ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜
45話 もしもの話
「邪龍教が?」
「ああ。副隊長のラインハルトなら知っていると思うが、邪龍教の目的はティアマトを復活させることだ。そして王都壊滅は最終段階。つまり王都を堕とされるとティアマトは復活する。だから、かなりの戦力を投入してくるはずだ」
「……隊長はどう思う? アルトの言っていること」
「う~んどうだろう? お姉ちゃんとしてはアルトちゃんを信じてあげたいところだけど、民を守る騎士としては信用することはできないかな~」
……ああ、そうだ。姉貴の言っていることはもっともだ。
俺はミストが言っていることを疑うことはしないが、みながみな、そういうわけじゃない。
むしろ、何の確証もない情報を信じている俺がおかしい。
だが、ミストの情報が間違っているという確証もない。
だから、ここで取るべき選択は一択。
「別に俺を信じてほしいわけじゃない。嘘だと思ってくれて構わない。だが、準備はしてほしいんだ。襲われないっていう保証はどこにもないから」
「しかしそう言うがな、アルト。騒ぐだけ騒いで、何も起きなかったらお前の身が危ないぞ?」
「そんなこと分かってる。でも、それでいい。何も起きなかったら誰かが傷つくこともないからな。もし、それで俺が危ない目に遭っても、そんなのどうでもいい。俺は勇者だ。どのみに殺される運命にあるかもしれないからな」
そう、俺は勇者だから殺されるかもしれない。
この世に三人も勇者はいらない。だから一人を残して、残りの二人は反逆者として殺される。
それが今まで繰り返されてきた。
まあ、シャルロッテは俺で勇者の英雄譚を終わらせるつもりらしいけど。
「あ、アルトちゃん……冗談はやめてよ。アルトちゃんが勇者だなんて、そんな……」
「ん? あぁ、隊長なら勇者の末路を知っててもおかしくないか。でも、俺は誰が何と言おうと勇者だ。こうして、聖剣も託された」
俺は腰に下げている聖剣を手に取って言った。
「じゃ、じゃあ私は今までアルトちゃんを……」
「姉貴? どうしたんだ? 別に今すぐ死ぬってわけじゃないし、死なないかもしれないだろ? そう思うよな、ラインハルトも」
「…………」
「ラインハルト?」
俺は先ほどまでと違う様子に頭を傾げた。
「……すまない。この話はまた明日でいいか?」
「でも、もう時間が……」
「頼むアルト。隊長のためにも、ここは……」
「……分かった。じゃあ、明日の朝に第一部隊のホームに行く。そこで話の続きをしよう」
「ありがとう。……隊長、行きましょう」
そう言って、ラインハルトと姉貴は訓練場からいなくなった。
……大丈夫かな、姉貴。体調悪そうにしてたけど。
それにラインハルトの様子も……。
俺が勇者なのがそんなにおかしかったのかな。
それともショックだったんだろうか。俺が死ぬかもしれないってことに。
でも、そういうわけじゃなさそうだったな……。
「……はぁ。俺たちも帰るか、ノエル」
「そうですね」
「そういうわけだから、またなアイリス」
「……うん」
「何だよアイリス。お前まで元気がないのか?」
「だ、だって、お兄ちゃんが殺されるとか、死ぬとか言うから……」
……ああ、そうか。まだ子どものアイリスには、こういう話は重たいし、早いか。
でも、いずれそうなるかもしれない。だから、下手な励ましは返って逆効果になるかもな。
とはいえ、何て言えばいいのか分からない。
それにアイリスは俺のことを嫌っているような節があったから、てっきり喜ぶかと思ってた。
案外、そう思っていたのは俺だけだったのかもしれない。
だから。
「……俺は死ぬつもりないよ。世界を敵に回してもしぶとく生き残る」
そう言うほかになかった。
「何それ、意味分かんない。でも、お兄ちゃんならしぶとく生き残りそうかも。何回も殺そうとしたけど、今もこうやって生きてるし」
「うん。そうそう……って、え……? 俺を殺そうとしてたの?」
「だって、仲間外れにするし。ウザかった」
「それだけ? それだけで俺を殺すの?」
「うん。私、お兄ちゃん嫌いだったし」
ああ、そう……やっぱり俺、嫌われてたんだ。
へぇ。ふーん。めちゃくちゃショック。
殺そうとしてたぐらい嫌われるって、何をしたらそうなるのかな……。
もしかして、これも女心が分かってないからだったりする? そうだったら俺、女心を勉強するよ。
まさか女心を理解できないと、殺されるとは思わなかったよ……。
「まあでも、元気が戻ったならよかった。じゃあまたな、アイリス」
「バイバイ、お兄ちゃん」
そう久しぶりに兄妹で言葉を交わして、俺とノエルは訓練場を後にするのだった。
「ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
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