ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜

霜月琥珀

35話 邪龍教団

 ……どうやらガチでヤバいらしい。薄々そうなんだろうなとは思ってはいたが……。
 しかし、ミストはSランクの冒険者だ。そんな実力のある彼女がこうも引き下がるとは……。

 とはいえここで何もしないという選択肢はない。
 王都ベルゼルグには十万以上の民が暮らしているという。俺たちがしっかりと情報を持って帰って準備を進めることができれば、人的被害は抑えられるはず。

 そう思った俺はミストの肩に手を乗せて、

「お前が知ること全部、俺に話してくれ」

 彼女に話をするのを促した。

 するとミストは観念したのか、ボソボソと元気のない声で話し始める。

「アルトきゅんは魔物大量発生の真実を知っているかい?」
「いや、知らないな。俺が知っているのは魔法陣が関係しているってことぐらいだ」
「実はその魔法陣を設置したのは、邪龍ティアマトを崇拝している邪龍教なんだ」

 そうミストが言った途端、アナベルが話に割り込んできた。

「邪龍教だと!? それは本当なのか? いや、奴らならやりかねないか……」

 どうやらアナベルはその邪龍教とやらを知っているらしい。俺は何も知らないけど、有名なのかな。

「なあノエル。その邪龍教ってのは何なんだ? アナベルの反応を見る限り、悪い奴らなのは分かったけど」
「邪龍教はさっきミストさんが言った通り、邪龍ティアマトを信仰している宗教団体です。しかし、それは形式上そのように言っているだけで、彼らは大量虐殺を繰り返す犯罪者組織……だと私は教わりました」

 ふむ。しかし、何のために大量に人を殺す必要があるのだろう。ただの愉快犯ってわけでもないはずだ。

 俺はミストに視線を戻し、

「その邪龍教と王都壊滅、何の関係があるんだ?」

 と聞いた。

 すると、ミストは質問を質問で返してくる。

「アルトきゅんは今まで何の目的で魔物を大量に発生させていたか分かるかい?」
「……何の目的だろう。村の近辺に大量発生していて実際に被害が出ているってことは、人を殺すという行為が邪龍教にとって大事なはず……。でも、何のためだ? ただの愉快犯ってわけじゃないだろ?」
「流石はアルトきゅんだね。惜しいところまでは行ってるよ。そう……彼らにとって人を殺すというのは邪龍を崇拝する上で避けては通れない道」
「じゃあやっぱりその先があるってことか?」

 そうミストに問うと、彼女は首を縦に振った。
 
 しかし、俺にはその先というのが皆目見当もつかない。

 それもそのはず。

 相手は大量虐殺を繰り返す犯罪者組織。真っ当な人間である俺が、奴らの思考回路を理解できるはずもない。
 
 だが俺は邪龍教の行動原理を理解する。
 彼らはそれをなすために人を殺しまくっていた。

 そのことをミストの口から語られる。

「邪龍教の目的は邪龍ティアマトを復活させること。人間を殺していたのはそれを贄とするため」
「じゃ、じゃあ王都が壊滅するっていうのは……」

 俺は何となく分かってきたような気がする。
 今まで村の人を殺してきていたのに、どうしていきなり人の多い王都を狙うのか。

 それは、ティアマト復活の最終段階に来ているから。

「アルトきゅんが思ってる通りだよ。もし王都が壊滅したら、ティアマトは復活する。だからボクは君と逃げようとした……だけど、無理なんだろう?」
「ああ。この話を聞いて、より背を向けられなくなった。それにティアマトが復活したら、逃げても生きていられるか分からないし」
「分かったよ、アルトきゅん。君は昔から一度決めたことは最後までやり通す人だった。だからボクは……」
「? どうした?」
「ううん、何でもない。今はまだ……取っておく」

 そう言って、ミストは俺に背を向けて、アナベルたちに視線を向けた。
 どうやらミストも覚悟を決めたらしい。

 ああやって、俺を必死に戦場から遠ざけようとするミストも可愛かったけど、彼女はこうでなくては。
 今までもこうやって俺に背中を向けては、何度も頼もしく思わせてくれた。

 これで俺たちが負けることはない。
 
 俺はそう信じている。

「君たち、すまなかった。不甲斐ない姿を見せてしまって。でも、もう大丈夫。君たちとともにボクも戦うよ」
「いいのか? キミはアルトのことを……」
「アルトきゅんは死なないと言ってくれた。ボクはその言葉を信じることにする」
「そうか。罪な男だな、アルトは」
「でも、あれがアルトという男なんだ」
「そうだな」

 ……あれ? 何で俺のことを話してるの?
 しかも何か仲良くなってない? こういうものなの? 
 友達がいない俺には分からない……。

 と、置いてけぼりにされたのは一瞬のこと。
 ミストが本題について話し始めた。







 

 




 

 



























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