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捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~

天野ハザマ

武具精霊2

 そして、それからしばらくして。
 村の端で新しい家を建てていた雄太の近くに、全身鎧の集団が整列して走ってくるのが見えた。
 ガシャン、ガシャン、と実に重々しい音を立てて走ってくる彼等が誰かを察した雄太は、積もうとしていた石を置いて全身鎧の集団へと向き直る。

「全員、ユータ殿に敬礼!」
「あー、さっきの。そういや準備は出来てるって言ってたもんな」 

 どうやら鎧にしっかりと宿ったらしいと雄太は納得しながら頷く。
 こうして見ると、普通に全身鎧の騎士のようである。

「はい。我等が宿るものとしては最上の鎧です」
「そりゃ良かった……その中って、やっぱり空なのか?」
「ええ」

 言いながらエレメンタルアーマーがバイザーを上げると、そこには何も入っていない空っぽの空間がある。

「おおー……なんか凄いな」
「万が一この鎧が壊される事があっても、我等がどうにかなることはありません。そこはご安心を」
「え? あ、ああ」

 なんでそんな事を言うんだろうという疑問と、それなら安心だという安堵が雄太の中に広がって……それを察したかのようにエレメンタルアーマーは「セージュ様の指示です」と教えてくれる。

「ユータはこういう事を人知れず気にするだろうから、聞かれる前に教えておくのです……と。そう仰っておられました」
「……そっか」

 確かにそうかもしれない、と雄太は思う。
 エルウッドの本体が神樹エルウッドであるように、エレメンタルアーマー達も宿った鎧が本体であるなら……壊されたらどうなるのだろうと気になっていたのは間違いないだろう。

「セージュには後でお礼を言っとくよ」
「ええ、是非そうしてあげてください。それでは我等は配置につきますのでこれにて」

 そう言うとエレメンタルアーマー達は走っていく。
 微妙に行く方向が違っているのは、何体かは神殿の警備につくからなのだろう。

「……なんかこう、最初に思ってた光景とは色々違うなあ」
「何がです?」

 雄太の呟きを耳聡く拾ったセージュが飛んできて、雄太は頭の上のセージュに「うーん」と唸ってみせる。

「なんて言えばいいんだろうな。前に話したと思うけどさ、此処ってそもそも……フェルフェトゥを信仰する村の予定だったんだよ」
「そういえば、そんな事言ってたですね」

 そう、雄太も最初はそうなるだろうな……と思ってたのだ。
 人が集まって、なんか祭祀的な事をして…とか、そんな想像をしたこともあった。
 それがどうだろう、現状は全く違う。

「気が付いたら人間は俺とコロナだけで、他は全員邪神と精霊だろ? 今日ので精霊の村みたいになっちゃってるけど」
「精霊の村……いい響きなのです」

 満足げに頷くセージュに、雄太は軽く咳払いすると「まあ、それはともかく」と仕切り直す。

「まあ、とにかく最初の目標とは全然違うけどさ。俺はこれでもいいんじゃないかと思ってるし……なんとなく、フェルフェトゥも同じ気持ちだと思うんだよな」
「どうしてです?」
「ん? んー……」

 これという理由があるわけではない。
 それでもあえて何かそう思った理由があるとするならば。

「なんとなく、かなあ。俺がフェルフェトゥの事を分かってるだなんて自惚れてる気もないし」
「そうなのです?」
「ん、まあ……な」

 フェルフェトゥとはミスリウム村の住人の中でも一番長い付き合いではあるが、一番「底の見えない」相手だと雄太は思っている。

 優しいとは思う。
 面倒見がいいとは思う。
 ちょっとエスなところはあると思う。
 たぶん嫌味とか罵倒のバリエーションも唸るほどあるだろうな、とは思う。
 けど、それを含めて……雄太はフェルフェトゥを好ましいと思っている。
 いるが……雄太に見えているフェルフェトゥがその全てであるとも思っていない。

 たとえば、バーンシェルは分かりやすい。
 彼女は直情的で、苛烈で、容赦がなく……同じくらい情け深い。

 ベルフラットは「ヤバい」の一言で済む。
 地球であればお巡りさんのところに駆け込むくらいにはヤバい部分がある。

 ガンダインは村に居ない事が多いのでよく分からない。

 テイルウェイは常識人で、人格者だ。

 セージュは……省エネモードでも元の姿でも、幼い少女のような部分がある。
 それでいて理知的な部分もあるので、ミスリウム村のメンバーの中ではかなりミステリアスだろう。

 コロナは真面目だ。少なくとも雄太はそう思っている。
 コロナが聞けば喜ぶだろうが、それはさておき。

 そうした彼等、彼女等と比較して……フェルフェトゥは、まるで深い海の底のように見通せない。
 今見えているものが全てのようでもあるし、その全てが違うような気もする。
 だからこそ気になる……のかもしれないと雄太は思う。
 それが単純な興味なのか、それ以外の何かであるのかは分からないのだけれども。

「ねえねえ、ユータ」
「ん?」

 セージュに髪を引っ張られ、雄太は思考の海から帰還する。

「ユータは私の事、全部分かってくれてるですよね?」
「え? ど、どうかな。女の子はミステリアスだっていうし……なあ」
「みすてりあすって何ですか?」
「えー……と。神秘的、みたいな?」

 私は神秘的です! と喜ぶセージュを頭に乗せたまま、雄太は笑う。
 この先どうなるのかは分からない。
 けれど、きっとこのままでいいのだろう……と。
 そう考えながら、雄太は作業を再開した。

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