捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
ただいま魔具開発中3
数日後、ミスリウム村の魔具展示部屋。
そんな風に名付けた部屋では今、雄太がバーンシェルと一緒に部屋の隅で動く円筒系の魔具を見つめていた。
小さなコップ程度の大きさの魔具は、総ミスリル製。キラキラと銀色に光るそれは冷暖房(仮)である。
「……大丈夫なんだろうな?」
「試作だと上手くいったんだ。大丈夫だよ」
「ならいいんだがよ。魔力伝導率の違いは出力にも影響するぞ。お前の試作ってな、確か石だろ? 40倍以上違うって分かってるか?」
雄太はバーンシェルにニコリと笑いかけると、冷や汗を流しながら「ちょっと待ってくれ」と言いながら冷暖房(仮)に近づいていく。
「……しっかりしてくれよ。いくら何でも一瞬で蒸し焼きになったら助けらんねえからな?」
「分かってるって。ちょっと出力下げるだけだから……」
魔法式を入れ直している雄太の背中を見て溜息をつくバーンシェルだが、そこにドアを開けてフェルフェトゥが顔を出す。
「調子はどう?」
「あ? 見ての通りだよ。危うく人間の蒸し焼きが出来るとこだ」
「あらあら」
クスクスと笑うフェルフェトゥだが、その目の奥の光は真剣そのものだ。
「当然、ちゃんと助けるのよね?」と無言で伝えてくるフェルフェトゥに、バーンシェルは肩をすくめる。
「そんなに心配ならずっとついてりゃいいだろうがよ」
「信用するのも成長を促す一助でしょう?」
「信用ねえ」
任せたわよ、と言って去っていくフェルフェトゥからすぐに視線を外すと、バーンシェルは再度の溜息をつきながら雄太へと近づいていく。
どうやら魔法式の再注入に熱中していて、先程の事には気付いてもいないらしい。
「おい」
「うおわあっ!」
軽く肩を叩くと雄太は驚いたように跳ね上がり、驚かすつもりなどなかったバーンシェルは思わず目を丸くする。
「な、ななな……なんだ!?」
「いや、どうだって聞こうとしただけなんだが……」
言いながらバーンシェルは先程の信用が云々とかいう言葉を思い出す。
「集中してるとこ、悪かったな」
「ああ、いや。別にいいよ。どうものめり込むと他が見えなくなっていけないな」
「そりゃ職人の気質だ。悪いこっちゃねえよ」
そう言って笑うバーンシェルに雄太も釣られて笑みを浮かべ、冷暖房(仮)を持ち上げる。
「そうそう、出来たぞ。コレで絶対問題なく動く」
「ほー、絶対ときやがったか。アタシ達だって絶対なんて言葉使わねえぞ」
「え、そうなのか?」
確か元の世界に居た頃は「たぶんじゃねえ、絶対と言えるようになってこい」とか言われたものだが……などと雄太は思い出すが、バーンシェルは「当たり前だろ」と呆れたように返す。
「いいか、絶対っつーのは「偶発的事態含む、想定外なんてものが存在しない」事を言うんだ。でもって、その可能性は潰せるもんじゃねえ」
「そうかもしれないけどさ……」
「絶対なんてものがねえから改良とか進化って言葉があんだよ。覚えとけ」
そう言ってバーンシェルが雄太の肩を叩いて。
雄太は少し考えた後に「ああ」と頷く。
「それじゃ、えーと……これで大丈夫だ」
「ほんとかあ?」
「ああ、たぶんな。出力も絞ったから、失敗しても死なない」
「おう、そりゃ安心だ」
からかうように言うバーンシェルに雄太も冗談交じりに返す。
「おし、んじゃ起動するぞ」
「ああ。でも、俺が起動するんじゃなくていいのか?」
「言ってんだろ。お前以外に使えなきゃどうしようもねえ」
そう、稀にだが本人の魔力にしか反応しない魔具というものが存在する。
それはそういう風に魔力式を注入して出来上がる事もあるが、偶然そうなってしまうこともある。
自分で使うのであればそれで問題ないかもしれないが、交易品として使うのであれば駄目だ。
「えーと……暖房起動」
バーンシェルの発したワードに反応し、冷暖房(仮)から風が吹き始める。
天井に向けられた穴からは想定した通りの暖かい風が吹き、部屋の中でゆっくりと風を循環させ始める。
「お、イイ感じじゃないか?」
「そうだな。これなら風が当たって不快になることもねえ」
雄太としてはそれでも良かったのだが、扇風機でもなんでも風が当たるのを嫌がる人がいることを思い出したのだ。
その為元の世界に存在した循環だかなんだかというものをイメージしてみたのだが……どうやら、上手くいったようだ。
「おし、それじゃ冷房起動」
「えっ? あ!」
バーンシェルが次のワードを唱えると、暖かい風の吹いていた冷暖房(仮)から霧のようなものが噴き出し始める。
「げっ……」
「暖房停止、冷房停止」
即座にワードを唱えて冷暖房(仮)を停止させたバーンシェルは、ニヤニヤと笑いながら雄太をポンと叩く。
「……出力調整して、ほんとによかったな?」
「あー……そうか。停止する前にもう片方起動すると、魔法式が混ざるのか……」
「そういうこったな。回避方法は分かるか?」
「2つの魔法式が同時起動しないようにする為の魔法式を入れるか……あるいは冷房と暖房でもう完全に分離するかだな」
「後者をお勧めするぜ。その方が楽だかんな」
そんな助言をしてくれるバーンシェルに、雄太は「そうだな……」と力なく呟く。
誤作動まで視野に入れると、確かにその方がいいかもしれない。
「で、ここにソレと同じ物がもう一つあるんだがな?」
ここまでの展開を予測してたのだろうか。
完璧な対応を見せるバーンシェルに雄太は「予想してたなら教えてくれよ……」と、そんな事を言うくらいしかできなかった。
そんな風に名付けた部屋では今、雄太がバーンシェルと一緒に部屋の隅で動く円筒系の魔具を見つめていた。
小さなコップ程度の大きさの魔具は、総ミスリル製。キラキラと銀色に光るそれは冷暖房(仮)である。
「……大丈夫なんだろうな?」
「試作だと上手くいったんだ。大丈夫だよ」
「ならいいんだがよ。魔力伝導率の違いは出力にも影響するぞ。お前の試作ってな、確か石だろ? 40倍以上違うって分かってるか?」
雄太はバーンシェルにニコリと笑いかけると、冷や汗を流しながら「ちょっと待ってくれ」と言いながら冷暖房(仮)に近づいていく。
「……しっかりしてくれよ。いくら何でも一瞬で蒸し焼きになったら助けらんねえからな?」
「分かってるって。ちょっと出力下げるだけだから……」
魔法式を入れ直している雄太の背中を見て溜息をつくバーンシェルだが、そこにドアを開けてフェルフェトゥが顔を出す。
「調子はどう?」
「あ? 見ての通りだよ。危うく人間の蒸し焼きが出来るとこだ」
「あらあら」
クスクスと笑うフェルフェトゥだが、その目の奥の光は真剣そのものだ。
「当然、ちゃんと助けるのよね?」と無言で伝えてくるフェルフェトゥに、バーンシェルは肩をすくめる。
「そんなに心配ならずっとついてりゃいいだろうがよ」
「信用するのも成長を促す一助でしょう?」
「信用ねえ」
任せたわよ、と言って去っていくフェルフェトゥからすぐに視線を外すと、バーンシェルは再度の溜息をつきながら雄太へと近づいていく。
どうやら魔法式の再注入に熱中していて、先程の事には気付いてもいないらしい。
「おい」
「うおわあっ!」
軽く肩を叩くと雄太は驚いたように跳ね上がり、驚かすつもりなどなかったバーンシェルは思わず目を丸くする。
「な、ななな……なんだ!?」
「いや、どうだって聞こうとしただけなんだが……」
言いながらバーンシェルは先程の信用が云々とかいう言葉を思い出す。
「集中してるとこ、悪かったな」
「ああ、いや。別にいいよ。どうものめり込むと他が見えなくなっていけないな」
「そりゃ職人の気質だ。悪いこっちゃねえよ」
そう言って笑うバーンシェルに雄太も釣られて笑みを浮かべ、冷暖房(仮)を持ち上げる。
「そうそう、出来たぞ。コレで絶対問題なく動く」
「ほー、絶対ときやがったか。アタシ達だって絶対なんて言葉使わねえぞ」
「え、そうなのか?」
確か元の世界に居た頃は「たぶんじゃねえ、絶対と言えるようになってこい」とか言われたものだが……などと雄太は思い出すが、バーンシェルは「当たり前だろ」と呆れたように返す。
「いいか、絶対っつーのは「偶発的事態含む、想定外なんてものが存在しない」事を言うんだ。でもって、その可能性は潰せるもんじゃねえ」
「そうかもしれないけどさ……」
「絶対なんてものがねえから改良とか進化って言葉があんだよ。覚えとけ」
そう言ってバーンシェルが雄太の肩を叩いて。
雄太は少し考えた後に「ああ」と頷く。
「それじゃ、えーと……これで大丈夫だ」
「ほんとかあ?」
「ああ、たぶんな。出力も絞ったから、失敗しても死なない」
「おう、そりゃ安心だ」
からかうように言うバーンシェルに雄太も冗談交じりに返す。
「おし、んじゃ起動するぞ」
「ああ。でも、俺が起動するんじゃなくていいのか?」
「言ってんだろ。お前以外に使えなきゃどうしようもねえ」
そう、稀にだが本人の魔力にしか反応しない魔具というものが存在する。
それはそういう風に魔力式を注入して出来上がる事もあるが、偶然そうなってしまうこともある。
自分で使うのであればそれで問題ないかもしれないが、交易品として使うのであれば駄目だ。
「えーと……暖房起動」
バーンシェルの発したワードに反応し、冷暖房(仮)から風が吹き始める。
天井に向けられた穴からは想定した通りの暖かい風が吹き、部屋の中でゆっくりと風を循環させ始める。
「お、イイ感じじゃないか?」
「そうだな。これなら風が当たって不快になることもねえ」
雄太としてはそれでも良かったのだが、扇風機でもなんでも風が当たるのを嫌がる人がいることを思い出したのだ。
その為元の世界に存在した循環だかなんだかというものをイメージしてみたのだが……どうやら、上手くいったようだ。
「おし、それじゃ冷房起動」
「えっ? あ!」
バーンシェルが次のワードを唱えると、暖かい風の吹いていた冷暖房(仮)から霧のようなものが噴き出し始める。
「げっ……」
「暖房停止、冷房停止」
即座にワードを唱えて冷暖房(仮)を停止させたバーンシェルは、ニヤニヤと笑いながら雄太をポンと叩く。
「……出力調整して、ほんとによかったな?」
「あー……そうか。停止する前にもう片方起動すると、魔法式が混ざるのか……」
「そういうこったな。回避方法は分かるか?」
「2つの魔法式が同時起動しないようにする為の魔法式を入れるか……あるいは冷房と暖房でもう完全に分離するかだな」
「後者をお勧めするぜ。その方が楽だかんな」
そんな助言をしてくれるバーンシェルに、雄太は「そうだな……」と力なく呟く。
誤作動まで視野に入れると、確かにその方がいいかもしれない。
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