誇り高い義妹が悪役令嬢呼ばわりされて国外追放となった、俺が黙っているとでも思ったのか、糞王太子。

克全

第49話:公太女の威厳

 公都のソフィアから早馬による緊急連絡が届いた。
 マリアお嬢様が予定通り俺の命令を無視して、ヤコポ・ルピリウス・ロッシを殺す命令をソフィアに下してくれた。
 これで、マリアお嬢様の方が俺よりも権力があると皆が思ってくれる。
 俺は最初からマリアお嬢様に絶対服従すると宣言しているのに、どいつもこいつも信じないから、こういう形で証明しなければいけなくなってしまった。

 確かに、マリアお嬢様の命や名誉にかかわるような事は、誠心誠意説得して一番いいと思われる方法を献策してきたが、一度たりとも命令に逆らった事もなければ、御心を踏みにじるような事もしなかった。
 もしそんな事ができるのなら、マリアお嬢様と婚約などしていない。
 性根の腐った貴族達に叛乱を起こす大義名分など与えなかった。

 別の方法で彼らに危機感を与えて蜂起させ、徹底的に叩き潰していた。
 二方面から外敵が攻め込んでいる時に、家臣に叛乱を起こせるような大義名分を与えて、三方面に敵を作るような事にはなっていない。
 いや、三方面などと言う生易しい状況ではない。
 ローマ帝国の大艦隊が多くの上陸部隊を乗せてやって来る。

 一ケ所に上陸してくれれば、四方面での戦いとはなるが、揚陸に時間がかかるから、公都の叛乱軍を叩いてから向かう事ができるだろう。
 だが、敵に知将がいて、短時間の揚陸を終える事と、多方面に揚陸する事の利点を理解していたら、少数の部隊を短時間に揚陸させる。
 そうなると公国は多方面の敵と戦わなければいけなくなる。
 しかもマルコと十万の兵をフランク王国に派兵した状況でだ。

「エドアルド公子殿下、一旦軍を纏めて公都に引き返されますか」

 俺に気をつかって参謀が声をかけてくれるが、残念ながら的外れだ。
 俺の持つ情報を知らず、今後の方針も聞いていないから仕方がないが、今ここで軍を引き返す必要など全くない。
 公国海軍には公都を出る前にローマ帝国艦隊が攻め込んで来る事も、襲ってくるローマ帝国艦隊に対する迎撃方法も伝えてある。
 ローマ帝国艦隊が揚陸地点に選ぶだろう海岸を守備範囲に持つ都市にも、ローマ帝国艦隊が来襲してきた時の対処方法は教えてある。

 忠誠心と能力のある連中を国土の防衛に派遣してあるから、ローマ帝国に内通している可能性のある城代や部隊長はいない。
 最も忠誠心と能力がある連中は、マリアお嬢様を護る事を最優先に配置した。
 だから敵に知将や猛将がいたとしても、城を落とされる可能性は低い。
 その分、俺やカルロが率いる軍の人材は二段階も三段階も落ちる事になる。
 忠誠心はあるが、知力や武力に問題がある連中ばかりだ。
 俺を想って声をかけてくれた参謀も、忠誠心は間違いないが、知力が劣る。

「大丈夫だ、十分な準備をして来たら、何の心配もいらない。
 それよりもスラヴ族連合とドイル連合王国の領地を切り取るぞ」

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