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水月のショートショート詰め合わせ

水月

プラネットタートルスフィア


強風にさらわれまいと、近くにあった鉄の瓦礫にしがみつく。砂が舞い上がり、暗闇がやってきた。また長い時間、じっとしていなくてはいけないのか。退屈な時間の始まりに、うんざりした。




虚無そのものという広い空間を眺め続けていると、遠くで粒が光った気がした。その粒に意識を集中させる。徐々に大きくなる粒は、最終的に僕の目の前に落ちてきた。

重低音を響かせて、意外に静かに墜落してきたその光の塊は、瞬時に小型化した。ちょうど良い強さの光になった塊。好奇心が抑えられず、その光に近づく。

亀だ。光る亀。両腕で抱えるサイズの、立派な亀だ。しゃがんで観察していると、亀が僕を凝視してきた。

「ああ、私まだ生きてますか」

亀が流暢にしゃべり出した。面白い。

「生きてる。たぶん」

「ああ、良かった。良かった……受け止めてくださってありがとう」

「僕のおかげじゃないよ。君がここに落ちたのは偶然だよ」

「いいえ、あなたが私を避けないでいてくれたからです。ありがとう。私はここから遠い場所で生まれましたが、邪魔者扱いされて外に放り投げられたのです。もうずっと、何も無い空間を寂しく漂っていました」

「そうなの?……僕はかなり長い間ここにいる気がするけど、ここがどういう所なのか、まったく知らないんだ。この瓦礫の山以外の場所が、暗い空の中にあるの?」

「ええ。たくさんあります。しかし、私やあなたが居られる場所は限られますが。あなたは私よりも自由に動ける。探検してみてはいかがですか?私もお供させてください。私は灯として、あなたをお助けしましょう」




僕は亀と一緒に、思い切って真っ暗闇の空に飛び込んだ。臆病だった僕はどこにいってしまったのか。興奮が不安や恐怖を塗りつぶしていく。

広大な無の空に、僕と亀はゆらゆらと揺らされる。良い気分で、うとうとして、僕と亀は口数が少なくなる。のんびり漂っていると、暗いだけじゃないことに気付いた。たまに、視界の端で薄い光の旗が揺らめく。

「ね、あの光の旗はなんだろう」

お腹に乗せていた亀に尋ねてみる。僕の指さした場所を見た亀は、飛び上がった。

「あれは……」

しばらく呆然としていた亀は、僕に帰ろうと提案した。亀の必死な様子に圧倒された僕は、帰ることにした。しかし、後ろから光の旗が付いてきているような気がする。

速く、速くと、亀を片手に抱えながら手足をバタバタと動かす。元の場所が見えてきた時、違和感に気付いた。ずっと抱えていた亀の光が、弱くなっている。

「どうしたの?」

進みながら呼びかけるが、亀は何もしゃべらない。立ち止まると、一気に亀は小さい粒になった。指先に乗るその粒は、輝いている。

指先から転げ落ちた。あっと僕が声を出すと、亀が落ちた先から、瞬時に白い空間が展開した。暗い場所は瞬時に消えて、白色がどんどん広がっていく。

見渡せば、僕の周りには輝く球体がたくさん存在していた。燃えさかる球体。真っ青な球体。輪っかのようなものが付いている球体。僕は悟った。もう、寂しくならずに済むのだと。

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