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水月のショートショート詰め合わせ

水月

ディープ・レイヤーにかえる

体を捻らせながら、壮大に浮上していくマッコウクジラとすれ違う。淡い光で浮かび上がるそのシルエットは、戦艦のようだ。

彼らは肺を空っぽにすることで、凄まじい深海の水圧に耐えているらしい。さらに、全身の筋肉に酸素を貯めておけるのだ。良く出来ている。

「この深海シャトルKR8200は、あと30分でピハトントゥ・コロニー駅に到着します。それまで、引き続き深海の景色をお楽しみください」

落ち着いた女性の声が響き渡る。5年ぶりの帰省という現実を思い出して、落ち着かなくなる。両親は少し老けて、弟は背が高くなっているだろう。お土産、喜んでくれるだろうか。ご近所のタレ目の優しい大型犬、ともちゃんにも会いたい。今も元気に、公園を散歩しているだろうか。



窓の外は段々暗くなる。無数の、鮮やかな虹色の帯が浮上してきた。歓声が上がる。珍しい。深海魚の大群だ。全身を誇らしげに発光させて、私とは逆方向に進んでいく。また会おう。

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