後ろを守る」
「分かりました」

 そうシャロとの短い意思疎通を終えた瞬間のことだった。

「困るんだよ。そうやって勝手なことをされるとさぁ」

 男の声が突如として聞こえてきた。
 まさか邪龍教か? てっきり逃げたと思っていた。【魔力感知】にも引っ掛からなかったし……。

 ……これは、少しマズいかもしれないな。

 こいつは俺の【魔力感知】を掻い潜ることができた。
 つまり、こいつの【魔力操作】は俺以上ということだ。

 さては、強いな?

「シャロ。子どもたちを守りながら王都に戻れ!」
「はい、マスター」

 スライムにもいざというとき戦うよう命令する。
 ここで仕掛けてきたということは、外で待ち伏せされている可能性があるからな。

 ……さて。どうしようか。
 こんな場所で戦うわけにはいかないし……。

「俺たちを見逃してくれたりは……」
「はぁ? 何言ってんだテメェ。頭おかしいんじゃねぇのか?」
「ですよねー」

 ……どうしよう。この調子だと時間稼ぎもできない。時間稼ぎさえできたら俺も逃げられるのに。

 ……戦うほかにないのか? 

 そう俺が思い始めたときだ。その男は姿を現し、俺に話しかけてきた。

 ……って、は?

「はぁ……ったく、いつの時代も結局こうなる。お前もそう思うだろ?」
「…………」
「おいおい無視はねぇだろ、無視はさぁ」
「……いや、別に無視はしてない。だが、信じられないだけだ」
「ああ? 何が信じられないってんだよ」
「お前、その姿……魔族だろ? 魔族はもう滅んだはずじゃないのか……!」

 そう、俺の目の前に姿を現したのは人間ではなく、魔族だった。
 魔族は個体によって姿が異なると聞くが、共通して額の周辺にツノを生やしているらしい。

 だが、俺の知る限り、魔族はとうの昔に滅ぼされたはずだ。そのように英雄譚には記されていた。

 だと言うのに、今俺の目の前には正真正銘の魔族がいる。

「おいおい、オレたちを勝手に滅ぼすな。ったくよぉ、いつの時代も勝手に滅ぼされてんだよなぁ、オレたち」
「何を言ってんだ、お前は……」
「何をって、お前ら人間がいつも魔族を滅ぼしたことにしてるって話だろうが」
「……は? 何のために、そんなこと……」
「はあ? そんなことも知らねぇで、勇者やってんのかよ。……仕方ねぇな。オレが教えてやるよ。お前ら人間……いや、一部の権力者にとって、オレたち魔族は己の権威を示すために必要なんだってさ。まあそれは勇者のお前にも言えることなんだけどよ」

 ……ああ。なるほどね。
 そういうこと……。へぇ~。ほんと、つくづく思うわ。王族ってのは意地汚いなと。

 まさか魔族すらも利用しているとは思わなかった。
 結局、王族にとって勇者はただの道具ってことか……。

 まあそれでも俺は戦うと決めたわけだけどな。

「……ということは、今回のこの襲撃も王族の権威を示すため利用されるんだな」
「いや? オレたちはもう奴らの思い通りにはならない。だからお前に言いたいことがある」
「何だよ」
「オレたちと一緒にアルトリア王国を潰さないか?」

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