ハズレスキル【魔物生産】は倒した魔物を無限に作り出せて勝手に成長するチートスキルでした!〜友達だった男にパーティー追放されたけど女だらけの騎士団に雇われたのでストレスフリーなスライム無双を始めます!〜
16話 敗者は彼との決闘を思い出す
~オルガ視点~
オレ様は負けた。自分から吹っかけた決闘に負けてしまった。恥ずかしいったらありゃしない。
だが、悔しさはどこにもなかった。
むしろ、負けて清々しいと思っている。
それぐらい奴――アルトは強かった。
それに比べてオレ様は何と情け無いことか。
一度たりとも攻撃を喰らわせることができなかった。オレ様はアルトを舐めていたのだろう。
だから、その舐めた態度を完全に叩き直してくれた最後の一撃にオレ様は惚れ込んでしまっていた。
「――ファイアインパクト・廻……か」
そうアルトの口にしていた技名を言葉にしたが、頭に思い浮かんだのは何故かアルトの顔だった。
とても真剣な表情で、覚悟の決まった眼差し。
オレ様の脳裏にアルトのその顔が焼き付いてしまって、離れない。離れてくれない。
ずっとアルトはオレ様の頭の中に居座っていやがる。
頭を振って追い出そうとしても、より鮮明にアルトの顔を思い浮かべてしまって、胸がキューッと痛くなる。
それだけじゃない。体を酷使したとき以上に心臓が高鳴り、顔が熱を持ち始めた。
その初めての感覚に戸惑いが隠せない。
「何だよコレッ! 何でオレ様はこんなにもドキドキしてんだよ……ッ! これじゃあまるで……」
恋する乙女じゃないかッ!
そう言おうとして。
「何だ、起きていたのか。失礼するぞ」
アナベルが部屋に入ってきた。ったく、魔の悪い奴だ。
まだ心の整理がついていないというのに。
……そういえば、気になることがあったな。
「奴は……アルトは無事か?」
「無事だ。今はぐっすり眠っている」
「そうか。ならいい」
ファイアインパクト・廻は、アルトにも相当な負荷がかかっただろうからな。
あの威力から察するに右腕の骨は全て砕けてしまっているだろう。
それに筋肉にも相当な負荷がかかっているはずだ。
何らかの後遺症が残ってもおかしくはない。
「アナベル。アルトに伝えろ。ファイアインパクト・廻は封印した方がいいと。あれを使い続けたら、日常生活すらままならなくなる」
「あぁ、そのつもりでいる。あれはアルト以外に使える代物では無いが、禁術に指定されてもおかしくない威力だったからな。それに、あれをまともに食らってもなお生きているキミはやはり異常だ。私は改めてそれを確信したよ」
アナベルは呆れた様子で言った。
だが、アナベル。お前は間違っている。何故ならオレ様は異常ではない。
もし、ファイアインパクト・廻をモロに喰らっていたら、オレ様の体には風穴が空いていたはずだからな。
だがあのとき、アルトは恐らく無意識のうちに、オレ様の腹部にスライムを召喚していた。
流石に全てを受け止めきれずに爆散してしまったが、そのお陰で大幅に威力が弱まっていたのだ。
本当、あのときは死を覚悟した。
「それで? アルトと戦ってどうだった?」
「どうだったもクソもない。奴はオレ様が思っていたような奴じゃなかった。それだけだ」
「ほう? キミが他人を褒めるとは。よほどアルトのことが気に入ったようだな」
「……まあ、奴の存在を認めてはいる」
そうじゃないと、オレ様の心中を埋め尽くすアルトへの想いは何なのか。という話になる。
まだこの想いが、どういうものなのかは分かりきってはいないがな。
だがまあ、女であることを捨てたオレ様が、奴に惚れたというわけではあるまい。
「あ、そうだ。キミに言いたいことがあったことを思い出したよ」
「あ? 何だよ」
「アルトにとって、キミは女の子らしい。冗談で言っていると思っていたが、自分より女の子であるキミを第一に考えていた辺り、本心だったんだろうな」
「――なっ!? お、オレ様が女の子だとっ!?」
奴は何を考えているんだ!
しかし、決闘を思い返してみると、その言葉があながち間違いではないことが容易に分かった。
『だが、お前は女だ。お前がどう思っていようとそれは覆らない! 俺がお前に勝って、それを証明してやる!』
と。
なら奴に文字通り負けてしまったオレ様は、女であることを証明されてしまったのか……。
強さを手に入れるために女を捨てたというのに。
罪な奴だ。
だが…………いやいや待て!
オレ様は今、何を思おうとした!?
これは一度、奴を問い詰めなければならない。
そして、オレ様は決して女ではないことを認めさせなければ……!
そうでないと、オレ様は……。
そう一人で悶々としていると。
「では、私はこれぐらいで失礼させてもらうよ。アルトの容体を確認しないといけないからな」
アナベルが部屋から出て行ってしまった。
いや、待てよ? オレ様が悶々としているのはアナベルのせいじゃないか。
「おい待ちやがれアナベル! お前が余計なことを言うからこんなことに……ッ。だから逃げんなっッ! こっちに戻ってきやがれ――ッッッ!」
オレ様は逃げるアナベルを追いかけるのだった。
オレ様は負けた。自分から吹っかけた決闘に負けてしまった。恥ずかしいったらありゃしない。
だが、悔しさはどこにもなかった。
むしろ、負けて清々しいと思っている。
それぐらい奴――アルトは強かった。
それに比べてオレ様は何と情け無いことか。
一度たりとも攻撃を喰らわせることができなかった。オレ様はアルトを舐めていたのだろう。
だから、その舐めた態度を完全に叩き直してくれた最後の一撃にオレ様は惚れ込んでしまっていた。
「――ファイアインパクト・廻……か」
そうアルトの口にしていた技名を言葉にしたが、頭に思い浮かんだのは何故かアルトの顔だった。
とても真剣な表情で、覚悟の決まった眼差し。
オレ様の脳裏にアルトのその顔が焼き付いてしまって、離れない。離れてくれない。
ずっとアルトはオレ様の頭の中に居座っていやがる。
頭を振って追い出そうとしても、より鮮明にアルトの顔を思い浮かべてしまって、胸がキューッと痛くなる。
それだけじゃない。体を酷使したとき以上に心臓が高鳴り、顔が熱を持ち始めた。
その初めての感覚に戸惑いが隠せない。
「何だよコレッ! 何でオレ様はこんなにもドキドキしてんだよ……ッ! これじゃあまるで……」
恋する乙女じゃないかッ!
そう言おうとして。
「何だ、起きていたのか。失礼するぞ」
アナベルが部屋に入ってきた。ったく、魔の悪い奴だ。
まだ心の整理がついていないというのに。
……そういえば、気になることがあったな。
「奴は……アルトは無事か?」
「無事だ。今はぐっすり眠っている」
「そうか。ならいい」
ファイアインパクト・廻は、アルトにも相当な負荷がかかっただろうからな。
あの威力から察するに右腕の骨は全て砕けてしまっているだろう。
それに筋肉にも相当な負荷がかかっているはずだ。
何らかの後遺症が残ってもおかしくはない。
「アナベル。アルトに伝えろ。ファイアインパクト・廻は封印した方がいいと。あれを使い続けたら、日常生活すらままならなくなる」
「あぁ、そのつもりでいる。あれはアルト以外に使える代物では無いが、禁術に指定されてもおかしくない威力だったからな。それに、あれをまともに食らってもなお生きているキミはやはり異常だ。私は改めてそれを確信したよ」
アナベルは呆れた様子で言った。
だが、アナベル。お前は間違っている。何故ならオレ様は異常ではない。
もし、ファイアインパクト・廻をモロに喰らっていたら、オレ様の体には風穴が空いていたはずだからな。
だがあのとき、アルトは恐らく無意識のうちに、オレ様の腹部にスライムを召喚していた。
流石に全てを受け止めきれずに爆散してしまったが、そのお陰で大幅に威力が弱まっていたのだ。
本当、あのときは死を覚悟した。
「それで? アルトと戦ってどうだった?」
「どうだったもクソもない。奴はオレ様が思っていたような奴じゃなかった。それだけだ」
「ほう? キミが他人を褒めるとは。よほどアルトのことが気に入ったようだな」
「……まあ、奴の存在を認めてはいる」
そうじゃないと、オレ様の心中を埋め尽くすアルトへの想いは何なのか。という話になる。
まだこの想いが、どういうものなのかは分かりきってはいないがな。
だがまあ、女であることを捨てたオレ様が、奴に惚れたというわけではあるまい。
「あ、そうだ。キミに言いたいことがあったことを思い出したよ」
「あ? 何だよ」
「アルトにとって、キミは女の子らしい。冗談で言っていると思っていたが、自分より女の子であるキミを第一に考えていた辺り、本心だったんだろうな」
「――なっ!? お、オレ様が女の子だとっ!?」
奴は何を考えているんだ!
しかし、決闘を思い返してみると、その言葉があながち間違いではないことが容易に分かった。
『だが、お前は女だ。お前がどう思っていようとそれは覆らない! 俺がお前に勝って、それを証明してやる!』
と。
なら奴に文字通り負けてしまったオレ様は、女であることを証明されてしまったのか……。
強さを手に入れるために女を捨てたというのに。
罪な奴だ。
だが…………いやいや待て!
オレ様は今、何を思おうとした!?
これは一度、奴を問い詰めなければならない。
そして、オレ様は決して女ではないことを認めさせなければ……!
そうでないと、オレ様は……。
そう一人で悶々としていると。
「では、私はこれぐらいで失礼させてもらうよ。アルトの容体を確認しないといけないからな」
アナベルが部屋から出て行ってしまった。
いや、待てよ? オレ様が悶々としているのはアナベルのせいじゃないか。
「おい待ちやがれアナベル! お前が余計なことを言うからこんなことに……ッ。だから逃げんなっッ! こっちに戻ってきやがれ――ッッッ!」
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