捨てられおっさんと邪神様の異世界開拓生活~スローライフと村造り、時々ぎっくり腰~
魔具ってなあに?
「ま、アレも魔具だな」
「魔具っていうのはね。基本的には魔力を含んだ道具全般の事をさすのよ」
フェルフェトゥはそう言うと、スープの入った鍋を指差す。
「たとえば、そのバーンシェル製の鍋も魔具ね。魔具ってだけではあるけれども」
そもそも、魔具といっても幅広い。
単純に魔力が籠っているだけというものから、些細な特殊効果の籠められたもの、そして凄まじい効果を秘めたものまで様々だ。
たとえばの話だが、魔力の籠った石なんていうものも立派な魔具だ。
そういった石の場合は魔石とも呼ばれ、魔法士がそこから魔力を引き出し使っている。
「ふーん? つまり石に魔力籠めるだけで売り物になるってことか?」
「究極的にはそうね。ユータがそれで納得するならだけど」
「む」
なるほど、これはミスリウム村の特産物……というか売り物を決めるものなのだ。
言わば村の顔であり、フェルフェトゥ達に恥ずかしくないものでなければならない。
となると、単に魔力の籠った石というものは無しだろう。
「……でもな。俺、そんな特殊な魔具の作り方なんて知らないぞ」
「そうね。私達もそういうものを作る時には権能を使ってるからアドバイスは出来ないけど……ユータにはアレがいるでしょう?」
「アレ?」
雄太は言われて、今この場に居ない人物を思い出す。
「ひょっとして、セージュのことか?」
「そうよ。精霊はその手の小細工が得意だから、ユータにも出来る方法を知ってると思うわよ」
「小細工って……」
雄太とコロナは苦笑するが、バーンシェルとベルフラットも頷いている辺り邪神と精霊の溝は深そうだ。
「なら、後で聞いてみるとして……今あるものを作っても意味無いよな。どんなのがあるんだ?」
「そうね……」
フェルフェトゥに視線を向けられて、コロナは軽く咳払いする。
「そうだな。魔具は基本的に裕福な者向けだが、魔力を込めると水の湧き出る水差しや小さな火を発する杖などは有名だ」
いわゆる生活魔具だな、とコロナは説明する。
生活を便利にする為の機能を持った魔具の総称であり、街灯に使う光を発する石などもそれに相当する。
「ん? 水の湧き出る水差し……?」
「ああ。毒を混ぜられる心配がないと王侯貴族が使うものだが」
「それがあれば、旅で水には不足しなさそうだよな。この土地の開拓だって」
「そう上手くはいかん。使用限度というものがる」
たとえば水の湧き出る水差しは、精々コップ一杯分の水を出すのが精々だ。
しかも使えば使う程消耗し、一般的には20回も使えば効果を失ってしまう。
更にいえば値段も高く、数を揃えられるものでもない。
「裕福な者が使う道具だということを忘れてはいけない。この荒野を超えようというのであれば、1個や2個ではすまんぞ」
「そんなに作るのが難しい道具なのか?」
雄太からしてみれば、魔法で水を出せるならもっとドバッと出せるんじゃないかという印象なのだが、コロナはなんと説明したものかと難しい顔をする。
「……そ、うだな。水を出すだけなら簡単とは聞く。だが飲用には適さないのだ」
人間の体は繊細だ。些細な事で異常を訴えるように出来ている。
そして魔法で生成されたものは、基本的に……というか当然なのだが、魔力に満ちている。
魔法で出した水の場合、摂取すれば魔力異常を引き起こすと昔の研究で分かっている。
これは他人の魔力が自分の魔力と混ざる事による拒絶反応だとされているが……その辺りの真偽はともかく、単純に魔法で出した水をそのまま使うというわけにはいかないということだ。
「水差しの魔具は、魔力異常を引き起こさないように水から魔力を抜く処理をしている。体内に取り込むものだからな、他よりも手順が複雑なのだ」
「え? でもフェルフェトゥの聖水は普通に飲めてるよな?」
アレも魔力を含んだ水のはずだ。
そんな当然の疑問を雄太がぶつけると、フェルフェトゥが「当然よ」とそれに答える。
「神の魔力は人間の魔力よりも上位のものだもの。染めることはあっても、拒否反応が起こるなんて有り得ないわ」
「ちなみにアタシ達同じ神が摂取しても平気なのは、体内で捻じ伏せて自分の力に変えてるからだ。本人ならともかく、力の欠片に負けるなんざ有り得ねえしな」
バーンシェルの補足に雄太は「うーん」と唸る。
「それってつまり……此処で食事をとり続けてると、フェルフェトゥとベルフラットの魔力で染まるってことか?」
「主に私の魔力かしらね。調理の過程でベルフラットの魔力はある程度抜いてるもの」
「……ズルいわ」
ベルフラットが恨めしげにフェルフェトゥを見るが、フェルフェトゥは気にした様子もない。
「確かに……私もトイレを必要としなくなってしまったしな」
力なくコロナが笑うが、雄太は考えるように再度唸る。
「そうなると、俺の魔力ってフェルフェトゥと同じってことになるのか?」
「違うわよ。私に似ているだけのユータの魔力よ。どれだけ染まっても、ユータの魔力が神のものと同一になることは無いわ」
人間と神ではそもそもの魔力生成の構造が違う。
故に、完全に同じになる事は有り得ないのだ。
「それにユータの場合はあの精霊との契約で魔力が繋がってるもの。そっちの色にも多少染まってるわよ?」
「え」
初めて聞いた、と。そう呟く雄太の元へ、タイミングよくセージュが飛んでくる。
「魔具っていうのはね。基本的には魔力を含んだ道具全般の事をさすのよ」
フェルフェトゥはそう言うと、スープの入った鍋を指差す。
「たとえば、そのバーンシェル製の鍋も魔具ね。魔具ってだけではあるけれども」
そもそも、魔具といっても幅広い。
単純に魔力が籠っているだけというものから、些細な特殊効果の籠められたもの、そして凄まじい効果を秘めたものまで様々だ。
たとえばの話だが、魔力の籠った石なんていうものも立派な魔具だ。
そういった石の場合は魔石とも呼ばれ、魔法士がそこから魔力を引き出し使っている。
「ふーん? つまり石に魔力籠めるだけで売り物になるってことか?」
「究極的にはそうね。ユータがそれで納得するならだけど」
「む」
なるほど、これはミスリウム村の特産物……というか売り物を決めるものなのだ。
言わば村の顔であり、フェルフェトゥ達に恥ずかしくないものでなければならない。
となると、単に魔力の籠った石というものは無しだろう。
「……でもな。俺、そんな特殊な魔具の作り方なんて知らないぞ」
「そうね。私達もそういうものを作る時には権能を使ってるからアドバイスは出来ないけど……ユータにはアレがいるでしょう?」
「アレ?」
雄太は言われて、今この場に居ない人物を思い出す。
「ひょっとして、セージュのことか?」
「そうよ。精霊はその手の小細工が得意だから、ユータにも出来る方法を知ってると思うわよ」
「小細工って……」
雄太とコロナは苦笑するが、バーンシェルとベルフラットも頷いている辺り邪神と精霊の溝は深そうだ。
「なら、後で聞いてみるとして……今あるものを作っても意味無いよな。どんなのがあるんだ?」
「そうね……」
フェルフェトゥに視線を向けられて、コロナは軽く咳払いする。
「そうだな。魔具は基本的に裕福な者向けだが、魔力を込めると水の湧き出る水差しや小さな火を発する杖などは有名だ」
いわゆる生活魔具だな、とコロナは説明する。
生活を便利にする為の機能を持った魔具の総称であり、街灯に使う光を発する石などもそれに相当する。
「ん? 水の湧き出る水差し……?」
「ああ。毒を混ぜられる心配がないと王侯貴族が使うものだが」
「それがあれば、旅で水には不足しなさそうだよな。この土地の開拓だって」
「そう上手くはいかん。使用限度というものがる」
たとえば水の湧き出る水差しは、精々コップ一杯分の水を出すのが精々だ。
しかも使えば使う程消耗し、一般的には20回も使えば効果を失ってしまう。
更にいえば値段も高く、数を揃えられるものでもない。
「裕福な者が使う道具だということを忘れてはいけない。この荒野を超えようというのであれば、1個や2個ではすまんぞ」
「そんなに作るのが難しい道具なのか?」
雄太からしてみれば、魔法で水を出せるならもっとドバッと出せるんじゃないかという印象なのだが、コロナはなんと説明したものかと難しい顔をする。
「……そ、うだな。水を出すだけなら簡単とは聞く。だが飲用には適さないのだ」
人間の体は繊細だ。些細な事で異常を訴えるように出来ている。
そして魔法で生成されたものは、基本的に……というか当然なのだが、魔力に満ちている。
魔法で出した水の場合、摂取すれば魔力異常を引き起こすと昔の研究で分かっている。
これは他人の魔力が自分の魔力と混ざる事による拒絶反応だとされているが……その辺りの真偽はともかく、単純に魔法で出した水をそのまま使うというわけにはいかないということだ。
「水差しの魔具は、魔力異常を引き起こさないように水から魔力を抜く処理をしている。体内に取り込むものだからな、他よりも手順が複雑なのだ」
「え? でもフェルフェトゥの聖水は普通に飲めてるよな?」
アレも魔力を含んだ水のはずだ。
そんな当然の疑問を雄太がぶつけると、フェルフェトゥが「当然よ」とそれに答える。
「神の魔力は人間の魔力よりも上位のものだもの。染めることはあっても、拒否反応が起こるなんて有り得ないわ」
「ちなみにアタシ達同じ神が摂取しても平気なのは、体内で捻じ伏せて自分の力に変えてるからだ。本人ならともかく、力の欠片に負けるなんざ有り得ねえしな」
バーンシェルの補足に雄太は「うーん」と唸る。
「それってつまり……此処で食事をとり続けてると、フェルフェトゥとベルフラットの魔力で染まるってことか?」
「主に私の魔力かしらね。調理の過程でベルフラットの魔力はある程度抜いてるもの」
「……ズルいわ」
ベルフラットが恨めしげにフェルフェトゥを見るが、フェルフェトゥは気にした様子もない。
「確かに……私もトイレを必要としなくなってしまったしな」
力なくコロナが笑うが、雄太は考えるように再度唸る。
「そうなると、俺の魔力ってフェルフェトゥと同じってことになるのか?」
「違うわよ。私に似ているだけのユータの魔力よ。どれだけ染まっても、ユータの魔力が神のものと同一になることは無いわ」
人間と神ではそもそもの魔力生成の構造が違う。
故に、完全に同じになる事は有り得ないのだ。
「それにユータの場合はあの精霊との契約で魔力が繋がってるもの。そっちの色にも多少染まってるわよ?」
「え」
初めて聞いた、と。そう呟く雄太の元へ、タイミングよくセージュが飛んでくる。
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