捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
続アラサークエスト9
朝になり木々の間から光が降り注ぎ始めれば、習慣で雄太が目を覚ます。
こちらの世界に来てからすっかり健康的な習慣が身に着いた雄太だが、体内時計も正常なようだ。
「ん、んん……おはよう」
「コケッ」
「おはようなのです」
「おはよう、ユータ」
鞄から取り出したパンをジョニーに咥えさせると、雄太は自分の分のパンを齧りながら立ち上がり身体を伸ばす。
「昨夜は見張り任せて悪かったな」
「気にしなくていいのです。ユータにはそれ引っ張る役目がありますし」
「そういうことだね。好きでやってるんだから気にしない」
「そういうわけにもいかないだろ……」
セージュとテイルウェイに困ったような顔を向けた雄太は「あれ?」と声をあげる。
「……そういえば二人とも、なんかちょっと仲良くなったか?」
「そんなわけねーのです」
「精々僕が君を取らないって理解して貰えたくらいじゃないかなあ」
雄太の言葉をセージュとテイルウェイが即座に否定して、雄太は「そうか……?」と首を傾げる。
しかし2人がそう言うならそうなんだろうと雄太は自分を納得させ、パンの残りを呑み込む。
「よし、それじゃ今日中に森抜けちゃうか」
「コケッ」
雄太が縄を引っ張るとジョニーは枝の後ろに移動し、テイルウェイが全員を先導するように一番前を歩く。
そしてセージュは今日は枝と縄に魔力を流すべく雄太の引っ張る枝に乗っかって。
……というフォーメーションを取ろうとしたところで。
全員の視線が枝の上に集まった。
「……なあ、アレって」
「あー。昨夜飛んできてね。敵意も無さそうだから放っておいたんだけど」
「オスなのです」
テイルウェイが笑い、セージュがどうでもいい事を報告する。
枝の上に鎮座していたもの。それはちょっとした車程度には巨大なクワガタムシだった。
種類的にはオオクワガタとか、そんな辺りが似ているだろうか?
立派なハサミを持ったクワガタムシは、重ねた枝の上で気持ちよさそうに……たぶん気持ちよさそうに休んでいる。
「どうすんだ? あれ。どいてくれって言ったらどいてくれるかな」
「さあ……分かんないのです」
「ていうかこの前のカブトムシの時も思ったけど、甲殻系の虫って大きくなると超強そうだよな……」
あんなデカいハサミで挟まれたらとんでもない事になりそうだが……いや、しかしクワガタムシのハサミは切るんじゃなくて文字通りに挟むんだっただろうか?
昔クワガタムシがカブトムシを挟んで投げ飛ばす動画を見たな……とか思いながら、雄太はクワガタムシを見上げる。
「あー……君。俺達それ森の外に運ぶからどいてほしいんだけど……いいかな?」
雄太がクワガタムシにそう問いかけると、クワガタムシは雄太に気付いたように触角を僅かに動かし始める。
「お、通じたかな?」
明るい声で言う雄太の期待とは裏腹に、クワガタムシは足を動かしてスペースを空けるかのようにジリジリと後ろに下がっていく。勿論、飛び立つ様子はない。
「……確かにどいてはくれたですね」
「飛んでくれって言った方が良かったか……?」
会話って難しいな、などと言いながら雄太が顎をさすって……ついに髭が生えないようになってしまったのだが、これも聖水による肉体改造の一環らしい……まあ、それはともかく顎をさすっていた雄太は、クワガタムシから何かが自分に向けて放たれた事に気付いた。
「ん……? なんだこれ」
細い光の線のようなソレは雄太の手前で静止しており、雄太が身体をずらすと方向を変えてついてくる。
微かに明滅するソレに雄太が指で触れると……一気に何かが繋がったような感覚を感じた。
「あ、これってまさか」
「……魔獣契約なのです」
「そのニワトリと契約してるから気付いてると思ったけど……説明してなかったのかい?」
「そういや忘れてたのです」
そんな会話をセージュとテイルウェイがし始めるが、ギチギチと嬉しそうにハサミを動かすクワガタムシの姿に、雄太も遅れながら現状を理解する。
「あー……あれか。ひょっとして契約したくてそこに居たのか?」
「ギー」
「喋れるのか。いやまあ、魔獣だもんなあ」
クワックワッとか反応に困る鳴き声じゃなくてよかったな……とくだらない事を雄太は呟くが、とにかくクワガタムシを載せたまま引っ張るわけにもいかない。
「じゃあ、えーと……鋏丸でいいか。そこどいてくれるか? それ運ぶんだよ」
「ハサミマル?」
「なんかそんな感じだろ? 武士っぽいし」
「ブシってなんです?」
「あ、そこからか」
雄太が武士についてどう説明したもんかと悩んでいる内に、鋏丸は羽を広げて枝から飛び上がり……雄太達の上でホバリングする。
「あれ? まさかこっちに降りてくるつもりかな」
雄太がセージュを抱えて後ろ足で下がっていくと、その空いたスペースに鋏丸が舞い降りる。
「……ひょっとして、お前が引っ張るつもりなのか?」
「ギイ」
「いや、いいけどさ。そういえばクワガタって何食べるんだ……? ゼリーなんかこっちにはないし……樹液? いや、魔獣にとって食事は趣味なんだったか?」
「魔獣は雑食なのですよ。ジョニーと同じで大丈夫なのです」
「あー、そうなのか……」
それはそうと、鋏丸の大きい身体の何処に荷物を括り付ければいいのか。
「……とりえあずまたその辺の蔓で縄伸ばすか……」
帰ったらバーンシェルに何か専用の器具でも作ってもらった方がいいかもしれない。
そんな事を考えながら、雄太は近くの木を見回し始める。
こちらの世界に来てからすっかり健康的な習慣が身に着いた雄太だが、体内時計も正常なようだ。
「ん、んん……おはよう」
「コケッ」
「おはようなのです」
「おはよう、ユータ」
鞄から取り出したパンをジョニーに咥えさせると、雄太は自分の分のパンを齧りながら立ち上がり身体を伸ばす。
「昨夜は見張り任せて悪かったな」
「気にしなくていいのです。ユータにはそれ引っ張る役目がありますし」
「そういうことだね。好きでやってるんだから気にしない」
「そういうわけにもいかないだろ……」
セージュとテイルウェイに困ったような顔を向けた雄太は「あれ?」と声をあげる。
「……そういえば二人とも、なんかちょっと仲良くなったか?」
「そんなわけねーのです」
「精々僕が君を取らないって理解して貰えたくらいじゃないかなあ」
雄太の言葉をセージュとテイルウェイが即座に否定して、雄太は「そうか……?」と首を傾げる。
しかし2人がそう言うならそうなんだろうと雄太は自分を納得させ、パンの残りを呑み込む。
「よし、それじゃ今日中に森抜けちゃうか」
「コケッ」
雄太が縄を引っ張るとジョニーは枝の後ろに移動し、テイルウェイが全員を先導するように一番前を歩く。
そしてセージュは今日は枝と縄に魔力を流すべく雄太の引っ張る枝に乗っかって。
……というフォーメーションを取ろうとしたところで。
全員の視線が枝の上に集まった。
「……なあ、アレって」
「あー。昨夜飛んできてね。敵意も無さそうだから放っておいたんだけど」
「オスなのです」
テイルウェイが笑い、セージュがどうでもいい事を報告する。
枝の上に鎮座していたもの。それはちょっとした車程度には巨大なクワガタムシだった。
種類的にはオオクワガタとか、そんな辺りが似ているだろうか?
立派なハサミを持ったクワガタムシは、重ねた枝の上で気持ちよさそうに……たぶん気持ちよさそうに休んでいる。
「どうすんだ? あれ。どいてくれって言ったらどいてくれるかな」
「さあ……分かんないのです」
「ていうかこの前のカブトムシの時も思ったけど、甲殻系の虫って大きくなると超強そうだよな……」
あんなデカいハサミで挟まれたらとんでもない事になりそうだが……いや、しかしクワガタムシのハサミは切るんじゃなくて文字通りに挟むんだっただろうか?
昔クワガタムシがカブトムシを挟んで投げ飛ばす動画を見たな……とか思いながら、雄太はクワガタムシを見上げる。
「あー……君。俺達それ森の外に運ぶからどいてほしいんだけど……いいかな?」
雄太がクワガタムシにそう問いかけると、クワガタムシは雄太に気付いたように触角を僅かに動かし始める。
「お、通じたかな?」
明るい声で言う雄太の期待とは裏腹に、クワガタムシは足を動かしてスペースを空けるかのようにジリジリと後ろに下がっていく。勿論、飛び立つ様子はない。
「……確かにどいてはくれたですね」
「飛んでくれって言った方が良かったか……?」
会話って難しいな、などと言いながら雄太が顎をさすって……ついに髭が生えないようになってしまったのだが、これも聖水による肉体改造の一環らしい……まあ、それはともかく顎をさすっていた雄太は、クワガタムシから何かが自分に向けて放たれた事に気付いた。
「ん……? なんだこれ」
細い光の線のようなソレは雄太の手前で静止しており、雄太が身体をずらすと方向を変えてついてくる。
微かに明滅するソレに雄太が指で触れると……一気に何かが繋がったような感覚を感じた。
「あ、これってまさか」
「……魔獣契約なのです」
「そのニワトリと契約してるから気付いてると思ったけど……説明してなかったのかい?」
「そういや忘れてたのです」
そんな会話をセージュとテイルウェイがし始めるが、ギチギチと嬉しそうにハサミを動かすクワガタムシの姿に、雄太も遅れながら現状を理解する。
「あー……あれか。ひょっとして契約したくてそこに居たのか?」
「ギー」
「喋れるのか。いやまあ、魔獣だもんなあ」
クワックワッとか反応に困る鳴き声じゃなくてよかったな……とくだらない事を雄太は呟くが、とにかくクワガタムシを載せたまま引っ張るわけにもいかない。
「じゃあ、えーと……鋏丸でいいか。そこどいてくれるか? それ運ぶんだよ」
「ハサミマル?」
「なんかそんな感じだろ? 武士っぽいし」
「ブシってなんです?」
「あ、そこからか」
雄太が武士についてどう説明したもんかと悩んでいる内に、鋏丸は羽を広げて枝から飛び上がり……雄太達の上でホバリングする。
「あれ? まさかこっちに降りてくるつもりかな」
雄太がセージュを抱えて後ろ足で下がっていくと、その空いたスペースに鋏丸が舞い降りる。
「……ひょっとして、お前が引っ張るつもりなのか?」
「ギイ」
「いや、いいけどさ。そういえばクワガタって何食べるんだ……? ゼリーなんかこっちにはないし……樹液? いや、魔獣にとって食事は趣味なんだったか?」
「魔獣は雑食なのですよ。ジョニーと同じで大丈夫なのです」
「あー、そうなのか……」
それはそうと、鋏丸の大きい身体の何処に荷物を括り付ければいいのか。
「……とりえあずまたその辺の蔓で縄伸ばすか……」
帰ったらバーンシェルに何か専用の器具でも作ってもらった方がいいかもしれない。
そんな事を考えながら、雄太は近くの木を見回し始める。
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