捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
鐘が出来たよ!
集会場の三階。鐘楼部分に、鐘が設置される。
総オリハルコン製、四柱の邪神の加護と一人の精霊の祝福付き。
魔具を超え神器に到達した鐘は設置されると、誰も突いていないのにゴーン……という重厚な音を響かせる。
「おお、いいじゃねえか。想像したよりずっと良い音だ」
「そうね……鐘の色が白で無ければ、もっといい……わ」
「今は私の時間だから当然なのです!」
そんな声が響くが、ベルフラットの言う「鐘の色が白」だとかセージュの言う「私の時間」だとかいうのは……この鐘の仕様によるものだ。
「本当に出来るんだなあ……こんな鐘」
「人間には無理だな。まさに神の御業だ」
雄太とコロナは何処か呆れたような目で見ているが、それも仕方のない事だろう。
何しろこの鐘、機能が満載だ。
まず、色が変わる。
一日を五つに分け、日の出から昼前までを「精霊の刻」、昼から日が沈み始めるまでを「火の刻」、日が沈み始めてから完全に沈むまでを「水の刻」、日が沈んでから夜が更ける……おおよそ人間が完全に眠りにつくまでを「土の刻」、そこから日の出前までを「風の刻」としている。
そして精霊の刻には白、火の刻には赤、水の刻には青、土の刻には黒、風の刻には緑に鐘の色が変わるのだ。
ちょっとした時計じみていると言ってもいい。
そして、それぞれの刻の開始時には鐘が自動で鳴るようになっているが……今のように、任意で鳴らすことも出来る。
「それで? この音は何処まで届くのかしら」
「この村の範囲までだな。境界線と認識した場所に届くようになってる」
「それで正解ね」
フェルフェトゥとベルフラットの会話は、鐘の音が遠くに響きすぎる事を危惧したものだ。
あまり遠くまで響きすぎると、その音を頼りに余計なモノを招きかねないからだ。
そういうものは、望みではない。
「うーん。でも、ほんとに凄い」
「凄いというか凄まじい、だがな。しかし……ふむ」
「ん?」
「目標は出来た。いずれ私もここまで……とはいかずとも、近い物を作り上げてみせよう」
そんな事を言うコロナに、雄太は「そうか」と頷く。
それは、間違いなくコロナの人生の目標なのだろう。
今までの騎士という人生とは全く違う道を歩く……それは簡単に決められるものではないだろうに、後悔一つ見せる様子はない。
「目標、か」
雄太の目標は、このミスリウム村の発展だ。
それに向かって頑張っているつもりではあるが、本当に出来ているか不安になる事もある。
それは、これという正解がないからなのだろうが……。
「俺も頑張らないとな」
それでも、きっと前に進んでいる。
そう信じて、雄太は呟く。
「あ、そういえばさ」
「ん?」
「どうした、の?」
「何かあったです?」
雄太の声に全員が振り向く。誰も雄太を「後回し」にしない。
此処では当たり前になったその事実が嬉しくて、雄太は少しだけ照れた様子で「えーと」と呟く。
「この前言った魔具作りなんだけど、その試作品を置く専用の家を造ろうと思うんだよ」
「なんでだ? この集会場で試せばいいんじゃねえの?」
「ああ、それでもいいんだけどさ」
そう、基本はバーンシェルの言う通りで問題ない。
しかし、村に誰か客が来た時に問題が起きる。
「どうなるか分からないものをお客さんのいる場所に置くのもどうかと思うしさ。何より、一つのモデルケースとしてもいいと思うんだ」
「モデルケース、ですか?」
「そう。テーマは「魔具で飾られた生活」ってとこかな」
イメージするのは、現代日本のオール家電のような生活だ。
魔力を籠めれば便利な道具で快適な生活が出来る。
そんな風な家の試作品を作ってみたいとユータは考えたのだ。
「上手くいけば交易品として「こういう風に使うんです」っていう説明にもなるしさ」
「悪くはないわね」
フェルフェトゥが真っ先に賛同し、コロナも「そうだな」と追随する。
「確かに、全て揃えればどうなるのかというのを体感できるのはいい。確かユータ殿の作ろうとしている魔具は生活を豊かにする……というものだったしな」
勿論必要な魔力総量を考えれば王族や貴族に限られるだろうが……とコロナは付け加える。
一般庶民でも魔法士はいるのだから不可能ではないが、魔具の値段を考えると一流の魔法士のような者に限られてしまうだろう。
「まあ、魔具を早く完成させないと寂しい家になるから……頑張りなさいね、ユータ?」
「うっ……頑張るよ」
何しろ、まだエアコンの魔具……流石にエアコンという名称はどうかと思うので名前を考え中だが、その魔具はまだ開発中だ。
外装もバーンシェルと一緒に頭を悩ませている。
「フッ……そうなると、いつか私とユータ殿の共同で魔具制作というのも面白いかもしれんな」
「つーかそうしろよ。アタシが楽になる」
バーンシェルに即座に突っ込まれてコロナが呻くが、それはさておき。
「さ、それより各自、今日のやるべき事を始めましょ! 一日は短いわよ!」
フェルフェトゥの手を叩く音と共に、全員がそれぞれの場所に散っていく。
ミスリウム村は今日も平穏で……暖かい幸せに満ちている。
総オリハルコン製、四柱の邪神の加護と一人の精霊の祝福付き。
魔具を超え神器に到達した鐘は設置されると、誰も突いていないのにゴーン……という重厚な音を響かせる。
「おお、いいじゃねえか。想像したよりずっと良い音だ」
「そうね……鐘の色が白で無ければ、もっといい……わ」
「今は私の時間だから当然なのです!」
そんな声が響くが、ベルフラットの言う「鐘の色が白」だとかセージュの言う「私の時間」だとかいうのは……この鐘の仕様によるものだ。
「本当に出来るんだなあ……こんな鐘」
「人間には無理だな。まさに神の御業だ」
雄太とコロナは何処か呆れたような目で見ているが、それも仕方のない事だろう。
何しろこの鐘、機能が満載だ。
まず、色が変わる。
一日を五つに分け、日の出から昼前までを「精霊の刻」、昼から日が沈み始めるまでを「火の刻」、日が沈み始めてから完全に沈むまでを「水の刻」、日が沈んでから夜が更ける……おおよそ人間が完全に眠りにつくまでを「土の刻」、そこから日の出前までを「風の刻」としている。
そして精霊の刻には白、火の刻には赤、水の刻には青、土の刻には黒、風の刻には緑に鐘の色が変わるのだ。
ちょっとした時計じみていると言ってもいい。
そして、それぞれの刻の開始時には鐘が自動で鳴るようになっているが……今のように、任意で鳴らすことも出来る。
「それで? この音は何処まで届くのかしら」
「この村の範囲までだな。境界線と認識した場所に届くようになってる」
「それで正解ね」
フェルフェトゥとベルフラットの会話は、鐘の音が遠くに響きすぎる事を危惧したものだ。
あまり遠くまで響きすぎると、その音を頼りに余計なモノを招きかねないからだ。
そういうものは、望みではない。
「うーん。でも、ほんとに凄い」
「凄いというか凄まじい、だがな。しかし……ふむ」
「ん?」
「目標は出来た。いずれ私もここまで……とはいかずとも、近い物を作り上げてみせよう」
そんな事を言うコロナに、雄太は「そうか」と頷く。
それは、間違いなくコロナの人生の目標なのだろう。
今までの騎士という人生とは全く違う道を歩く……それは簡単に決められるものではないだろうに、後悔一つ見せる様子はない。
「目標、か」
雄太の目標は、このミスリウム村の発展だ。
それに向かって頑張っているつもりではあるが、本当に出来ているか不安になる事もある。
それは、これという正解がないからなのだろうが……。
「俺も頑張らないとな」
それでも、きっと前に進んでいる。
そう信じて、雄太は呟く。
「あ、そういえばさ」
「ん?」
「どうした、の?」
「何かあったです?」
雄太の声に全員が振り向く。誰も雄太を「後回し」にしない。
此処では当たり前になったその事実が嬉しくて、雄太は少しだけ照れた様子で「えーと」と呟く。
「この前言った魔具作りなんだけど、その試作品を置く専用の家を造ろうと思うんだよ」
「なんでだ? この集会場で試せばいいんじゃねえの?」
「ああ、それでもいいんだけどさ」
そう、基本はバーンシェルの言う通りで問題ない。
しかし、村に誰か客が来た時に問題が起きる。
「どうなるか分からないものをお客さんのいる場所に置くのもどうかと思うしさ。何より、一つのモデルケースとしてもいいと思うんだ」
「モデルケース、ですか?」
「そう。テーマは「魔具で飾られた生活」ってとこかな」
イメージするのは、現代日本のオール家電のような生活だ。
魔力を籠めれば便利な道具で快適な生活が出来る。
そんな風な家の試作品を作ってみたいとユータは考えたのだ。
「上手くいけば交易品として「こういう風に使うんです」っていう説明にもなるしさ」
「悪くはないわね」
フェルフェトゥが真っ先に賛同し、コロナも「そうだな」と追随する。
「確かに、全て揃えればどうなるのかというのを体感できるのはいい。確かユータ殿の作ろうとしている魔具は生活を豊かにする……というものだったしな」
勿論必要な魔力総量を考えれば王族や貴族に限られるだろうが……とコロナは付け加える。
一般庶民でも魔法士はいるのだから不可能ではないが、魔具の値段を考えると一流の魔法士のような者に限られてしまうだろう。
「まあ、魔具を早く完成させないと寂しい家になるから……頑張りなさいね、ユータ?」
「うっ……頑張るよ」
何しろ、まだエアコンの魔具……流石にエアコンという名称はどうかと思うので名前を考え中だが、その魔具はまだ開発中だ。
外装もバーンシェルと一緒に頭を悩ませている。
「フッ……そうなると、いつか私とユータ殿の共同で魔具制作というのも面白いかもしれんな」
「つーかそうしろよ。アタシが楽になる」
バーンシェルに即座に突っ込まれてコロナが呻くが、それはさておき。
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