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魔女伝〜天才魔女ヨキのリアルはちゃめちゃ人生

風乃音羽

第14話 類い稀なる生い立ち 中盤

マサチューセッツ州には、魔女の街がある。
ボストンから、少し北東に位置するセーラムという街だ。
そこは、昔、魔女狩りが激しく行われた場所だ。
魔女かもしれないと疑われた女が、13人集められて、人前で晒されて、生きながら焼かれた。
魔女であるなら、その炎から自分で逃れることが出来るはずだから、やって見せろ、という意味も含まれる。

もし、生き延びられた場合は、無罪放免となる。
なぜなら、本当に力を持っていて、炎からさえ逃れることが出来る相手に、一体、人間が、何が出来るというのか。
もちろん、間違いもあっただろう。
つまり、魔女では無い、普通の女性が人違いで焼かれてしまったこともあるだろう。

今、アメリカでは、死刑囚が、死刑施行されて、もし死ななかったら、無罪放免になる。
それも、その名残なのかもしれない。

その時代、魔女が、何か悪いことをしたわけではなく、自分たちの信仰を通していただけだし、世の中のために、国のために、その力を使っていたにすぎない。

その魔女たちを、大量虐殺した歴史があるのだ。
それは、人の弱さから来ている。
人は、自分が、わからないもの、理解できないこと、特別な才能を見せられることが、怖いのだ。
その恐怖から、迫害が生まれる。
平均的な人とは違うタイプ、類稀なる才能を見てしまうと、村八分にしたくなる。
それは、妬みともいうけれど、そんな単純な言葉では片付けられない。
人の弱さと愚かさと、集団意識の残酷さが、複雑に絡み合う。
でも、その弱さが、人の最も美しい部分でもあるのかもしれない。
ダメだと心底ではわかりながらも、やってしまい、後悔の念で、自分を責める。
反省する。
そして、次の行動を変えようとする。

この、不完全さと、伸び代が、人の可愛いらしい部分でもある。変化していく美しさが、そこには見える。

だから、償いとして、今は、魔女狩りの街は、魔女を讃え、保護する街となったのだ。

ヨキは、セーラムにあるウィッチスクールに通っていた。

ヨキは、音楽大学に通いながら、
ウィッチスクールが、たくさんあることに気づき、カード専攻という言葉が、目にに飛び込んで来て、すぐに入学した。

カード専攻も魅力的だったけれど、やっぱり生まれて物心ついた時に、自分は魔女だということは、自覚があった。
お母さんは、普通の人間だと分かった。
でも、おばあちゃんは、魔女だって気付いてた、とヨキは言う。
だから魔女学校に行くことは、ヨキにとって、当たり前に用意された人生の通り道、絶対通る訓練の場だったのだ。

魔女学校と言っても、魔女だけが通ってるわけでは無い。
ヒーラーや、サイキッカー、ただ興味があるだけの普通の人もいる。

そして、魔女か、それ以外かは、みんな自覚がある。

魔女学校では、宇宙の流れ、天体のことなど一通りの一般教養と、カードや、サイコキネシス、ヒーリング、呪文といった、専攻がある。

そして、魔女のみが取ることのできる授業があり、それは、先生が生徒たちに、「魔女の人、手を挙げて」
みたいな感じで、自己申告させ、手を挙げた魔女たちだけが、魔女の授業を受けるのだ。

ヨキは、当然、魔女であると自己申告し、その授業を受け、今もその教えを軸に生きている。
魔女の教えというのは
ネオペガニズム、日本語で言うなら、復興教主義という、一つの宗教なのだ。
教祖は、北欧で生まれたフレイヤ。
魔女は、自分たちのことをウィッカンと呼ぶ。
ウィックが、ケルト語で魔術、そして魔術を使う人が、ウィッカンだ。
古代魔女はフェミニストであり、ソウルトライブ、要するに魂の種族と共に、コンベントという女寺の中で過ごす者が多かった。
ハーブや自然のものに関する膨大な知識を持ち、それらを、生活や医療、魔法に使う。

魔女学校は、1年しっかり学び、卒業となり、免許皆伝となった。

「わたし、国認定魔女なのよ。アメリカの、、」
笑いながら、そんな説明を音羽にしてくれた。

ヨキは、音楽大学に通いながら、もう一つの、誰にも明かしてない顔が、魔女訓練生だったわけだ。

そして、もう一つ、ヨキがアメリカに来て、どうしても叶えたい夢があった。
そのために、アメリカに来たのだ。

それは、ブロードウェイミュージカルのアクトレスになること。

音大では、音楽療法や、教育を専攻としていたが、ボイストレーニングも受けられる環境があった。
ダンスも、発声も、スピーチも練習し、オーディションを受けまくった。

ブロードウェイでは、一般公募のオーディションはない。
まずは、プロダクションに所属しなければいけない。
そこから、ブロードウェイやオフブロードウェイの演者の募集がかかれば、オーディションに斡旋してもらえる。
そのプロダクションのオーディションが、第一関門で、ヨキは、あらゆるプロダクションに書類を送ったり、
チャイナタウンから出ているニューヨーク行きの夜行バスに乗って、オーディションを何度も受けに行った。

ところがなかなか、このオーディションに受からない。
どこに書類を出したかも覚えていないほど、あらゆるプロダクションに応募していた。

そして、ある日、忘れた頃に、返事をくれたプロダクションがあったのだ。
タイムラグがあり、いつ応募したのかも分からなかったけれど、
やっとチャンスを掴んだのだ。

ニューヨークで、ブロードウェイミュージカルに出演するという夢への切符を、手に入れたヨキだった。

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