捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
お魚が食べたい
「……魚が欲しいな」
ぼそりとコロナが呟いたのは、ある日の食事中だった。
「え、食べてるじゃないか」
今日の昼食のメニューは、名前も分からない焼き魚と、根菜のスープ。それに麦飯だ。
鮭に似た味の魚をほぐして麦飯に載せながら食べる雄太に、コロナは「違うのだ」と答える。
「そういう意味ではなく、自給自足的な意味でだ」
「あー、確かに釣りとか出来ないものな」
当然だが、泉や川なんてものは近くにはない。海に至っては、何処まで行けばあるのかも不明だ。
故に魚の自給自足は出来ていない。まあ、肉も自給自足は出来ていないのだが。
流石にジョニー達は愛着が沸きすぎている。
「……ん? というか卵……」
「産んでないわね。頼んでみる?」
「頼まないと産まないものだっけ……」
まあ、魔獣化すると色々と違うのかもしれないが、話がズレたのでフェルフェトゥに「まあ、適当に」と返しつつも雄太はコロナへ向き直る。
「肉なら世界樹の森行けば手に入りそうだけど、魚は今後交易品として手に入れるんじゃダメなのか?」
「可能だろうが、そうすると必然的に干物になるぞ。塩漬けでもこのヴァルヘイムを品質を保ったまま運べるとは思えん」
「干物かあ……」
干物。確か干物は焼き魚として食べるんだったかと雄太は思い出す。
それはそれでいいが、刺身は食べられないだろう。
いや、刺身のような生食文化がこっちにあるかは不明なのだが。
「干物でも悪いとは言わないが、こちらに運んでくる手間を考えると相当な価格になるだろう。魚1つに宝石を出すような取引をしたいか?」
「あー、なるほど。そういうことか」
確かに物品の価格は距離や手間で上昇する。
輸入品が信じられないくらいに高くなるのと同じ理屈だ。
まあ、アレの場合は関税とかもあるだろうが……空路でもなく陸路、しかも苦労する旅路ともなれば価格が天井知らずになってもおかしくはない。
「消えものが贅沢品っていうのは分かるけど……確かにそれは、な」
勿論フェルフェトゥが今まで通りに町に移動して買えばいいが、いつまでもそういうわけにもいかない。
となると、何処かで魚を手に入れる手段を確立しないといけないのかもしれない。
「なあ、セージュ」
「ふにゃ?」
雄太の頭の上で昼寝をしていたセージュに呼びかけると、セージュは眠そうに返事をしてくる。
「世界樹の森に魚の住んでそうな池とかないのか?」
「あるですよ。でも水棲の魔獣ってえげつないのが多いですからおススメはしないのです」
「あー、やっぱり魔獣なんだな……」
「巨大化する事を選ばなかった分、えげつなさは陸棲の魔獣より上かもなのですよ」
その一言に雄太とコロナは顔を見合わせると「ないな」と頷き合う。
流石に、釣りに命をかける気はない。
「しかしそうなると、池か川を他の場所で探すってことになるか」
「ヴァルヘイムを更に奥に進めばあるかもしれないが……」
しかし、それは世界樹の森よりも更に遠くへ行くということでもある。
ジョニー達に乗って遠出できるとはいえ、それは少しばかり現実的ではないかもしれない。
「こちらから買いに行くという方式の方が現実的かもしれんな。あのニワトリ達がいれば不可能ではないだろう」
「かもな」
行商人に頼るのも自分達で捕るのも現実的ではないなら、そういう選択になる。
……が、そこでバーンシェルが「あー……」と言い難そうに声をあげる。
「結論が出たとこ悪ィんだけどよ」
「バーンシェル殿?」
「どうしたんだ?」
「ちょっとフェルフェトゥの顔見てみろ」
言われてコロナと雄太がフェルフェトゥを見ると……いつも以上に……というか、雄太もあまり見たことがないくらい楽しそうな、悪い顔で笑っている。
「な、なんだよフェルフェトゥ。何かあるのか?」
「魚の捕れる場所ならあるわよ?」
「へ?」
魚の捕れる場所がある。そう言ったフェルフェトゥに、雄太とコロナは思わず間の抜けた顔をする。
わざわざそんな事を言うからには遠くではないのだろう。
しかし、一体何処に?
そう考えて……雄太は、井戸や温泉の事を思い出す。
「……あ、まさか」
「そのまさかよ?」
「え、ユータ殿。何の話だ?」
「いや、フェルフェトゥが池か湖か分からないけど……作ったのかなって……」
「はあ!?」
思わず立ち上がるコロナを見て、フェルフェトゥは「お行儀悪いわよ」と窘める。
「す、すまない。しかし……作った!? 湖をか!?」
「温泉作った事もあるし……なあ」
そう言われて、コロナはヴァルヘイムでは有り得ないと思っていた温泉や井戸の事を思い出す。
なるほど、確認した事は無いがフェルフェトゥが水神に類される神であるならば……有り得ない話ではない。
ないが……そうなると、フェルフェトゥはかなり上位の神ということになる。
畑を担当しているベルフラットもそうだが……どうにも「邪神」の枠で括るには強すぎる神が多いような気がしてならない。
「それで、一体何処に作ったんだ?」
「山よ」
そう言うと、フェルフェトゥは雄太が石切りに使っている近くの山を指差した。
ぼそりとコロナが呟いたのは、ある日の食事中だった。
「え、食べてるじゃないか」
今日の昼食のメニューは、名前も分からない焼き魚と、根菜のスープ。それに麦飯だ。
鮭に似た味の魚をほぐして麦飯に載せながら食べる雄太に、コロナは「違うのだ」と答える。
「そういう意味ではなく、自給自足的な意味でだ」
「あー、確かに釣りとか出来ないものな」
当然だが、泉や川なんてものは近くにはない。海に至っては、何処まで行けばあるのかも不明だ。
故に魚の自給自足は出来ていない。まあ、肉も自給自足は出来ていないのだが。
流石にジョニー達は愛着が沸きすぎている。
「……ん? というか卵……」
「産んでないわね。頼んでみる?」
「頼まないと産まないものだっけ……」
まあ、魔獣化すると色々と違うのかもしれないが、話がズレたのでフェルフェトゥに「まあ、適当に」と返しつつも雄太はコロナへ向き直る。
「肉なら世界樹の森行けば手に入りそうだけど、魚は今後交易品として手に入れるんじゃダメなのか?」
「可能だろうが、そうすると必然的に干物になるぞ。塩漬けでもこのヴァルヘイムを品質を保ったまま運べるとは思えん」
「干物かあ……」
干物。確か干物は焼き魚として食べるんだったかと雄太は思い出す。
それはそれでいいが、刺身は食べられないだろう。
いや、刺身のような生食文化がこっちにあるかは不明なのだが。
「干物でも悪いとは言わないが、こちらに運んでくる手間を考えると相当な価格になるだろう。魚1つに宝石を出すような取引をしたいか?」
「あー、なるほど。そういうことか」
確かに物品の価格は距離や手間で上昇する。
輸入品が信じられないくらいに高くなるのと同じ理屈だ。
まあ、アレの場合は関税とかもあるだろうが……空路でもなく陸路、しかも苦労する旅路ともなれば価格が天井知らずになってもおかしくはない。
「消えものが贅沢品っていうのは分かるけど……確かにそれは、な」
勿論フェルフェトゥが今まで通りに町に移動して買えばいいが、いつまでもそういうわけにもいかない。
となると、何処かで魚を手に入れる手段を確立しないといけないのかもしれない。
「なあ、セージュ」
「ふにゃ?」
雄太の頭の上で昼寝をしていたセージュに呼びかけると、セージュは眠そうに返事をしてくる。
「世界樹の森に魚の住んでそうな池とかないのか?」
「あるですよ。でも水棲の魔獣ってえげつないのが多いですからおススメはしないのです」
「あー、やっぱり魔獣なんだな……」
「巨大化する事を選ばなかった分、えげつなさは陸棲の魔獣より上かもなのですよ」
その一言に雄太とコロナは顔を見合わせると「ないな」と頷き合う。
流石に、釣りに命をかける気はない。
「しかしそうなると、池か川を他の場所で探すってことになるか」
「ヴァルヘイムを更に奥に進めばあるかもしれないが……」
しかし、それは世界樹の森よりも更に遠くへ行くということでもある。
ジョニー達に乗って遠出できるとはいえ、それは少しばかり現実的ではないかもしれない。
「こちらから買いに行くという方式の方が現実的かもしれんな。あのニワトリ達がいれば不可能ではないだろう」
「かもな」
行商人に頼るのも自分達で捕るのも現実的ではないなら、そういう選択になる。
……が、そこでバーンシェルが「あー……」と言い難そうに声をあげる。
「結論が出たとこ悪ィんだけどよ」
「バーンシェル殿?」
「どうしたんだ?」
「ちょっとフェルフェトゥの顔見てみろ」
言われてコロナと雄太がフェルフェトゥを見ると……いつも以上に……というか、雄太もあまり見たことがないくらい楽しそうな、悪い顔で笑っている。
「な、なんだよフェルフェトゥ。何かあるのか?」
「魚の捕れる場所ならあるわよ?」
「へ?」
魚の捕れる場所がある。そう言ったフェルフェトゥに、雄太とコロナは思わず間の抜けた顔をする。
わざわざそんな事を言うからには遠くではないのだろう。
しかし、一体何処に?
そう考えて……雄太は、井戸や温泉の事を思い出す。
「……あ、まさか」
「そのまさかよ?」
「え、ユータ殿。何の話だ?」
「いや、フェルフェトゥが池か湖か分からないけど……作ったのかなって……」
「はあ!?」
思わず立ち上がるコロナを見て、フェルフェトゥは「お行儀悪いわよ」と窘める。
「す、すまない。しかし……作った!? 湖をか!?」
「温泉作った事もあるし……なあ」
そう言われて、コロナはヴァルヘイムでは有り得ないと思っていた温泉や井戸の事を思い出す。
なるほど、確認した事は無いがフェルフェトゥが水神に類される神であるならば……有り得ない話ではない。
ないが……そうなると、フェルフェトゥはかなり上位の神ということになる。
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