誇り高い義妹が悪役令嬢呼ばわりされて国外追放となった、俺が黙っているとでも思ったのか、糞王太子。
第72話:拗ねる
「マリアお嬢様、体調に変化はありませんか。
少しでもつらい事や気になる事があるのなら、包み隠さずに言ってください」
俺は全身を徹底的に洗ってからマリアお嬢様の後宮に向かった。
後宮に入る時に、もう一度徹底的に身体を洗い、消毒もした。
ここまでやる事に、しかも後宮に入る全ての者に同じ事をやらせるので、周囲の者達はあきれ果てている。
酒好きの連中は、高濃度のアルコールを消毒に使っている事に悪口陰口を言っているようだが、知った事ではない。
マリアお嬢様以上に大切な事などこの世界には何一つないのだ。
「……」
「何故何も言ってくれないのですか、マリアお嬢様。
やはりどこか痛むのではありませんか、侍女頭、マリアお嬢様の主治医はどこだ。
選りすぐりの女医と産婆を後宮に仕えさせていたはずだぞ、何をしている」
「……エドアルド様、約束が違うではありませんか。
わたくしの事はマリアと呼び捨てにしてくださる約束です。
約束を守ってくださらないのでしたら、わたくしは何も話しません。
マリアと呼び捨てにしてくださらない限り、お返事もしませんからね」
「いや、そんな事を言われても、俺はあくまでもマリアお嬢……」
「駄目です、絶対に駄目です、絶対に許しません。
わたくしだってお兄様と呼ばないように気を付けているのですよ。
わたくし達の子供が生まれ、成長したらどうするのですか。
わたくしがお兄様と呼び、エドアルド様がマリアお嬢様と呼んでしまっていたら、子供がおかしく思ってしまうではありませんか。
その所為で子供が変に育ってしまったら、どうするお心算なのですか」
「いえ、それは、その、申し訳ない、考えていなかった」
前世でも今生でも、本当に大切だと思えた人間は、マリアお嬢様とフェデリコ様だけしかいなかった。
今生では孤児だったし、前世でも心から大切だと思った人は一人もいない。
情けない事だと分かっているが、前世の両親を心から大切だと思ったことはない。
前世の倫理や常識や忠孝の考えから、大切いしなければいけないとは思ったが、命を捨ててまで尽くしたいと思った事はない。
前世でも尊敬する人はいたし、今生でも尊敬する人はいる。
女性に関しても、尊敬できる人や私欲の対象はできた人はいた。
だが物語のように、心から愛せる人は遂に現れてくれなかった。
我を忘れてしまうような相手は、両人生を通じてお嬢様だけなのかもしれない。
だからこそ、こんな簡単な事をうっかりとしてしまう。
確かに、両親が心から愛し合っていなくて、主従の関係のようでは、子供の情操教育に悪すぎる。
下手をすれば、マリアお嬢様のために、二人の間にできた子供を殺さなければいけなくなってしまうかもしれないが、そんな事が今の俺にできるのだろうか。
昨日の夢と今の状況を考えると、どれだけ極悪非道に育っても、二人の子供を殺せないかもしれない。
そんな事になってしまったら、王国や属国は大混乱に陥り、家臣領民が塗炭の苦しみを味わう事になってしまう。
「分かったよ、マリア、これからはちゃんと夫婦として暮らしていこう」
少しでもつらい事や気になる事があるのなら、包み隠さずに言ってください」
俺は全身を徹底的に洗ってからマリアお嬢様の後宮に向かった。
後宮に入る時に、もう一度徹底的に身体を洗い、消毒もした。
ここまでやる事に、しかも後宮に入る全ての者に同じ事をやらせるので、周囲の者達はあきれ果てている。
酒好きの連中は、高濃度のアルコールを消毒に使っている事に悪口陰口を言っているようだが、知った事ではない。
マリアお嬢様以上に大切な事などこの世界には何一つないのだ。
「……」
「何故何も言ってくれないのですか、マリアお嬢様。
やはりどこか痛むのではありませんか、侍女頭、マリアお嬢様の主治医はどこだ。
選りすぐりの女医と産婆を後宮に仕えさせていたはずだぞ、何をしている」
「……エドアルド様、約束が違うではありませんか。
わたくしの事はマリアと呼び捨てにしてくださる約束です。
約束を守ってくださらないのでしたら、わたくしは何も話しません。
マリアと呼び捨てにしてくださらない限り、お返事もしませんからね」
「いや、そんな事を言われても、俺はあくまでもマリアお嬢……」
「駄目です、絶対に駄目です、絶対に許しません。
わたくしだってお兄様と呼ばないように気を付けているのですよ。
わたくし達の子供が生まれ、成長したらどうするのですか。
わたくしがお兄様と呼び、エドアルド様がマリアお嬢様と呼んでしまっていたら、子供がおかしく思ってしまうではありませんか。
その所為で子供が変に育ってしまったら、どうするお心算なのですか」
「いえ、それは、その、申し訳ない、考えていなかった」
前世でも今生でも、本当に大切だと思えた人間は、マリアお嬢様とフェデリコ様だけしかいなかった。
今生では孤児だったし、前世でも心から大切だと思った人は一人もいない。
情けない事だと分かっているが、前世の両親を心から大切だと思ったことはない。
前世の倫理や常識や忠孝の考えから、大切いしなければいけないとは思ったが、命を捨ててまで尽くしたいと思った事はない。
前世でも尊敬する人はいたし、今生でも尊敬する人はいる。
女性に関しても、尊敬できる人や私欲の対象はできた人はいた。
だが物語のように、心から愛せる人は遂に現れてくれなかった。
我を忘れてしまうような相手は、両人生を通じてお嬢様だけなのかもしれない。
だからこそ、こんな簡単な事をうっかりとしてしまう。
確かに、両親が心から愛し合っていなくて、主従の関係のようでは、子供の情操教育に悪すぎる。
下手をすれば、マリアお嬢様のために、二人の間にできた子供を殺さなければいけなくなってしまうかもしれないが、そんな事が今の俺にできるのだろうか。
昨日の夢と今の状況を考えると、どれだけ極悪非道に育っても、二人の子供を殺せないかもしれない。
そんな事になってしまったら、王国や属国は大混乱に陥り、家臣領民が塗炭の苦しみを味わう事になってしまう。
「分かったよ、マリア、これからはちゃんと夫婦として暮らしていこう」
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