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水月のショートショート詰め合わせ

水月

あなたのコップ

靄が立ち込める空間で目が覚めた。座ってもたれていた壁はガラスだ。立ち上がり周囲をよく見るが、見事に何も無かった。何となく、壁に指先を触れさせながら歩き続ける。

カツ、コツ、カツン。ガラスの底は足音がよく響く。 壁は先が見えないほどの高さだ。わずかに内側に湾曲している。

もしかしたら。5分ほど歩いた所で、羽織っていた黒いジャケットをその場に置いた。壁に沿うように、走る。息が切れ、もう投げやりに歩いていた時に、自分のジャケットが視界に入った。拾ったジャケットを両手で握り締める。

ここはまるで、コップだ。

そう思った途端、水滴が落ちてきた。徐々に水滴は増え、大雨になった。必死にガラスを叩いて助けを呼ぶが、誰もこない

じわじわと水位は上がって、私の足先はコップの底を離れた。足をめちゃくちゃに動かして、なんとか呼吸を維持する。

どこまでも、いつまでも私の体は水に押し上げられていく。一番上に到達してしまったら。どうすれば。苦しい。誰か。たすけ





乾いた藁の匂い。すばやく起き上がり、何度も瞬きをする。一面に広がる山羊の群れ。ぼんやり残る恐怖。激しく動く心臓。何回も、深呼吸する。

少し曇った空は高く、穏やかな風が吹いた。

遠くから私を呼ぶ高い声がする。

誰だろう?

ふかふかした藁のクッションから地面に飛び降りる。



カツンッと、大きな音がした。

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