捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
お魚が食べたい2
昼食後、フェルフェトゥと雄太、コロナ……そして雄太の頭に乗ったままのセージュは石切山を登っていた。
ちなみにバーンシェルは「興味ねえ」と村に残り、ベルフラットも「フェルフェトゥのやった事を見てユータが喜ぶのは見たくないわ」と、やはり村に残っている。
ガンダインに至っては、今日は不在だ。
「うわ……っ」
「これは……」
そうして4人が山を登った先にあったのは……広大な湖だった。
この火山ではないから正確には違うが、分類としてはカルデラ湖のような窪みに水が溜まって出来た湖ということになるのだろうか?
船遊びが出来そうな湖は岩壁に囲まれ、麓からは見えないだろう。
この山に登った者、あるいは存在を知っている者だけの隠し湖というわけだ。
「しかもこれ、凄い魔力を感じるな……ていうか、フェルフェトゥの魔力か」
魔力を感じられるようになった雄太は、そういう判別もつくようになってきたが……フェルフェトゥは雄太に「そうね」と嬉しそうに答える。
「私が、ユータの為に用意した湖よ。嬉しいかしら?」
「ああ、超嬉しい」
試しに水を掬って飲んでみると、井戸の水と同じような身体に何かが満たされる感覚がある。
「此処も聖水……ハハ、何処の誰にこんな話をしてもほら吹きと言われるのがオチだろうな」
同じように水を掬ったコロナは、力なく笑う。
これだけの広大な湖が全てフェルフェトゥの力を帯びた聖水であるということは、この湖の水は永遠に清浄であると証明されたようなものだ。
というか、魚が住むにはもったいなさすぎる感があるのだが……。
「お」
雄太達の視線の先で、魚がパシャンと跳ねて水中に戻っていく。
「魚がいたな……アレもフェルフェトゥが用意したのか?」
「そうね。この湖には独自の魚の生態系を用意してあるわ。魔獣化する心配はないから安心していいわよ」
そう、魔獣化など有り得ないだろうとコロナは聞きながら思う。
何しろ聖水の湖なのだ。たとえ魚が寿命で死んだところでその死骸は即座に浄化され何も汚すことなく消え去るだろう。
恐らくだが、この湖の魚は病気や寄生虫などのあらゆる全てに侵される事無く生きるだろう。
言ってみれば、生食にすら適した……けれど魚達にとっては楽園のような環境で生きられる場所だ。
そしてその全ては、ユータ・ミスリウムという男の為に用意されているのだ。
その事実を鑑みると……コロナは少し恐ろしいような気すらしてくる。
「……こうなると、釣り竿を用意する必要があるな?」
そして、その全ての考えを振り払いコロナは雄太にそう話しかける。
何も問題はない。そう割り切ることにしたのだ。
雄太とコロナの齟齬を防ぐ為に常に実体化しているくらいに雄太の事を気にしている邪神や精霊達の心の内を推し量るなど、所詮コロナには出来はしないのだから。
「あー、確かにな。釣り竿ってのは長い棒と糸と……釣り針があればいいんだっけ……?」
雄太には釣りの趣味はなく、釣りといえば漫画やテレビで見た程度だ。
確か釣り番組ではリールがどうとかルアーがどうとか言っていた気がするが、そんな細かい所まで気にしていたわけではない。
「私も詳しいわけではないが、その場のもので適当に作っても意外に釣れる。とはいえ……釣りに使えるような木の枝は世界樹の森に行かねば手に入らないだろうな」
「ああ、確かにそうだなあ」
この村で木といえば世界樹の苗木と神樹エルウッドだけだ。
まさかそれらから枝を折って手に入れるわけにもいかない。
世界樹の森で落ちている枝を探す方がいいだろう。
「よし。じゃあ明日は世界樹の森に久々に行くとするかな」
「私も同行するべきか?」
「いや、コロナは鍛冶場の修行があるだろ? 俺とジョニーが居れば大丈夫だよ」
「私も行くですよ、ユータ」
「ああ、セージュもな」
雄太はともかくニワトリのジョニーとセージュは元々世界樹の森の住人だ。
世界樹の森に同行して貰うにはぴったりといえるだろう。
「じゃあ、魔具作成はお休みかしら?」
「うっ」
からかうように言うフェルフェトゥに、雄太は思わず唸る。
魔具のモデルルームとする為の家は出来ているのだが、まだ中に置く魔具は出来ていない。
外装に魔法式を仕込む前に石で色々練習しているのだが、試作ドライヤーは温風どころか熱風が出たりと色々試行錯誤中だ。
「ま、ほら。気分転換もしないと煮詰まるしな?」
「ええ、そうね? 気分転換は大事だわ?」
ニコニコと笑うフェルフェトゥから雄太は視線を逸らし「お、魚が跳ねた」などと誤魔化す。
誤魔化して……「そういえば」と思い出したように口にする。
「此処にいるのって、やっぱり淡水魚なのか?」
「どういう意味かしら?」
「えーと、海に居る魚じゃない魚ってこと」
「まあ、基本はそうね? 海のも欲しいのかしら」
言われて、雄太は想像してみる。
湖を元気よく泳ぐマグロ。湖の縁で獲れる貝。中々シュールだ。
「ああ、いや。とりあえずいいかな……?」
そもそも異世界の淡水魚と海水魚の生態が地球と同じわけでもないしな、と雄太は妙な納得を自分にさせながらそう答える。
「そう?」
「ああ。とにかくありがとう、フェルフェトゥ。これで新鮮な魚が食べられるな」
「ええ、そうね。望みの料理があるならリクエストに答えるわよ?」
「うーん、考えとく」
まるで夫婦のようだな、と。
コロナはそんな事を考えるが……敬愛し信仰する精霊であるセージュが何か怖い顔をしている前で、そんな事を言う勇気はなかった。
ちなみにバーンシェルは「興味ねえ」と村に残り、ベルフラットも「フェルフェトゥのやった事を見てユータが喜ぶのは見たくないわ」と、やはり村に残っている。
ガンダインに至っては、今日は不在だ。
「うわ……っ」
「これは……」
そうして4人が山を登った先にあったのは……広大な湖だった。
この火山ではないから正確には違うが、分類としてはカルデラ湖のような窪みに水が溜まって出来た湖ということになるのだろうか?
船遊びが出来そうな湖は岩壁に囲まれ、麓からは見えないだろう。
この山に登った者、あるいは存在を知っている者だけの隠し湖というわけだ。
「しかもこれ、凄い魔力を感じるな……ていうか、フェルフェトゥの魔力か」
魔力を感じられるようになった雄太は、そういう判別もつくようになってきたが……フェルフェトゥは雄太に「そうね」と嬉しそうに答える。
「私が、ユータの為に用意した湖よ。嬉しいかしら?」
「ああ、超嬉しい」
試しに水を掬って飲んでみると、井戸の水と同じような身体に何かが満たされる感覚がある。
「此処も聖水……ハハ、何処の誰にこんな話をしてもほら吹きと言われるのがオチだろうな」
同じように水を掬ったコロナは、力なく笑う。
これだけの広大な湖が全てフェルフェトゥの力を帯びた聖水であるということは、この湖の水は永遠に清浄であると証明されたようなものだ。
というか、魚が住むにはもったいなさすぎる感があるのだが……。
「お」
雄太達の視線の先で、魚がパシャンと跳ねて水中に戻っていく。
「魚がいたな……アレもフェルフェトゥが用意したのか?」
「そうね。この湖には独自の魚の生態系を用意してあるわ。魔獣化する心配はないから安心していいわよ」
そう、魔獣化など有り得ないだろうとコロナは聞きながら思う。
何しろ聖水の湖なのだ。たとえ魚が寿命で死んだところでその死骸は即座に浄化され何も汚すことなく消え去るだろう。
恐らくだが、この湖の魚は病気や寄生虫などのあらゆる全てに侵される事無く生きるだろう。
言ってみれば、生食にすら適した……けれど魚達にとっては楽園のような環境で生きられる場所だ。
そしてその全ては、ユータ・ミスリウムという男の為に用意されているのだ。
その事実を鑑みると……コロナは少し恐ろしいような気すらしてくる。
「……こうなると、釣り竿を用意する必要があるな?」
そして、その全ての考えを振り払いコロナは雄太にそう話しかける。
何も問題はない。そう割り切ることにしたのだ。
雄太とコロナの齟齬を防ぐ為に常に実体化しているくらいに雄太の事を気にしている邪神や精霊達の心の内を推し量るなど、所詮コロナには出来はしないのだから。
「あー、確かにな。釣り竿ってのは長い棒と糸と……釣り針があればいいんだっけ……?」
雄太には釣りの趣味はなく、釣りといえば漫画やテレビで見た程度だ。
確か釣り番組ではリールがどうとかルアーがどうとか言っていた気がするが、そんな細かい所まで気にしていたわけではない。
「私も詳しいわけではないが、その場のもので適当に作っても意外に釣れる。とはいえ……釣りに使えるような木の枝は世界樹の森に行かねば手に入らないだろうな」
「ああ、確かにそうだなあ」
この村で木といえば世界樹の苗木と神樹エルウッドだけだ。
まさかそれらから枝を折って手に入れるわけにもいかない。
世界樹の森で落ちている枝を探す方がいいだろう。
「よし。じゃあ明日は世界樹の森に久々に行くとするかな」
「私も同行するべきか?」
「いや、コロナは鍛冶場の修行があるだろ? 俺とジョニーが居れば大丈夫だよ」
「私も行くですよ、ユータ」
「ああ、セージュもな」
雄太はともかくニワトリのジョニーとセージュは元々世界樹の森の住人だ。
世界樹の森に同行して貰うにはぴったりといえるだろう。
「じゃあ、魔具作成はお休みかしら?」
「うっ」
からかうように言うフェルフェトゥに、雄太は思わず唸る。
魔具のモデルルームとする為の家は出来ているのだが、まだ中に置く魔具は出来ていない。
外装に魔法式を仕込む前に石で色々練習しているのだが、試作ドライヤーは温風どころか熱風が出たりと色々試行錯誤中だ。
「ま、ほら。気分転換もしないと煮詰まるしな?」
「ええ、そうね? 気分転換は大事だわ?」
ニコニコと笑うフェルフェトゥから雄太は視線を逸らし「お、魚が跳ねた」などと誤魔化す。
誤魔化して……「そういえば」と思い出したように口にする。
「此処にいるのって、やっぱり淡水魚なのか?」
「どういう意味かしら?」
「えーと、海に居る魚じゃない魚ってこと」
「まあ、基本はそうね? 海のも欲しいのかしら」
言われて、雄太は想像してみる。
湖を元気よく泳ぐマグロ。湖の縁で獲れる貝。中々シュールだ。
「ああ、いや。とりあえずいいかな……?」
そもそも異世界の淡水魚と海水魚の生態が地球と同じわけでもないしな、と雄太は妙な納得を自分にさせながらそう答える。
「そう?」
「ああ。とにかくありがとう、フェルフェトゥ。これで新鮮な魚が食べられるな」
「ええ、そうね。望みの料理があるならリクエストに答えるわよ?」
「うーん、考えとく」
まるで夫婦のようだな、と。
コロナはそんな事を考えるが……敬愛し信仰する精霊であるセージュが何か怖い顔をしている前で、そんな事を言う勇気はなかった。
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