誇り高い義妹が悪役令嬢呼ばわりされて国外追放となった、俺が黙っているとでも思ったのか、糞王太子。
第77話:怪力乱神を語らず
「エドアルド、わたくしや子供の事は心配ありません。
何時も口にされているではありませんか。
『神などいない、神がいるのならこの世の中はもっとよくなっている』
存在しない神を語る神官など、いつも通り神明裁判にかけて厳罰に処せられてください」
俺の迷いをマリアが断ち切ってくれた、情けない話だ。
本来ならば、俺が断固として行わなければいけないのに、躊躇してしまった。
俺の失敗を攻撃しようとしている貴族や騎士はかなり多い。
躊躇したのは、敵対している貴族や騎士を恐れたのではなく、マリアと子供の事を想ってだが、即断できなかったという意味では同じだ。
処罰する事のできる理由のある者は全て厳罰に処したが、上手く処罰を免れて機会をうかがっている者がいる。
そんな者にとって、今回の逆子と神官の登場は絶好の機会なのだ。
よく考えれば、今回逆子の情報が漏れたのも、神官が潜伏できていたのも、俺を恨んでいる貴族や騎士がやった可能性が一番高い。
何も俺とマリアの後宮に入らなくても情報を手に入れる事ができる。
フェデリコ国王陛下やマルティナ王妃殿下には逆子の事を報告している。
マリアの両親で俺の義親である二人に逆子を隠しておく事などできない。
お二人の侍従や侍女から、敵対貴族に情報が流れたと考えるのが妥当だ。
この程度の事も分からなくなるほど、俺は狼狽していたのだ。
俺だけではなく、マリアも、軍師役のソフィアをはじめとした侍女達も、マッティーア侍従長をはじめとした侍従達もだ。
本当に大切なモノの命が掛かっている時には、冷静ではいられなくなり、いつも通りの能力を発揮できない。
普段は分かっている事なのに、自分や配下の命がかかっている戦場でも忘れた事などないのに、今回に限って全て忘れてしまっていた。
「分かったよ、マリア、一番不安で、一番何かに縋りたいはずのマリアが、俺のために差し出された悪魔の手を振り払ってくれたのだ。
俺が父親の勇気を見せない訳にはいかない。
ソフィア、神の奇跡で逆子を治すと言ってきた神官に神明裁判をかける。
そうマッティーア侍従長に伝令を送り、急いで公開の場を設けさせろ」
「承りました」
マリアが背中を押してくれたお陰で、俺は決断する事ができた。
だがそれでも、無心で、何の疑いもなく神明裁判ができたわけではない。
内心では、もしかしたら俺の考えが間違っているのではないかという思いもあったが、マリアの言葉を支えに表情一つ変えずに神明裁判を行った。
「ほんとに宜しいのですか、エドアルド公王殿下。
神の代弁者たる大神官の私を裁きに掛けたりしたら、神罰が下りますよ。
人間ごときが神の御意志に疑いを持つなど、畏れ多すぎる事なのですよ。
マリア王太女殿下と子供が死んでしまうのですよ。
さあ、今からでも遅くはありません。
不遜な考えは捨てて、大いなる神の御加護に縋りなさい」
このような状況で名乗り出てきた神官だけあって、ギリギリまで表情一つ変える事なく神明裁判に臨む度胸はあった。
あるいは狂信者で、本当に自分の事を神の代弁者だと思っているのかもしれない。
そうでなければ、神の代弁者を演じさせるために、生まれた時から隔離して常識を何も知らない阿呆に育てたかだ。
「やめろ、止めるのだ、不信人者、神罰が下るぞ、神が御許しにならないぞ」
阿保に育てられた被害者なら可哀想だと思っていたのだが、どうやら欲の為なら命すらかけられる極悪人だったようだ。
最初に赤々と焼けた鉄を持たせようとしたら、罵詈雑言の数々を口にし出した。
最後の最後に恐怖の表情を浮かべてくれたので、罪悪感を持たないですんだ。
「ギャアアアアア、背信者め、神を恐れぬ悪魔の化身め」
焼けた鉄を両手で持たせたら、凄まじい悲鳴と悪口雑言を口にしだした。
だがそれも最初だけで、次に準備をしていた炎鉄を運ばせたら哀願に代わった。
「どうか、どうか御許しください、私が悪かったです。
神の代弁者などと言うのは真っ赤な嘘でございます。
ギャアアアアア、もう、もう止めてください、お願いします。
全て話します、全て話しますから、もう許してください。
ギャアアアアア、フリオースト伯爵です、フリオースト伯爵に命じられてやったのです、好きでやったわけではありません、どうかお許しください」
「聞いたか、皆の者、この者は神の名を騙った大罪人だ。
だが、この者よりも罪深い者がいる。
一度忠誠を誓った主君を裏切り、次期国王となるべき子供を死なそうとした。
適切な治療を行う邪魔をして、存在しない神に縋るように仕向けたのだ。
フリオースト伯爵を討伐して族滅させる。
友誼を理由に討伐に参加しない者は、フリオースト伯爵と一味同心と考え族滅させるが、それだけでは済まさぬ。
徹底的に調べ上げて、今回フリオースト伯爵の討伐に参加した者であろうと、僅かでもフリオースト伯爵と関係がある者は皆殺しにする、覚悟しておくがいい」
もう色々と考えるのも、配慮するのも止めだ。
王家と同じアウレリウス氏族であろうと皆殺しにしてやる。
マリアと我が子をコケにした奴は一人残らず殺してやる。
何時も口にされているではありませんか。
『神などいない、神がいるのならこの世の中はもっとよくなっている』
存在しない神を語る神官など、いつも通り神明裁判にかけて厳罰に処せられてください」
俺の迷いをマリアが断ち切ってくれた、情けない話だ。
本来ならば、俺が断固として行わなければいけないのに、躊躇してしまった。
俺の失敗を攻撃しようとしている貴族や騎士はかなり多い。
躊躇したのは、敵対している貴族や騎士を恐れたのではなく、マリアと子供の事を想ってだが、即断できなかったという意味では同じだ。
処罰する事のできる理由のある者は全て厳罰に処したが、上手く処罰を免れて機会をうかがっている者がいる。
そんな者にとって、今回の逆子と神官の登場は絶好の機会なのだ。
よく考えれば、今回逆子の情報が漏れたのも、神官が潜伏できていたのも、俺を恨んでいる貴族や騎士がやった可能性が一番高い。
何も俺とマリアの後宮に入らなくても情報を手に入れる事ができる。
フェデリコ国王陛下やマルティナ王妃殿下には逆子の事を報告している。
マリアの両親で俺の義親である二人に逆子を隠しておく事などできない。
お二人の侍従や侍女から、敵対貴族に情報が流れたと考えるのが妥当だ。
この程度の事も分からなくなるほど、俺は狼狽していたのだ。
俺だけではなく、マリアも、軍師役のソフィアをはじめとした侍女達も、マッティーア侍従長をはじめとした侍従達もだ。
本当に大切なモノの命が掛かっている時には、冷静ではいられなくなり、いつも通りの能力を発揮できない。
普段は分かっている事なのに、自分や配下の命がかかっている戦場でも忘れた事などないのに、今回に限って全て忘れてしまっていた。
「分かったよ、マリア、一番不安で、一番何かに縋りたいはずのマリアが、俺のために差し出された悪魔の手を振り払ってくれたのだ。
俺が父親の勇気を見せない訳にはいかない。
ソフィア、神の奇跡で逆子を治すと言ってきた神官に神明裁判をかける。
そうマッティーア侍従長に伝令を送り、急いで公開の場を設けさせろ」
「承りました」
マリアが背中を押してくれたお陰で、俺は決断する事ができた。
だがそれでも、無心で、何の疑いもなく神明裁判ができたわけではない。
内心では、もしかしたら俺の考えが間違っているのではないかという思いもあったが、マリアの言葉を支えに表情一つ変えずに神明裁判を行った。
「ほんとに宜しいのですか、エドアルド公王殿下。
神の代弁者たる大神官の私を裁きに掛けたりしたら、神罰が下りますよ。
人間ごときが神の御意志に疑いを持つなど、畏れ多すぎる事なのですよ。
マリア王太女殿下と子供が死んでしまうのですよ。
さあ、今からでも遅くはありません。
不遜な考えは捨てて、大いなる神の御加護に縋りなさい」
このような状況で名乗り出てきた神官だけあって、ギリギリまで表情一つ変える事なく神明裁判に臨む度胸はあった。
あるいは狂信者で、本当に自分の事を神の代弁者だと思っているのかもしれない。
そうでなければ、神の代弁者を演じさせるために、生まれた時から隔離して常識を何も知らない阿呆に育てたかだ。
「やめろ、止めるのだ、不信人者、神罰が下るぞ、神が御許しにならないぞ」
阿保に育てられた被害者なら可哀想だと思っていたのだが、どうやら欲の為なら命すらかけられる極悪人だったようだ。
最初に赤々と焼けた鉄を持たせようとしたら、罵詈雑言の数々を口にし出した。
最後の最後に恐怖の表情を浮かべてくれたので、罪悪感を持たないですんだ。
「ギャアアアアア、背信者め、神を恐れぬ悪魔の化身め」
焼けた鉄を両手で持たせたら、凄まじい悲鳴と悪口雑言を口にしだした。
だがそれも最初だけで、次に準備をしていた炎鉄を運ばせたら哀願に代わった。
「どうか、どうか御許しください、私が悪かったです。
神の代弁者などと言うのは真っ赤な嘘でございます。
ギャアアアアア、もう、もう止めてください、お願いします。
全て話します、全て話しますから、もう許してください。
ギャアアアアア、フリオースト伯爵です、フリオースト伯爵に命じられてやったのです、好きでやったわけではありません、どうかお許しください」
「聞いたか、皆の者、この者は神の名を騙った大罪人だ。
だが、この者よりも罪深い者がいる。
一度忠誠を誓った主君を裏切り、次期国王となるべき子供を死なそうとした。
適切な治療を行う邪魔をして、存在しない神に縋るように仕向けたのだ。
フリオースト伯爵を討伐して族滅させる。
友誼を理由に討伐に参加しない者は、フリオースト伯爵と一味同心と考え族滅させるが、それだけでは済まさぬ。
徹底的に調べ上げて、今回フリオースト伯爵の討伐に参加した者であろうと、僅かでもフリオースト伯爵と関係がある者は皆殺しにする、覚悟しておくがいい」
もう色々と考えるのも、配慮するのも止めだ。
王家と同じアウレリウス氏族であろうと皆殺しにしてやる。
マリアと我が子をコケにした奴は一人残らず殺してやる。
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