9月9日11時

みゆたろ

ツバメ

「もしもし、俺だけど?」

受話器の向こうからは、ニシジマケイコの事を調べているマモルの声がした。

「どうした?」

「少しは進展してるか?」

「あぁ、ちょっとはな」

「明日、金曜日だろ?打ち合わせは何時にする?」

「八時頃でどうだ?前の居酒屋でーー」

「あぁ、わかった。遅れるなよ!浩司には俺から伝えておく!」

マモルは言った。
そもそも、敦は、浩司という人物には会った事もないし、電話で話した事もない。
彼の人物像すら、知らないのだ。
明日、ようやく彼と初めて会う事になる。

それまでに少しでも情報を集めないとーー。

街はオレンジ色の夕暮れに染まっていく。
そんな中、男子学生が3人歩いていた。

「ーーすいません。ちょっといいかな?」

「何ですか?」

こちらを真っ直ぐ向き、質問を待った。

「君たち、この子を知ってるか?」

田中宏美の写真を差し出す。

「もしかして、これってーー?」

「知ってるのか?」

少し前のめりになって敦は聞いた。

「これって、ツバメだよな?」

ーーは?ツバメ??

意味は分からないが、学生は仲間に確認すると、笑っている。

「ーーツバメってどういう??」

「そいつ、元々は田中宏美って言うんだけど、ある日を境にして、ツバメって呼ばれるようになったんだーーなんでかは俺らはわからないけど」

「ある日って、どれくらい前かわかる?」

「うーん。一年くらい前だったかなぁ?」

「他に何か知ってる事はある?」

彼らは首を横に降って、知ってる事はもうないと否定した。

「それじゃ、この子たちは知ってるかな?」

沢口望、西島佳子。
二人の顔写真を見せる。

「うーん、わからないです。すいません!」

学生たちは首を振った。

「ありがとう。また何か思い出したら、ここに電話して!」

そう言って、今更ながら名刺を差し出すと、お礼を言ってその場を離れる。

今日分かったことは、宏美=ツバメ。佳子=カラス。
そして、グループの名前が不死鳥。
宗教のような心理学の研究者ーー。

ふぅ。
軽いため息を一つこぼしてから、敦はぼやいていた。

ーーこの自殺、分からない事が多すぎる。

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