ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜
23話 みんなを守れる騎士になりたい
ノエルがそのように聞いてくる。
そりゃあ気になるだろう。いきなり大事なお話だと言われて、人気のないところに連れて来られたら。
しかしだな、ノエル。決してこれはお前にとって良い話ではない。むしろ、悪い話の部類に入るだろう。
だが、それをノエルが知る由もない。知ったところで何がどうなるわけでもない。
ノエルはどのみちこの悪い話というのを乗り越える必要が出てくる。
どれだけ辛くてもな。
だからこそ謝っておこう。
ごめん。
俺はこれからノエルにとって、感じの悪い奴になる。
「……ノエルはもう訓練するのを辞めよう」
「え……?」
「だから、訓練を辞めよう」
「でも私は凡人だから、みんなよりもっと努力しないといけないんです!」
俺の言葉に対して、ノエルは必死に訴えかけて来る。
そしてそれが本心であることも分かった。というより分らざるを得なかった。
ノエルは人一倍、努力を重ね続けている。
誰よりも遅くまで訓練場に残り、訓練していたのを見たからそう断言できる。
それも一度だけじゃない。毎日だ。どれだけツラくても訓練に打ち込む彼女の姿は鮮明に映った。
だが。
「……はいはい。そういうのもういいから」
俺は軽くいなした。
すると、ノエルは今まで見たことがないような表情で俺を見てくる。
きっと、今までの努力を否定されたと思ったからだろう。
でも俺はノエルの努力を否定するどころか肯定している。今まで頑張ってこなかった奴に否定できるわけがなかった。よくここまで頑張ってきたと褒めたいぐらいだ。
だが。
「ノエル。ハッキリ言うぞ。お前はこれ以上努力を続けたところで、強くはなれない」
俺はノエルに現実を突きつけた。
「どうしてっ、そんなこと……」
「お前自身も理解しているはずだ。自分に伸び代がないことぐらい」
「違います! まだ私は強くなれます! みんなより成長する速度は遅いですけど、まだ私は強くなれるんです! だからそんなことを言わないでください……っ」
ノエルの瞳がじんわりと潤い始めた。
きっと悲しいのだろう。悔しいのだろう。彼女の全てを知ることはできないが、それぐらい理解できる。
それでも俺は悪い奴を演じよう。
「いつまでそんな妄想を抱いている? もう限界値に達したんだ、お前は。もう他のみんなに追いつくことはできない。無理なんだよ。それを理解しろ」
「妄想なんかじゃありません! 私はもっと強くなれます! まだ限界なんて迎えていません! 確かにカレンさんたちに追いつくのは難しいかもしれませんけど、いつかは私だって……、私だって…………っ」
ノエルは言葉に詰まった。何を言いたかったのかは分からないが、言い切ることができなかった。
それはノエルが信じたくなくても理解しているからだ。
もう強くなれないことを。
限界値に達してしまっていることを。
カレンたちには二度と追いつけないことを。
でも、理解しているだけじゃダメなんだ。
それを乗り越えなくちゃならない。
だから俺はさらにノエルを傷つける。
「いつかはって何だ? 長い時間をかければカレンたちに追いつけるって言いたいのか?」
「…………」
「お前にそのいつかなんてやってくるわけないだろうが! つーかさ、いつかはって思ってる時点でそうなりたいと願ってしまってるって何で気づけない! 自分の力で追いつこうと――追い抜こうとしろよ!」
その瞬間、俺の頬に鋭い痛みが走った。
俺はノエルに叩かれたらしい。
だが、俺は動揺しない。こうなるかもしれないと覚悟はしてきている。
「あ?」
「何なんですか、さっきからっ! 強くなれないとかカレンさんやシノアさんには追いつけないって言っているくせに、追いつこうとしろって何なんですかっ! 意味が分からないんですよっ!」
遂にノエルの感情が爆発した。
だが、それでいい。自分の思っていることを吐け。
ノエルは今まで自分一人でよく頑張ってきた。弱音も吐かず、ただ一人で耐えてきた。
でもそれだと息が詰まる。
だから余計に焦って、動きが悪くなってしまう。
この際だ。思ってること全部、吐いてしまえ。
そうすれば、少しは気持ちも楽になる。
そして、自分がすべきこと――したいことが見えてくるはずだから。
「私だって頑張っています。頑張っているんです。一生懸命寝る間も惜しんで訓練して……。でも、一向に強くなれないんです! だから少しぐらい願ってもいいじゃないですか! アルトさんのようにボロボロになってでも勝利を勝ち取る貪欲さが欲しいって……。アナベルさんのようにみんなを引っ張っていけるリーダーシップが欲しいって……。オルガさんのように気高く真っ直ぐ前だけを向ける自信が欲しいって……。私だって……みんなを守れるようになりたいんです! 守られるだけじゃ嫌なんです。困っている人がいたら手を差し伸べられるような騎士になりたい。泣いている子どもに安心してもらえる強い騎士になりたい……。なのに私はこのざまです。何もできません。もう……何をどうしたらいいのか分からないんです……」
ノエルは涙を流しながら、必死に語った。
まさか俺の名前が出てくるとは思わなかったが、これは彼女の嘘偽りない本音だろう。
それに、やっぱり見えてるじゃないか。
自分のしたいことが。
なら、それに向かって進めばいい。
どうすれば自分のなりたい姿に近づくことができるのかを考えながら。
でも、独りでがむしゃらに頑張っているだけじゃダメだ。視野が狭くなる一方だ。
だから、今のようなノエルができあがってしまった。
そう……ノエルの訓練をいつも見ていて思ったけど、ノエルは基本的にいつも独りだったのだ。
周りに仲間がいるのに、孤独だった。
それじゃあ何も解決しないのは当たり前だ。
俺だってオルガがいなかったら、今も新必殺技の構想を何も思いつけていないかもしれない。
だから、何が言いたいのかって言うと。
「……俺たちを頼ればいいだろ」
「え……?」
ノエルは呆気に取られたような表情を浮かべた。
そりゃあそうだろう。今まで言い合ってた相手が急に態度を変えてきたわけだしな。
誰だって驚く。でも伝えたいことはまだまだある。
だから話を続ける。今はどんな顔をしていたっていいだろう。
俺しかいないんだから。
「もう一度言うぞ? 俺たちを頼れ。仲間だろ?」
「でも、自分一人で強くならないと、意味が……」
「何言ってんだ。意味はある。誰がそんなこと言ったのか知らないけどさ、周りをもっと見ようぜ。少し周りを見るだけで視野が広がる。視野が広がればお前の悩みなんて一瞬で解決できるだろうな」
そう。俺はこのことを騎士団に来てから学んだ。
一人じゃ出来ないことでもみんなとなら、俺は何でもできると思ったね。
「だからさノエル。前を見よう。自分の殻に閉じこもっていては、なれるものにもなれないぞ。なりたいんだろ? みんなを守れる騎士に」
「……はい」
「それならやることは一つじゃないか。――さて問題です。どうすればいいのか自分だけで答えを出せない場合、どうするのが正解でしょうか?」
「仲間に頼る?」
「何で疑問形なのか分からないけど正解だ。なら早速、悩みを打ち明けに行こう!」
「で、でも今みんなは……」
そう言って、ノエルは顔を俯かせた。
まったく、まだ理解できていないようだな。
「俺たちは仲間だって言ったはずだろ? お前の悩みは俺たちの悩みになる。だから訓練の邪魔をしちゃ悪いとか考えるな。もっと周りに頼ろうぜ、なっ?」
「……はい。すぐにとは言えませんが、これからは周りに頼っていこうと思います」
「ああ、それでいい。なら、行こうか!」
「――はい!」
こうして俺とノエルは悩みを打ち明けに、オルガたちの下へ戻るのだった。
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