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水月のショートショート詰め合わせ

水月

少女たちの大いなる作業

イヴリンが伯父から借りたという車は、ガタガタと揺れながら東にまっすぐ進んでいく。曇り空と生い茂る木々を睨みつける。四人とも押し黙った車内は息苦しく、私は窓を開けた。

生ぬるい風。私の真後ろに座っているイーディスも窓を開け、常に隠し持っているタバコを取り出した。お嬢様風の制服とまったく不釣り合いな、手慣れた仕草でタバコに火を点けた。

イーディスの隣のサラは、項垂れたまま動かない。両手を祈るように組んでいる。



運転手のイヴリンが、片手を軽くイーディスの方に向ける。イーディスは何も言わず、吸いかけのタバコを渡した。光が強くなってくる。少し雲が薄くなったようだ。

イーディスがサラの肩を抱き、何かつぶやいている。励ましの言葉か何かをかけているのかと思ったが、二人でくすくすと笑い出した。やっぱり。いつものくだらない話に違いない。首を後ろに傾ける。

「何話してんのよ二人でコソコソと」

「昨日、フェルキン先生から返されたレポートに買い物メモが挟まってたって話」

「何買ってたの」

「それがさ、大量のマスカラとつけ睫毛。あのおじいちゃん先生がよ?」

一拍の間の後、イヴリンが吹き出して、私もサラもイーディスも笑い出す。笑いの増幅がいつまでも止まらない。そうだ。この感じだ。もう10年以上連れ添ってきた幼馴染の私達のいつもの雰囲気。これが正解だろう。

サラが受けた屈辱と、これから抱える苦痛、罪悪感。全て私たち4人で抱えるのだ。この4人であれば、大概の荷物は余裕で持っていられる。持てなくなったら、捨ててしまおう。また、この4人で。

「ねぇ、エルザ、ラジオかけて」

イーディスに頼まれて頷く。軽快なギターの音色が車内に響き渡る。







目的地に到着した私たちは、トランクから麻布で何重にも巻いた、大きくて重い荷物を取り出した。四人がかりで抱えて、波打ち際にその荷物を置く。サラが足で荷物を沖の方に押し転がそうとする。

私もイーディスもイヴリンも、すぐに真似しだした。全員転びそうになって、また抗いがたい笑いの渦が生まれる。

達成感に浸る四人で静かに眺める海の、沖へ沖へと流れていく大きな荷物は、やがて完全に見えなくなった。


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