捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
セージュの魔具作成講座
「さて、それでは早速魔具の作成を始めていきましょうか」
「えーと……大きいままでやるのか?」
何事も無かったかのように雄太の前に座るセージュに雄太がそう聞けば、セージュは微笑みで返してくる。
「小さい私は考えるのがちょっと苦手ですから。細かい事には向いてないんですよ」
「あー……それなら仕方ない、のか?」
大きいセージュは小さいセージュとは違って普通に綺麗なのでどうにもやりにくいのだが、そういう事情であれば仕方ない……のかもしれない。
「では、魔具についてです。魔石のような指向性のない物と違って、何らかの効果を期待する物を作るのであれば当然、それを目的とした魔力の籠め方をする必要がありますが……ここまでは大丈夫ですか?」
「ん、まあ分かる。出来るかっていうと別だけど」
「はい、それで大丈夫です。といっても、あまり難しいものではありません。現象として世界に齎されるものに限りがある以上、その範囲内の事が出来ればそれで完成なんですから」
たとえばお風呂を魔具として構成するのであれば、湯船に「溢れずにお湯が溜まる」という結果があればいい。
これを分解すると「水が出る」「溢れない」「お湯になる」という3つになる。
このうち「水が出る」については魔力で水を出せば解決する。
お湯になる、というのは火の魔力の領域だ。
溢れない……というのは、これは少々面倒だが「水が出る」に制限をつければ事足りる。
「今のは大雑把な例ですが、このように考えれば大体の魔具は組み合わせで解決するわけですね」
「え。でも、だとしたら大体の魔具はもうあるんじゃないか?」
「どうでしょう? 邪神共の口ぶりですと、それ程魔具が溢れているとも思えませんが。とりあえず、その辺りを気にせずユータの思う魔具を作っていけばいいと思いますよ。練習にもなります」
「ふーむ……」
「たとえばの話、こんなのもあるんですよ?」
そう言うと、セージュは一本の短い棒のようなものを差し出してくる。
円柱の形に削り出した棒は中々手触りが良く、しかし何か道具として使うには半端な長さだ。
だが、見てみれば何か魔力が篭められているのも理解できた。
「これって、魔具か?」
言いながら雄太は魔力を籠めてみるが、何も反応しない。
足りないのかと更に籠めてみるが反応せず、雄太はセージュを見て疑問符を浮かべる。
「刃よ、と言えば反応するように作ってあります」
「え、刃って……なにこれ、武器なのか?」
雄太の疑問に、セージュは満面の笑みで答える。
「はい、世界樹の剣と名付けました。世界樹の枝から切り出してますから、魔力との親和性の高い魔具になってます」
「そ、そぉか……ありがとう」
今の状況で使う機会が訪れるとも思えなかったのだが、雄太は受け取った世界樹の剣を腰のベルトに差す。
「でも、なるほど。武器も魔具ってことか」
「そうなりますね。発想次第です」
「ふーむ」
なるほど、と雄太は思う。
そういうことであれば現代日本人の雄太の発想が活きてくる。
何しろ便利な生活家電に毒されて、それなしでは生きられない生活をしていたのだ。
何があれば便利かはよく分かる。
そう、確か三種の神器とかいうものがあったはずだ。
「テレビ、冷蔵庫、洗濯機……だったか?」
テレビは無理だろう。そもそも放送局が無い。
冷蔵庫は出来る気がする。
先程のセージュの説明に従うならば、冷蔵庫は「中に入れたものが冷える」結果があればいい。
この「冷える」というのは恐らくは水の魔力だろう。
洗濯機の場合は「中に入れたものが綺麗になる」だろうか?
少し違う気もする。
「ついた汚れが落ちる」が近い気もするが、これも何か違う気がする。
いや、そもそも洗濯とは何か。
古来の洗濯では洗濯板とかいうギザギザの拷問用の板みたいなものに洗濯物をこすり付けていたとも聞く。
それはつまり、摩擦的な何かで汚れを落としているということではないのだろうか?
「……あのー……ユータ?」
「いや、待てよ。そういえば洗剤とかの問題もあったな」
化学的な事情は雄太にはどうにもならない。
何しろ雄太は化学者でもなければ錬金術師でもない。
しかし石鹸で落としていた時期もあったと聞いたことがある。
石鹸自体はなんだかご家庭でも作れると聞くので雄太にも出来るはずなのだが、やはり分からない。
「んー……」
「ユータ? 聞いてますか?」
セージュにつつかれて、雄太はハッとする。
「あ、悪い。ちょっと考え込んでた」
「寂しいから、ほっとかないでください」
「う、悪い」
いつもの小さいセージュなら適当にあしらっておけるのだが、大きいセージュはどうにも苦手だ。
まあ、大きいセージュをあしらっておけるような話術や余裕があるなら元の世界で誰かと結婚していたかもしれないが……それはさておき。
「いや、洗濯する魔具をどうやって再現するか考えて……」
言いながら雄太がふと視線を向けた先には、宙に浮かぶ水球の中で洗濯物を凄い勢いで回転させているフェルフェトゥの姿。
「あらユータ。魔具作成は順調?」
「え、いや、えーと。フェルフェトゥ、その洗濯物洗ってるのって……どういう理屈で汚れとか落ちてるんだ?」
雄太にそう問われたフェルフェトゥは水球に視線を向け、少し考えるような様子を見せた後に雄太へと向き直る。
「邪神力かしらね」
「そ、そうか……邪神力かあ……」
真似できそうにはないな、と。雄太は、そんな事を考えながら遠い目をした。
「えーと……大きいままでやるのか?」
何事も無かったかのように雄太の前に座るセージュに雄太がそう聞けば、セージュは微笑みで返してくる。
「小さい私は考えるのがちょっと苦手ですから。細かい事には向いてないんですよ」
「あー……それなら仕方ない、のか?」
大きいセージュは小さいセージュとは違って普通に綺麗なのでどうにもやりにくいのだが、そういう事情であれば仕方ない……のかもしれない。
「では、魔具についてです。魔石のような指向性のない物と違って、何らかの効果を期待する物を作るのであれば当然、それを目的とした魔力の籠め方をする必要がありますが……ここまでは大丈夫ですか?」
「ん、まあ分かる。出来るかっていうと別だけど」
「はい、それで大丈夫です。といっても、あまり難しいものではありません。現象として世界に齎されるものに限りがある以上、その範囲内の事が出来ればそれで完成なんですから」
たとえばお風呂を魔具として構成するのであれば、湯船に「溢れずにお湯が溜まる」という結果があればいい。
これを分解すると「水が出る」「溢れない」「お湯になる」という3つになる。
このうち「水が出る」については魔力で水を出せば解決する。
お湯になる、というのは火の魔力の領域だ。
溢れない……というのは、これは少々面倒だが「水が出る」に制限をつければ事足りる。
「今のは大雑把な例ですが、このように考えれば大体の魔具は組み合わせで解決するわけですね」
「え。でも、だとしたら大体の魔具はもうあるんじゃないか?」
「どうでしょう? 邪神共の口ぶりですと、それ程魔具が溢れているとも思えませんが。とりあえず、その辺りを気にせずユータの思う魔具を作っていけばいいと思いますよ。練習にもなります」
「ふーむ……」
「たとえばの話、こんなのもあるんですよ?」
そう言うと、セージュは一本の短い棒のようなものを差し出してくる。
円柱の形に削り出した棒は中々手触りが良く、しかし何か道具として使うには半端な長さだ。
だが、見てみれば何か魔力が篭められているのも理解できた。
「これって、魔具か?」
言いながら雄太は魔力を籠めてみるが、何も反応しない。
足りないのかと更に籠めてみるが反応せず、雄太はセージュを見て疑問符を浮かべる。
「刃よ、と言えば反応するように作ってあります」
「え、刃って……なにこれ、武器なのか?」
雄太の疑問に、セージュは満面の笑みで答える。
「はい、世界樹の剣と名付けました。世界樹の枝から切り出してますから、魔力との親和性の高い魔具になってます」
「そ、そぉか……ありがとう」
今の状況で使う機会が訪れるとも思えなかったのだが、雄太は受け取った世界樹の剣を腰のベルトに差す。
「でも、なるほど。武器も魔具ってことか」
「そうなりますね。発想次第です」
「ふーむ」
なるほど、と雄太は思う。
そういうことであれば現代日本人の雄太の発想が活きてくる。
何しろ便利な生活家電に毒されて、それなしでは生きられない生活をしていたのだ。
何があれば便利かはよく分かる。
そう、確か三種の神器とかいうものがあったはずだ。
「テレビ、冷蔵庫、洗濯機……だったか?」
テレビは無理だろう。そもそも放送局が無い。
冷蔵庫は出来る気がする。
先程のセージュの説明に従うならば、冷蔵庫は「中に入れたものが冷える」結果があればいい。
この「冷える」というのは恐らくは水の魔力だろう。
洗濯機の場合は「中に入れたものが綺麗になる」だろうか?
少し違う気もする。
「ついた汚れが落ちる」が近い気もするが、これも何か違う気がする。
いや、そもそも洗濯とは何か。
古来の洗濯では洗濯板とかいうギザギザの拷問用の板みたいなものに洗濯物をこすり付けていたとも聞く。
それはつまり、摩擦的な何かで汚れを落としているということではないのだろうか?
「……あのー……ユータ?」
「いや、待てよ。そういえば洗剤とかの問題もあったな」
化学的な事情は雄太にはどうにもならない。
何しろ雄太は化学者でもなければ錬金術師でもない。
しかし石鹸で落としていた時期もあったと聞いたことがある。
石鹸自体はなんだかご家庭でも作れると聞くので雄太にも出来るはずなのだが、やはり分からない。
「んー……」
「ユータ? 聞いてますか?」
セージュにつつかれて、雄太はハッとする。
「あ、悪い。ちょっと考え込んでた」
「寂しいから、ほっとかないでください」
「う、悪い」
いつもの小さいセージュなら適当にあしらっておけるのだが、大きいセージュはどうにも苦手だ。
まあ、大きいセージュをあしらっておけるような話術や余裕があるなら元の世界で誰かと結婚していたかもしれないが……それはさておき。
「いや、洗濯する魔具をどうやって再現するか考えて……」
言いながら雄太がふと視線を向けた先には、宙に浮かぶ水球の中で洗濯物を凄い勢いで回転させているフェルフェトゥの姿。
「あらユータ。魔具作成は順調?」
「え、いや、えーと。フェルフェトゥ、その洗濯物洗ってるのって……どういう理屈で汚れとか落ちてるんだ?」
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