捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
続アラサークエスト3
走る。荒野をジョニーが走る。
人が走るよりもずっと速く、荒野を駆け抜けていく。
雨さえ降らないこの場所はカラカラと乾いていて、砂埃がもうもうと舞い上がる。
雄太とセージュ、そしてジョニー。
ジョニーを「1人」として数えるかは微妙なところなので、とりあえず二人旅。
小さいセージュは雄太も然程気を遣わなくていいので、本当に気軽な旅だ。
「やー、やっぱりジョニーに乗ると速いな」
見えてくる世界樹の森を眺め、雄太は上機嫌な声をあげる……が、同じように上機嫌だったセージュが突如警戒するようにジョニーの頭の上へと移動する。
「む、むむ……!」
「どした?」
「あそこに変なのがいるのです!」
「変なの?」
言われて雄太が前方を見てみると……確かに、森の入り口の辺りに何か白い塊がある。
まさかまたモンスターか、と考えて。しかしすぐにそうではない事に気付く。
「あ! あれって……」
辿り着いた世界樹の森の入り口。
そこで木にもたれてグウグウとイビキをたてていたテイルウェイを見つけ、雄太は「おーい」と声をかける。
雄太達が近づいても全く目を覚ます様子を見せなかったテイルウェイだが、流石に呼びかけられると気付くのかパチリと目を開ける。
「んん……? おや、誰が僕に声をかけるのかと思えば。久しぶりだね、ユータ」
「ああ、久しぶりテイルウェイ」
人懐っこい笑顔を向けてくるテイルウェイに雄太も笑顔で返すと、テイルウェイはゆっくりと立ち上がる。
「今日はどうしたんだい? またこの森に用事なのかい?」
「ああ、今回は木の枝とかを拾いに来たんだ」
「こら邪神、ユータは私のですよ!」
早速テイルウェイを威嚇するセージュだが、テイルウェイは笑顔でそれを受け流す。
「やあ、世界樹の精霊。別に僕はユータが自分のだって言った覚えはないよ?」
「ケッ、どうだか分かんねーのです」
「おいおい、セージュ……」
人格的にまともなテイルウェイであろうと、セージュが気に入る対象にはならないらしい。
雄太は困ったようにテイルウェイをチラリを見るが、テイルウェイは笑顔で返してくる。
「まあ、神と精霊の確執は根深いからね。でもまあ、ユータの前でケンカするのはよさないかい?」
「む」
正論を言われセージュは嫌そうな顔をするが……やがて「まあ、仕方ねーのです」と答える。
「流石だな、テイルウェイ」
「いや、僕は普通の事しか言ってないけど……なんだか苦労してそうだね?」
「ハハ……」
気の毒そうな視線を向けられて雄太は思わず乾いた笑いが漏れるが、そこでふと思い出したように「そういえば」と声をあげる。
「此処に来る前にモンスターと会ったぞ」
「ああ、そういえば出るようになったね。見つけたら間引いてるけど、場所が場所だからなあ。結構強力なのがこれからも生まれるかもしれないね」
「テイルウェイも会ったのか?」
雄太がそう聞くと、テイルウェイは肩をすくめてみせる。
「まあね。僕が昼寝から起きたら、ビッグゴーレムがウロウロしてた事もあったし」
消し飛ばしたけど、と言うテイルウェイに、雄太は「ああ、そっか」と頷く。
「テイルウェイは神だもんな。モンスターにも見えないのか」
「ま、そういうことだね。僕は基本的に神霊化してるから、ユータみたいなのとか、そこの精霊みたいなのとか……あとはまあ、同族だけだね。見えるのは」
「ん? そうすると……」
「そういうこと。この子に僕は見えてないよ」
言いながらテイルウェイはジョニーの前で手をヒラヒラさせるが、ジョニーは反応せず……しかし、突然その存在に気付いたかのように「コケッ!?」と声をあげる。
「で、こうして実体化すると見えるってわけ」
「なるほどなあ」
突然現れたテイルウェイを警戒するかのように距離を取るジョニーに再度ひらひらと手を振ると、テイルウェイは雄太へと振り返る。
「ま、気を付けてね。世界樹の森は性質上モンスターは出ないけど、魔獣は出るからさ」
「性質上……?」
「魔力が淀まないからね。ま、気になるんなら、そこの精霊に聞けばいいよ」
そんな事を言うテイルウェイに、雄太は思わず「一緒に来ないのか?」と聞いてしまう。
「え? 僕がかい?」
「テイルウェイの権能の話は聞いたけどさ。世界樹の森の中に一緒に行く程度で何かあるってわけでもないんだろ?」
「まあ、ね」
テイルウェイの権能は、やがて破滅に至る発展。
頼りきりになれば、やがて周りを巻き込んで破滅するようになる。
けれど、この小さな旅はそういうものではない。
「旅は道連れ世は情け、だったかな」
「何だい、それ?」
「えーと、旅は一緒に行く人がいると楽しくて、思いやりとかあると世の中イイ感じ……みたいな意味だったかな?」
なんか違う気もするが、そんな感じの意味だったよな……などと思い出しながら雄太はそう答える。
「旅は道連れ、か……」
その言葉を反芻していたテイルウェイは、やがて「ははっ」と小さく笑うと何度か頷く。
「うん、うんうん。いい言葉だね。旅は道連れ。なら僕も君の「旅」に少しだけ同行しようかな?」
「ああ、よろしくテイルウェイ」
「うん、よろしくユータ」
雄太の頭の上ではセージュが微妙に嫌そうな顔をしていたが……テイルウェイは、とても上機嫌だった。
人が走るよりもずっと速く、荒野を駆け抜けていく。
雨さえ降らないこの場所はカラカラと乾いていて、砂埃がもうもうと舞い上がる。
雄太とセージュ、そしてジョニー。
ジョニーを「1人」として数えるかは微妙なところなので、とりあえず二人旅。
小さいセージュは雄太も然程気を遣わなくていいので、本当に気軽な旅だ。
「やー、やっぱりジョニーに乗ると速いな」
見えてくる世界樹の森を眺め、雄太は上機嫌な声をあげる……が、同じように上機嫌だったセージュが突如警戒するようにジョニーの頭の上へと移動する。
「む、むむ……!」
「どした?」
「あそこに変なのがいるのです!」
「変なの?」
言われて雄太が前方を見てみると……確かに、森の入り口の辺りに何か白い塊がある。
まさかまたモンスターか、と考えて。しかしすぐにそうではない事に気付く。
「あ! あれって……」
辿り着いた世界樹の森の入り口。
そこで木にもたれてグウグウとイビキをたてていたテイルウェイを見つけ、雄太は「おーい」と声をかける。
雄太達が近づいても全く目を覚ます様子を見せなかったテイルウェイだが、流石に呼びかけられると気付くのかパチリと目を開ける。
「んん……? おや、誰が僕に声をかけるのかと思えば。久しぶりだね、ユータ」
「ああ、久しぶりテイルウェイ」
人懐っこい笑顔を向けてくるテイルウェイに雄太も笑顔で返すと、テイルウェイはゆっくりと立ち上がる。
「今日はどうしたんだい? またこの森に用事なのかい?」
「ああ、今回は木の枝とかを拾いに来たんだ」
「こら邪神、ユータは私のですよ!」
早速テイルウェイを威嚇するセージュだが、テイルウェイは笑顔でそれを受け流す。
「やあ、世界樹の精霊。別に僕はユータが自分のだって言った覚えはないよ?」
「ケッ、どうだか分かんねーのです」
「おいおい、セージュ……」
人格的にまともなテイルウェイであろうと、セージュが気に入る対象にはならないらしい。
雄太は困ったようにテイルウェイをチラリを見るが、テイルウェイは笑顔で返してくる。
「まあ、神と精霊の確執は根深いからね。でもまあ、ユータの前でケンカするのはよさないかい?」
「む」
正論を言われセージュは嫌そうな顔をするが……やがて「まあ、仕方ねーのです」と答える。
「流石だな、テイルウェイ」
「いや、僕は普通の事しか言ってないけど……なんだか苦労してそうだね?」
「ハハ……」
気の毒そうな視線を向けられて雄太は思わず乾いた笑いが漏れるが、そこでふと思い出したように「そういえば」と声をあげる。
「此処に来る前にモンスターと会ったぞ」
「ああ、そういえば出るようになったね。見つけたら間引いてるけど、場所が場所だからなあ。結構強力なのがこれからも生まれるかもしれないね」
「テイルウェイも会ったのか?」
雄太がそう聞くと、テイルウェイは肩をすくめてみせる。
「まあね。僕が昼寝から起きたら、ビッグゴーレムがウロウロしてた事もあったし」
消し飛ばしたけど、と言うテイルウェイに、雄太は「ああ、そっか」と頷く。
「テイルウェイは神だもんな。モンスターにも見えないのか」
「ま、そういうことだね。僕は基本的に神霊化してるから、ユータみたいなのとか、そこの精霊みたいなのとか……あとはまあ、同族だけだね。見えるのは」
「ん? そうすると……」
「そういうこと。この子に僕は見えてないよ」
言いながらテイルウェイはジョニーの前で手をヒラヒラさせるが、ジョニーは反応せず……しかし、突然その存在に気付いたかのように「コケッ!?」と声をあげる。
「で、こうして実体化すると見えるってわけ」
「なるほどなあ」
突然現れたテイルウェイを警戒するかのように距離を取るジョニーに再度ひらひらと手を振ると、テイルウェイは雄太へと振り返る。
「ま、気を付けてね。世界樹の森は性質上モンスターは出ないけど、魔獣は出るからさ」
「性質上……?」
「魔力が淀まないからね。ま、気になるんなら、そこの精霊に聞けばいいよ」
そんな事を言うテイルウェイに、雄太は思わず「一緒に来ないのか?」と聞いてしまう。
「え? 僕がかい?」
「テイルウェイの権能の話は聞いたけどさ。世界樹の森の中に一緒に行く程度で何かあるってわけでもないんだろ?」
「まあ、ね」
テイルウェイの権能は、やがて破滅に至る発展。
頼りきりになれば、やがて周りを巻き込んで破滅するようになる。
けれど、この小さな旅はそういうものではない。
「旅は道連れ世は情け、だったかな」
「何だい、それ?」
「えーと、旅は一緒に行く人がいると楽しくて、思いやりとかあると世の中イイ感じ……みたいな意味だったかな?」
なんか違う気もするが、そんな感じの意味だったよな……などと思い出しながら雄太はそう答える。
「旅は道連れ、か……」
その言葉を反芻していたテイルウェイは、やがて「ははっ」と小さく笑うと何度か頷く。
「うん、うんうん。いい言葉だね。旅は道連れ。なら僕も君の「旅」に少しだけ同行しようかな?」
「ああ、よろしくテイルウェイ」
「うん、よろしくユータ」
雄太の頭の上ではセージュが微妙に嫌そうな顔をしていたが……テイルウェイは、とても上機嫌だった。
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