捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
セージュの魔具作成講座2
「まあ、邪神力は俺には真似できないからな……とりあえず、そうだなあ」
難しい事を考えず、もっと気楽に想像してみようと雄太は周囲を見回す。
きっと何かあるはずだ。
あれば便利だけど、特にそういう発想には至らないようなものが。
「んー……あっ」
「何か思いつきましたか?」
「ドライヤーなんかいいんじゃないか?」
「どらいやあ?」
「濡れた髪の毛を乾かす道具なんだけどさ」
今は布で拭いたら自然乾燥だが、意外に需要があるのではないだろうか?
機能としても「風が吹く」というのが出来ていれば解決する。
更には吹き出し口みたいなものを作れば、風の向きについても解決するだろう。
「そういう意味じゃ、エアコンとかも可能なんじゃないか……?」
温風と冷風。その辺りの調整をするのはセージュにアドバイスを貰わなければいけないだろうが、出来ないわけではないはずだ。
「えーと……」
雄太は試しに、近くの風の魔力を集めてみる。
エアコンの冷たい風をイメージし、キーワードと共にそれを放つ。
「冷風」
その言葉と共に、冬の風のような冷たい風が放たれる。
地面の土を巻き上げるくらいに勢いの強い冷風に、雄太は思わず「うおっ」と声をあげる。
「ちょっと強すぎたな」
「今のがどらいやあですか?」
「あー、いや。暑い日に部屋を冷たい風で冷やす魔具が出来るかと思ってやってみたんだけどな」
「ふむ……」
それを聞くと、セージュは雄太の手を軽く握る。
「集めた力が少し多すぎますね。今の風量を魔具で再現するとなると、かなり使い勝手が悪いですけど……たぶん、そういうことじゃないんですよね?」
「あー、まあ。もう少し気持ちいいって思う程度の風を想像してたんだけど」
「上限の設定の問題ですね。もう少し「このくらい」っていう限度を強くイメージしてください」
「えーと……やってみる」
雄太は再度風の魔力を集め、エアコンの冷風をイメージする。
具体的な風の強さを強くイメージし、強すぎないように、冷たすぎないようにと意識する。
「……冷風」
今度はそよぐような、そんな弱く冷たい風が流れる。
そう、丁度こんな感じだ。
「出来たぞ、セージュ」
「おめでとうございます、ユータ。今の感じを忘れずに道具に組み込むのが魔具の作成になりますが……そうですね、今日のところはコレに」
言いながらセージュが差し出すのは、丸い形をした石だ。
どうやら足元から拾ったらしいが……雄太は思わず二度見する。
「え、これ……石?」
「練習ですから。本番は癪ですけど、バーンシェルに何か形を作って貰わないと商品としては成立しないでしょうしね」
「あー、確かに」
流石に売る商品が石細工では客も納得しないだろう。
しかし金属で商品を作るとなると、現時点ではバーンシェルやコロナに頼むしか方法がない。
「では、今の「冷たい風が出る」までの流れを石に入れてみてください」
「いやいや。入れてみてくださいって、どうすればいいんだ? 魔力籠めるのとはまた違うんだろ?」
雄太の質問にセージュは「そうですね……」と答える。
「ユータは今、冷たい風を出す方法を確立しましたよね?」
「ん、まあ」
「それは一般的には「魔法式」と呼ばれるモノです。誰もがその工程をなぞれば同じ結果を導き出せる魔法における方程式です」
なるほど、1に1を足せば2になるが、5から3を引いても2になる。
要はその「2」という結果を引きずり出す為のものが「魔法式」と呼ばれるものなのだろうと雄太は理解する。
「魔力を石に籠める時に、その魔法式の事を強く思い浮かべてください。そうすると「転写」と呼ばれる現象が発現します」
「転写、ねえ」
雄太はセージュから受け取った石に魔力を籠め、言われたように先程の冷風の事を思い浮かべる。
魔法式というのがそれでいいのかは雄太にはよく分からなかったが、すぐにキンッという甲高い音が聞こえてくる。
「はい、これで冷たい風の出る魔法具の完成です」
「え、これでいいのか?」
「はい、石にユータの魔力紋が刻まれてると思いますよ」
言われて石を見てみると……丸い石に、門とシャベルを組み合わせたような絵柄が刻まれているのが見えた。
「……何だコレ」
「ユータの魔力紋ですね。ユータ自身が魔力を刻んだ証みたいなものですが……シャベルが入ってるのはたぶん……」
言いながらセージュはチラリと筋トレマニアのシャベルを見るが、雄太にもそこは想像がついた。
「俺のトレードマークになるくらいの相棒だってか……」
「あ、あはは……普通はもう少し幾何学的な紋様になるはずなんですけど」
「いや、いいさ。なんかブランドマークみたいで逆に分かりやすい」
幾何学的な模様を見せられても雄太は瞬時に判別など出来ないが、これなら覚えやすい。
それにしても門については異世界から来たからとか、そういう理由なのだろうか?
「では、それに魔力を籠めてみてください」
「ああ」
言われて雄太が石に魔力を籠めると、弱く冷たい風がフワリと石から流れ始める。
「おお……」
「成功ですね!」
嬉しそうに言うセージュに、雄太も「ああ」と答える。
何はともあれ、雄太の作った魔具第一号だ。
「……ところでこれ、止める時にはどうしたらいいんだ?」
「ソレにはそういう魔法式は刻んでませんから、魔力が切れるまで流れっぱなしですね」
「ええ……? じゃあ、その止める魔法式を刻めばいいのか?」
「それでもいいですけど、それって普通の石ですから。あんまり魔法式刻むと自壊するかも……」
「……それは嫌だな」
まあ、そんなわけで。
雄太作成の魔具第一号「冷たい風の流れる石」は雄太達の家になんとなく飾られる事になったのである。
難しい事を考えず、もっと気楽に想像してみようと雄太は周囲を見回す。
きっと何かあるはずだ。
あれば便利だけど、特にそういう発想には至らないようなものが。
「んー……あっ」
「何か思いつきましたか?」
「ドライヤーなんかいいんじゃないか?」
「どらいやあ?」
「濡れた髪の毛を乾かす道具なんだけどさ」
今は布で拭いたら自然乾燥だが、意外に需要があるのではないだろうか?
機能としても「風が吹く」というのが出来ていれば解決する。
更には吹き出し口みたいなものを作れば、風の向きについても解決するだろう。
「そういう意味じゃ、エアコンとかも可能なんじゃないか……?」
温風と冷風。その辺りの調整をするのはセージュにアドバイスを貰わなければいけないだろうが、出来ないわけではないはずだ。
「えーと……」
雄太は試しに、近くの風の魔力を集めてみる。
エアコンの冷たい風をイメージし、キーワードと共にそれを放つ。
「冷風」
その言葉と共に、冬の風のような冷たい風が放たれる。
地面の土を巻き上げるくらいに勢いの強い冷風に、雄太は思わず「うおっ」と声をあげる。
「ちょっと強すぎたな」
「今のがどらいやあですか?」
「あー、いや。暑い日に部屋を冷たい風で冷やす魔具が出来るかと思ってやってみたんだけどな」
「ふむ……」
それを聞くと、セージュは雄太の手を軽く握る。
「集めた力が少し多すぎますね。今の風量を魔具で再現するとなると、かなり使い勝手が悪いですけど……たぶん、そういうことじゃないんですよね?」
「あー、まあ。もう少し気持ちいいって思う程度の風を想像してたんだけど」
「上限の設定の問題ですね。もう少し「このくらい」っていう限度を強くイメージしてください」
「えーと……やってみる」
雄太は再度風の魔力を集め、エアコンの冷風をイメージする。
具体的な風の強さを強くイメージし、強すぎないように、冷たすぎないようにと意識する。
「……冷風」
今度はそよぐような、そんな弱く冷たい風が流れる。
そう、丁度こんな感じだ。
「出来たぞ、セージュ」
「おめでとうございます、ユータ。今の感じを忘れずに道具に組み込むのが魔具の作成になりますが……そうですね、今日のところはコレに」
言いながらセージュが差し出すのは、丸い形をした石だ。
どうやら足元から拾ったらしいが……雄太は思わず二度見する。
「え、これ……石?」
「練習ですから。本番は癪ですけど、バーンシェルに何か形を作って貰わないと商品としては成立しないでしょうしね」
「あー、確かに」
流石に売る商品が石細工では客も納得しないだろう。
しかし金属で商品を作るとなると、現時点ではバーンシェルやコロナに頼むしか方法がない。
「では、今の「冷たい風が出る」までの流れを石に入れてみてください」
「いやいや。入れてみてくださいって、どうすればいいんだ? 魔力籠めるのとはまた違うんだろ?」
雄太の質問にセージュは「そうですね……」と答える。
「ユータは今、冷たい風を出す方法を確立しましたよね?」
「ん、まあ」
「それは一般的には「魔法式」と呼ばれるモノです。誰もがその工程をなぞれば同じ結果を導き出せる魔法における方程式です」
なるほど、1に1を足せば2になるが、5から3を引いても2になる。
要はその「2」という結果を引きずり出す為のものが「魔法式」と呼ばれるものなのだろうと雄太は理解する。
「魔力を石に籠める時に、その魔法式の事を強く思い浮かべてください。そうすると「転写」と呼ばれる現象が発現します」
「転写、ねえ」
雄太はセージュから受け取った石に魔力を籠め、言われたように先程の冷風の事を思い浮かべる。
魔法式というのがそれでいいのかは雄太にはよく分からなかったが、すぐにキンッという甲高い音が聞こえてくる。
「はい、これで冷たい風の出る魔法具の完成です」
「え、これでいいのか?」
「はい、石にユータの魔力紋が刻まれてると思いますよ」
言われて石を見てみると……丸い石に、門とシャベルを組み合わせたような絵柄が刻まれているのが見えた。
「……何だコレ」
「ユータの魔力紋ですね。ユータ自身が魔力を刻んだ証みたいなものですが……シャベルが入ってるのはたぶん……」
言いながらセージュはチラリと筋トレマニアのシャベルを見るが、雄太にもそこは想像がついた。
「俺のトレードマークになるくらいの相棒だってか……」
「あ、あはは……普通はもう少し幾何学的な紋様になるはずなんですけど」
「いや、いいさ。なんかブランドマークみたいで逆に分かりやすい」
幾何学的な模様を見せられても雄太は瞬時に判別など出来ないが、これなら覚えやすい。
それにしても門については異世界から来たからとか、そういう理由なのだろうか?
「では、それに魔力を籠めてみてください」
「ああ」
言われて雄太が石に魔力を籠めると、弱く冷たい風がフワリと石から流れ始める。
「おお……」
「成功ですね!」
嬉しそうに言うセージュに、雄太も「ああ」と答える。
何はともあれ、雄太の作った魔具第一号だ。
「……ところでこれ、止める時にはどうしたらいいんだ?」
「ソレにはそういう魔法式は刻んでませんから、魔力が切れるまで流れっぱなしですね」
「ええ……? じゃあ、その止める魔法式を刻めばいいのか?」
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