転機に気付け!風に乗れ!

風乃音羽

第3話 自問自答〜そしてサプライズプレゼント

はじめてのドイツ旅行の後、まだ学生だった私は「時間もまだある。他の国にも行きたい!」と強く思いました。
「まずはアメリカに行こう!」とアルバイトをいっぱいして、お金を貯めて、計画してということが始まりました。

旅行に行くこと、短期でも留学することを最優先の目標として、大学生活を送りました。

LA,ハワイ、タイ、グァム、サイパン、シンガポール、沖縄、北海道、....

旅行好きな友だちと行ったり、1人で行くこともありました。

同じ国でも地域が違えば全く違う空気が流れている。
違う文化がある。
時間の使い方も違えば、人の習慣も違う。

私は日本人として生まれたのは何故なのか?

もし、この国で生まれ育っていれば、どんな今だったのか?

日本人として誇れるものは何か?

今の人生と自分、今の環境の中の自分について自問自答する癖がつきました。

自分が何者なのかを解明したいという思いが生まれたのはこの頃です。

旅行に行くと日常から離れて、ちゃんと自分を見つめる時間と心の余裕が出来るようになります。

何故わたしはここに来たのか?
何故わたしはこれをしたいのか?
何故わたしはこの人と出会ったのか?
何故わたしはこれが好きなのか?
この自問自答がわたしにとっては、とても大切なことでした。
自分に問いかける事で、
わたしが何がしたいのか、
何が好きなのか、嫌いなのか、
どんなことに感動するのか、
どういう人でありたいのか、
どんな縁に巡り合うのか、
どういう環境なら気持ち良いと思えるのか、ということが、どんどん具体的になっていくからです。

世界中を見に行きたいという好奇心に従って、思いのままに動いて、この自問自答をしていれば、自分が何者なのかいつか分かるかも、とワクワクしました。

ところが、状況が変わり、わたしも変わってしまいました。
学生生活最後の年、進路を決めないといけない時期がやって来たのです。
それまでの、自由気ままな学生時代から、急に、生真面目に、社会人になることを意識して、進路を決めないといけない、というプレッシャーが、わたしたちに襲いかかって来ました。

わたしも、流されるまま就活を始めました。

感覚としては、
今までは、だだっ広い広場を好きに走り回ってたわたしの前に、突如細い道が何本か現れて、どこかの道を選ばなければいけない、という状況に置かれてしまった、という感じです。

ただ、時代に恵まれていて、その頃はバブル真っ只中でした。
就活も夏休み明けくらいからボチボチ始めても、みんな採用内定を3~4個は持っていました。

わたしは、18歳から学生をしながらモデル事務所に所属し、仕事をしていたので、
なんとなくアパレル関係の商社やメーカーになじみがあったという理由だけで、その業界の採用試験に行き、3つくらいの内定をもらいました。

そして、いよいよ、自分が本当に就職する企業を決めるという時期になりました。

決定前に、各社は一日社員研修をする。
学生は、会社見学も兼ねて、内定をもらってる会社の社員を1日だけ体験する。
そして、一つの会社を選び、決定する。
というのが、その頃の流れでした。
しかも、その時代の1日社員研修は信じられないような学生接待でした。
昼間の説明会や研修、先輩社員のスピーチタイムが終わると、夜は、先輩への質問会と称して、宴会でした。
美味しいお料理を振る舞ってもらって、お酒も飲み、とにかく私たちを楽しませてくれるイベントでした。
そして、一番楽しかった企業を学生が選ぶ、という感じです。
バブル時代の新卒採用者達はみんな勘違いをしていたと思います。

わたしはその中の一つのメーカーに入社することを早々に決め、あと残すところは卒論のみとなりました。
自分は何者かと自問自答した日々のことも、忘れてしまい、ただ流れに乗って、このまま就職し、社会人になるんだと思っていました。

そんな時に、ドイツの友だちマークから手紙が来ました。
ドイツに公演旅行に行った際にホームステイをさせてもらった家のマークとわたしは、ずっと文通をしていたのです。

その頃は今のようにSNSもEメールももちろんなく文通です。

お互いの近況報告に写真を添えたものなんかを送りあってました。

マークからの手紙に書かれていたのは、
「12/8、あなたのバースデーに、東京在住の僕の友だちが京都に行くから、バースデープレゼントをことづけた。
迎えてやって欲しい。
午後になると思うのでよろしく。」
という内容でした。

その日がやってきて午前中出かけてたわたしは、急いで帰ってくると、玄関に大きな男性物の靴がキチンと揃えられてました。(ドイツ人は平均的に骨格の大きな背の高い人が多いんです。)

母が慌てて出て来て
「ビックリするじゃない!
大きな外人があなたを訪ねてやってきて、お母さん何言ってるか分からないし、お父さんも適当な英語で、わかってんだか?!
とにかく、なんかあなたの誕生日のお祝いにやって来たって!」

「ごめん。お母さん、言っとくの忘れてた。もう来てるんだ。どんな人だろ?」
わたしは、大急ぎで奥のリビングのドアを開けました。

「えっ!⁇マーク!???どうして ︎
友だちが来るんじゃないの?
本当に本人?」

「サプライズ!!
日本人のこと色々調べたら突然訪問は失礼な行為でちゃんとアポイントがいるって書いてあった。
でもどうしてもサプライズしたかったから、友だちが行くってことにしたんだよ。
ビックリした?
はい、プレゼント」

手渡されたのは、なんとドイツへのエアチケットでした。

その頃は日本では格安のエアチケットなんかはなかったのですが、ドイツで購入したものをプレゼントしてくれたんです。

「学生生活最後に長期滞在しない?僕のファミリーはいつでもウェルカムだから」

なんて素敵なプレゼント!マークありがとう。神様すごい!こんなサプライズってある?

マークは、その後3日間だけ、わたしの家にステイし、帰って行きました。

日本の企業に入るということは、学生である今のように平日休みや長い連休は期待できません。
わたしは、学生生活最後にドイツに約3ヶ月の滞在を計画し、12月中旬には卒論を終わらせました。

そしてドイツに発ったのです。

to be continued...

          

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